今回、UiPathが日本市場で提供を開始したソリューションは、エージェンティックオートメーションを実現するプラットフォーム「UiPath Platform for Agentic Automation」だ。日本法人の夏目 健氏(プロダクトマーケティング部 部長)によると、AIエージェントを構築する「UiPath Agent Builder」と、AIエージェントとロボット(RPA)、人を連携してオーケストレートできる「UiPath Maestro」から構成される。後者は、マルチベンダーのマルチエージェントに対応可能だ(図4)。
UiPath Platform for Agentic Automationの内容については、発表資料をご覧いただきたい。
夏目氏によると、グローバルでは既に先行ユーザーのユースケースも幅広い業務や業種で明らかになっている。図5は、業務別のユースケースの例だ。
また図6は、業種別のユースケースの例だ。
このように業務別および業種別のユースケースを紹介したのは、エージェンティックオートメーションの例として、AIエージェントだけでなくRPAも組み合わせた形で業務の自動化を図るケースだと見られるからだ。それぞれのユースケースについての説明はなかったが、こう見ていくとAIエージェントとRPAを組み合わせて最適化を図れる領域だと推察できる。
もう読者諸氏もピンと来られただろうが、図1で示されたAIエージェントとRPAの組み合わせが、さまざまな業務の自動化による生産性向上という目的に対して、コストパフォーマンスの最も高い形でベストプラクティスを幾つも生み出せるのではないか。
分かりやすく言えば、同じ業務を自動化する場合、AIエージェントで全てを実行するよりも、AIエージェントとRPAを組み合わせて無駄のない最適化を図る方がユーザーにとってのコストメリットが大きくなるのではないか。
AIエージェントとRPAとを組み合わせた場合、AIエージェントだけで実行するケースよりも仮に「3割安くなる」とすれば、これはAIエージェント市場における「価格破壊」につながるようなインパクトがあるだろう。これは言わば「ブレンド」ソリューションなので、市場自体を壊すことにはならず、むしろユーザーの裾野を広げる効果があるのではないか。
こうひらめいたので、会見の質疑応答で上記の説明を行った上で、UiPathがそうしたアクションを起こすつもりはないかと聞いてみた。すると、夏目氏は「そうしたコスト戦略について言及するのは難しいが、お客さまのメリットとして業務自動化に柔軟に取り組めることをアピールしていきたい」とのことだった。
AIエージェントについて取材を進めるにつれ、ユーザーが今後、コスト面で頭を悩ませるケースが増えそうな気がしている。また、筆者はこれまで「RPAはAIエージェントに吸収される」と見ていたが、今回のUiPathの発表を受けて、むしろ「ブレンド市場」の方が大きくなるのではないかとさえ感じた。UiPathをはじめとしたRPAベンダーにとってはビッグチャンスだと思うが……。この動き、引き続き注視していきたい。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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