話題沸騰のAIエージェントだが、NECのAI事業のキーパーソンは「AIエージェントを含めてAIは万能ではない」と警鐘を鳴らす。では、AIエージェントをどう利用すべきか。課題や対策、訴求ポイントを聞いた。
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「AIエージェント活用元年」になりそうな2025年。
AIエージェントをうまく活用できるかどうかの分かれ目になるのが、「AIマネジメント」だと筆者は考える。
いずれ複数ベンダーのAIエージェントが社内に混在する段階になったとき、データ管理をはじめとするマネジメント面で収拾がつかなくなる可能性があるからだ。
そこで、国内ITサービスベンダー大手のNTTデータや富士通、NEC、日立製作所のAI事業のキーパーソンに、AIエージェントをいかに活用すべきかについて、特にAIマネジメントの問題をどう解決すべきかという切り口で取材した。
既にAIエージェントのテスト段階にある企業だけでなく、これから導入を考える企業の参考になれば幸いだ。
4社連載の4回目となる本稿では、NECの山田昭雄氏(Corporate SVP 兼 AIテクノロジーサービス事業部門長 兼 AI Technology Officer)に話を聞いた。同氏は長らくNECのAI研究をリードし、2024年8月からAI関連の事業も統括している。
山田氏が描くAIマネジメント対策とはどのようなものか。ユーザー企業の現時点におけるAIエージェントの利用状況や、今後発生しそうな課題、さまざまな観点からAIエージェント活用の勘所について聞いた。
2024年後半から注目を集めるAIエージェントだが、企業での利用状況はどうなのか。山田氏は次のように述べた。
「AIエージェントで何ができるのかを説明してほしいという要望を非常に多くいただいている。実証実験も多くのお客さまで始まっており、ニーズはものすごく高い。これから業務ごとのAIエージェントがどんどん採用されていく手応えを感じている」
同氏によると、RPA(Robotic Process Automation)との違いを聞かれることも多いそうだ。確かに業務を自動化する目的は同じだが、「RPAは人間がプログラムを書いて動き方を指示する。一方、AIエージェントは自らプログラムを書いて動く。要は自律性の有無の違い」とのことだ。分かりやすい説明だったので記しておく。
では、AIエージェントの可能性と課題についてはどのように見ているのか。同氏は可能性について次のような見方を示した。
「今、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む中で、AIエージェントはさらにDXを強力に推進する役目を果たせると考えている。なぜならば、AIエージェントは人間に代わって業務を行えるので、とりわけホワイトカラーの業務プロセスを自ら適切に意思決定して自動的に進めてくれるようになるからだ」
その上で、こうも語った。
「これまでこうした適切な意思決定に基づく業務プロセスの効率化や自動化に向けた体制作りは、自社だけでやりきれずにコンサルティング会社の力を借りるケースも少なくなかった。だが、AIエージェントがそのコンサルティングを代替することにもなるのではないか」
この発言は興味深い。AIが多くの業務を実施できるようになるといわれる中でも「コンサルティングは無理」と見られていたが、山田氏は「むしろコンサルティングのような業務がAIに代替される可能性がある」との見方を示した。ならば、他の業務も……と気になるところだが、ここはあくまでAIエージェントの可能性の話としてとどめておく。
一方、課題についてはどう見ているのか。
「AIの研究に長年携わってきた立場から申し上げておきたいのは『AIは万能ではない』ということだ。AIエージェントで言うと、企業のDXに大きなインパクトをもたらす可能性がある一方、過度に頼りすぎると普及への負担が増すのではないかと懸念している。というのは、業務の効率化や自動化において、AIエージェントでなくても従来のITシステムで十分に賄える領域もあるからだ。肝心なのは、そうした適材適所の組み合わせによってオーケストレーションする仕組みを追求していくことだと考えている。そのためにもAIに頼りすぎないということを改めて強調したい」
同氏は、適材適所のAIの組み合わせとして「コンパウンドAI」(複合AI)という言葉も口にした。AIエージェントに続く、今後のキーワードになるかもしれない。
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