ServiceNowの取り組みから探る AIを業務に活用するための「ワークフロー×AI」とはWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2024年10月21日 12時06分 公開
[松岡 功ITmedia]
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「ワークフロー×AI」でAIによるビジネス価値を生み出せ

 少し補足すると、ServiceNowはITサービス管理から各種業務、顧客や従業員向けのサービスまで企業全体をカバーするデジタルワークフローを構築することで、組織横断的なDXを支援するクラウドサービスを提供している。2004年設立のServiceNowが注目されるようになったのは、グローバル標準のITサービス管理をSaaS(Software as a Service)として提供したのがきっかけだ。もともとは各種業務のワークフローやデータを一元管理する「Now Platform」をPaaS(Platform as a Service)として提供しており、その上で構築したITサービス管理が注目された形となった。

 鈴木氏はこうした経緯を説明した上で、「従って当社のAIプラットフォームは、全てのアプリケーションを結合して統合し、ユーザーが必要とするものを単一の優れたエクスペリエンスで提供する。これによって、さまざまなアプリケーションやタスクを従業員が行き来する必要がないことから、仕事の効率が圧倒的に上がる」と述べた(図2)。

図2 ServiceNowのAIプラットフォームのエクスペリエンス(出典:「ServiceNow World Forum Tokyo」の基調講演)

 また、「その卓越したエクスペリエンスは、さまざまな形で提供される。デスクトップのワークスペースやモバイルのポータルなど、どのような形であっても業務全体を手の内に収めることができる」とも語った(図3)。

図3 さまざまな形で提供されるエクスペリエンス(出典:「ServiceNow World Forum Tokyo」の基調講演)

 こうしたエクスペリエンスとともに、同氏は「当社のAIプラットフォームはワークフローの自動化によって、さまざまなソフトウェアやサービスを共通のプラットフォームで連携させ、業務を『整流化』する。業務やプロセス、システムがシームレスに連携し、以前は人間が担当していた機械的な繰り返し作業をプラットフォーム側で処理できるようになる」と述べた(図4)。

図4 ワークフローの自動化へ(出典:「ServiceNow World Forum Tokyo」の基調講演)

 そして、「そのシームレスな連携のうち、システム的な連携については当社のAIプラットフォームが持つインテグレーションハブによって実現でき、堅牢なデジタルワークフロー構築が可能となる。また、ドキュメントインテリジェンスによってあらゆるドキュメントからデータを抽出し、プラットフォームに展開できる。加えて、プロセスマイニングでは業務がどこで実施されているか、問題となっている箇所はどこかを特定し、自動化の機会を創出する」と説明した(図5)。

図5 ワークフロー自動化の具体例(出典:「ServiceNow World Forum Tokyo」の基調講演)

 その上で鈴木氏は、「これまでご覧いただいたように、全てが1つのプラットフォームに統合されていることこそが、AIが最良のパフォーマンスを発揮するための原動力になると、われわれは考えている。それはすなわち、個別の業務アプリケーションそれぞれに独自のAIを適用するのではなく、業務をつなぐデジタルワークフローにAIを組み込むことによって、業務プロセス全体にわたってAIによるビジネス価値を生み出せるということだ」と強調した(図6)。

図6 業務をつなぐデジタルワークフローにAIを組み込む(出典:「ServiceNow World Forum Tokyo」の基調講演)

 この最後の言葉が、鈴木氏の主張であり、ワークフローとAIの掛け合わせによる効果だ。そして、AIによるビジネス価値を生み出すことこそが、まさしく企業にとってのビジネストランスフォーメーションである。

 その意味では、ワークフローとAIの掛け合わせは大いに生かしたいところだ。一方で、個別の業務アプリケーションそれぞれに存在する独自のAIは、個別の業務アプリケーションのために作り込まれて学習して賢くなる。ワークフローの観点から見れば「AIのサイロ化」かもしれないが、このバランスをどう考えるかという問題意識は今からしっかりと持って最適解を追求する必要があるだろう。サイロ化という「いつか来た道」を再び辿らないようにしたいものだ。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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