新春インタビュー2002 >>
関連リンク


VODコンテンツの高度な管理機能を提供する
VODミドルウェア「MBOS」が可能にする
柔軟なビデオ・オン・デマンドサービス

インターネット利用の拡大は、ビデオコンテンツを利用したさまざまな新サービスを登場させている。ビデオ・オン・デマンド(VOD)は今後、より一層のサービス拡大が期待できる分野の1つだ。エム・ピー・テクノロジーズは、自社開発のVOD総合管理ミドルウェア「MBOS」を中心に、顧客ニーズに柔軟に対応したVODソリューションを展開している。

 ネットワーク上に配信されるコンテンツのマルチメディア化が加速している。その背景として、インターネットへのブロードバンド接続形態が急拡大したことが挙げられるが、特にこれを利用したビデオコンテンツ配信技術は急速な進歩を遂げており、今後これら技術を利用したさまざまな形態のサービスが登場すると予測されている。見たいデバイスで見たいときに視聴できるビデオ・オン・デマンド(VOD)サービスは、その中でも今後最も成長が期待できる分野の1つだ。

 2000年3月、「ネットワーク社会における新しいソリューションを創出する」ことを基本コンセプトに誕生したエム・ピー・テクノロジーズ(MPT)は、将来のマルチメディアコンテンツ市場の拡大を見据え、VODを中心としたブロードバンドサービスインフラ構築のためのソリューションを提供している。

独自VODミドルウェアを中心にブロードバンドソリューションを推進

 MPTのVODソリューションには、自社開発のVOD管理用ミドルウェア「MPT Back Office Series」(MBOS)をはじめ、同社が国内販売する米Kasennaのビデオ配信サーバ「Kasenna MediaBase」などがある。これら製品を利用して、顧客のニーズに対応したVODソリューションを「短期間」「低コスト」で実現できるのを特徴としている。

 同社ソリューション本部 担当部長の村越正人氏は、「VODソリューションを実現するにあたり、配信されたコンテンツを効率的に管理できるミドルウェア製品が市場にあまり多くないことがMBOSを開発するに至った経緯。もう少し使い勝手が良く、カスタマイズしやすい開発環境が欲しいという顧客からの要求が多くなってきていた」と振り返る。

 MPTは、それまでKasenna MediaBaseの販売を手がけ、それに合わせたシステム開発を行ってきた。だが、多くの顧客からさまざまな機能の追加要求があったものの、それに対応するKasenna側にも製品開発の優先順位や開発ポリシーがあり、「できること、できないことがはっきりしてきた」と村越氏は言う。Kasennaでできないことは自分たちで実現しようと、MPTが独自開発したミドルウェアが、MBOSだ。

VODの総合的管理を可能にするMBOS

 MBOSは、VODコンテンツの管理や配信、課金、ログといったVODソリューションを実現するために必要な基本管理機能を備え、さらに顧客ごとに異なる要求に柔軟に対応できるカスタマイズ環境を搭載する。

 MBOS搭載サーバ間での状態監視を行うサーバ管理、ユーザーのアクセス制限などを管理するユーザー管理をはじめ、コンテンツのスケジュール配信や複数サーバによるコンテンツ配信を効率化する負荷分散機能、視聴ログのスケジュール収集機能などを備えているほか、既存の企業システムで利用されている課金システムやカード決済システムなどと容易に連携できるインタフェース、データベースと連動したWeb対応画面の自動生成機能など、各モジュールをさまざまに組み合わせることで、顧客のニーズに完全に対応した柔軟なVODソリューションを実現する(表1)。

表1)MBOSが提供する機能
MBOSの機能 機能概要
サーバ管理 MBOSが搭載されたサーバ間での状態の監視や、情報の閲覧を可能にする
ユーザー管理 各拠点のユーザーを管理し、システムへの利用制限や不正アクセスを管理する
課金管理 各メーカーのWebマネーやクレジット決済、銀行振り込みなどの課金システムと連携する
ログ管理 利用状況をユーザーごと、拠点ごと、サービスごとに管理する
Web画面自動生成 データベースと連携することで、動的なWebページを自動的に生成する
オートスクリーン 店舗やホテルなどで、ビデオを繰り返し流すことが可能になる
負荷分散 VODサーバを複数利用する場合に、VODサーバの負荷を効率的に分散

 MBOSが搭載されたサーバ間の通信には、独自の暗号化電文を使用し、セキュリティの面でも十分配慮がなされている。またファイアウォールやNATを越えたコンテンツ配信も可能だ。

 これまでVODソリューションを実現するには、高価な専用システムを導入し、カスタマイズを行わずに利用することが多かった。だが、専用のシステムでは拡張性が制限されることが多く、既存システムとの連携が難しかった。MBOSを利用すれば、専用システムよりも低コストで導入でき、既存の業務システムなどと連携した柔軟なカスタマイズが行える。システム資産を有効に活用しながら、最適なサービスを提供するVODシステムを構築することが可能になるのだ。

