バズワード化している「AIエージェント」だが、そもそも企業にとってAIエージェントとはどのような存在なのか。AIエージェント活用において注意すべきこととは。富士通のAI事業のキーパーソンにその現状や課題、対策、訴求ポイントを聞いた。
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「AIエージェント活用元年」になりそうな2025年。
AIエージェントをうまく活用できるかどうかの分かれ目になるのが、「AIマネジメント」だと筆者は考える。
いずれ複数ベンダーのAIエージェントが社内に混在する段階になったとき、データ管理をはじめとするマネジメント面で収拾がつかなくなる可能性があるからだ。
そこで、国内ITサービスベンダー大手のNTTデータや富士通、NEC、日立製作所のAI事業のキーパーソンに、AIエージェントをいかに活用すべきかについて、特にAIマネジメントの問題をどう解決すべきかという切り口で取材した。
既にAIエージェントのテスト段階にある企業だけでなく、これから導入を考える企業の参考になれば幸いだ。
4社取材企画の3回目となる本稿では、富士通の岡田英人氏(SVP、技術戦略本部長)に話を聞いた。同氏は富士通が提供する先進技術をグローバルで戦略的に事業展開する仕掛け作りを担う。AIはその最重点の取り組みだ。
同氏が説くAIマネジメント対策とはどのようなものか。ユーザー企業の現時点におけるAIエージェントの利用状況や、今後発生しそうな課題を聞いた。AIマネジメントによって何を目指すか。さらにAIエージェントの活用に求められる企業姿勢について、同氏が熱く語った内容とは。
2024年後半から注目を集めるAIエージェントだが、企業での利用状況はどうなのか。岡田氏は次のように述べた。
「企業活動において今、まさしくAIによる革命が起きつつある。特にAIエージェントは企業の経営に大きな影響をもたらすだろう。私がここ数年、活動拠点にしてきた米国シリコンバレーではAI革命の波に乗ろうという企業の強烈なエネルギーを感じた。そこからユースケースもどんどん生まれている。一方、日本はどうかというと、関心はあるものの取りあえず様子見している企業が非常に多いように感じている。このままだと、日本企業は『エンタープライズAIのデススパイラル』に陥ってしまうのではないかと懸念している」
同氏が言う「エンタープライズAIのデススパイラル」とは、図1の左下から右回りで起こる悪循環のことだ。
まず、限定的な領域へのAI導入で様子見すると、やりたいことをやるにはもう少しおカネをかけないといけないと思うようになり、導入コストがかさんでいく。さらに、場当たり的な動きからユーザー部門のスキルや経験不足が露呈してAI技術のアップデートにも対応できなくなり、ビジネス価値を見いだせずにROI(費用対効果)も不明確なままとなる。そうなると、いつまでたっても準備不足のままで同じことを繰り返すようになる。
こうした悪循環に陥らないように、「AIの導入は企業として覚悟を決めて、アグレッシブに突き進む姿勢が大事だ」と、岡田氏は力を込めた。
では、AIエージェントの可能性と課題についてはどのように見ているのか。まず、可能性については次のような見方を示した。
「AIエージェントの可能性としては、企業の業務全体を効率化して生産性を向上させ、新たなビジネス価値を生み、サプライチェーンも最適化して、つまりは企業を力強く成長させられる。どうすれば、それが実現できるか。ポイントは“つなぐ”ことにある。企業ではこれからさまざまな業務ごとに適したAIエージェントが使われるようになる。しかし、業務全体として効果を上げるには、それらを連動させる必要がある。当社はそうした複数のAIエージェントが協調する環境作りに注力している」
これは、取材テーマであるAIマネジメントへの対応に直結する話だ。富士通がどのように取り組んでいるかは後述するとして、一方の課題についてはどう見ているのか。
「課題としては、可能性の話と裏腹に、複数のAIエージェントが協調する環境を安全かつ信用できる形で実現できるかどうかが挙げられる。まずはAIが技術的に正しい答えや意思決定を迅速に出し続けられるか。それを踏まえて、企業としてAIエージェントの導入をどれだけ前向きに判断できるか。ベンダーとしては、その前向きに判断いただけるようにクオリティーの高い環境作りに尽力したい」
端的にいえば、「信用できるAIエージェント」かどうかだ。これは人間関係も同じだろう。
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