顧客のニーズに合わせ更なる進化

 MBOSは既に、ホテル向けのVODシステムや、音楽配信企業が量販店向けに提供するキオスク端末、不動産会社がホテル・マンション向けに提供するマルチメディアサービスなどのコンテンツ管理に利用されている(図1)。

図1)MBOSによるVODソリューション構成概念
図1

 2002年7月に稼働を開始した国内ホテル初の客室向けVODシステムでは、MBOSの最初のバージョンとなる「MBOS 1.0」が採用されている。同システムについて村越氏は、「ネットワークもホテル内に限定されており、あまり大規模ではないし、利用するコンテンツ数についてもそれほど多くない。MBOSの最初のバージョンを利用するには最適なシステムだった」と話す。

 2002年10月には、音楽配信企業が量販店のキオスク端末に配信するコンテンツ視聴サービスシステムを稼動。視聴状況のリサーチ用のログ管理ほか、営業終了後に店員がマニュアル操作で行っていたコンテンツの入れ替えを、インターネットを通じて自動化する機能がMBOSで実現された。

 「この2つの事例により、ホテル向けのVODおよび課金(Billing)、音楽配信企業のコンテンツ配信ネットワーク(CDN)およびログ管理(Log)という、MBOSの基本機能について実績ができた」と村越氏。さらに、大手不動産会社の約3000棟のアパート/マンション向けのVODシステムを実現するため、「MBOS 1.1」として機能強化と機能追加が行われていった。

 このアパート/マンション向けシステムでは、先に培った音楽配信企業のCDNの仕組みを拡張し、センターからより大量のコンテンツを一括で各コンテンツサーバに配信できる大規模VOD向けの機能を実現。配信されたコンテンツに対し、サーバへの登録、更新、削除ができる管理機能も追加されている。

 「今後も、各ユーザーの要求に合わせた形でのバージョンアップ、機能強化を計画している。MBOSの基本構成としては中核となる基盤の上にVOD、Log、Billing、CDN、GUIの機能が搭載されている。それぞれの機能に対してユーザーごとに必要となる機能をカスタマイズし、顧客ごとに最適なパッケージシステムとして提供していく計画だ」(村越氏)

 MPTでは、これまでのVODソリューション構築の技術やノウハウを組み合わせることで、現在、「ソリューションパッケージ〜ホテル編/マンション編/音楽配信編」という3つのパッケージソリューションを展開している。

 今後は、オンラインゲームの配信や課金などを管理する「ゲーム向けパッケージ」、監視カメラなどの映像を利用したセキュリティ監視を実現する「サーベイランス向けパッケージ」などを提供する予定。そのために必要なVODソリューションとすべく、現在検証作業を進めているところだ。

 なお、MPTは日本、米国、韓国、中国のそれぞれで、MBOSに搭載されている技術に関する特許を出願しているという。

関連記事
新春インタビュー:日本のブロードバンドサービスは世界トップレベルへ
レオパレス21、自社のアパート・マンション向けにビデオオンデマンドサービス開始
セレスティンホテルの新デジタルVODシステム、N+Iでもプレビュー
日本IBMとMPT,IAサーバとLinuxによるBBコンテンツ配信システムで協業

関連リンク
エム・ピー・テクノロジーズ

[ITmedia]

この記事についてのご感想 【必須】
コメント

エンタープライズ・ピックアップ

長期的にはAndroidの方が有望――モバイルアプリ開発者調査
モバイルアプリ開発者の6割弱が「iOSよりAndroidの未来の方が明るいと思う」と考えており、iOSの方が有望と考えている開発者の数を上回った。

news006.jpg アナリストの視点:集客から囲い込みへ、ECサイトの戦略に変化
数年前と比べて、ECサイトでは最終的なコンバージョンまでも視野に入れた総合的なサイト集客の効率化がより重視される傾向にあるという。

2010年の国内クラウドサービス市場は443億円――前年比41.9%増の見込み
IDC Japanは、2014年までの国内クラウドサービス市場における年平均成長率を37.5%と予測している。

news055.jpg 上海万博に出現した未来都市、それを支えるテクノロジーとは?【前編】
経済成長著しい中国を象徴する一大イベント「上海万博」には、今なお連日多くの人々が訪れている。そこでは上海をはじめ世界各国の都市における、あるべき未来の姿を目にすることができた。

news009.jpg アイティメディアID登録ユーザー向け:週刊! ITmedia エンタープライズ電子ブックレット(2010/10/4更新分)
ITmedia エンタープライズで過去注目を集めた記事を、PDF形式の電子ブックレットとして再編集しました。レイアウトはiPadにも最適化しています。今後も、毎週月曜日のお昼(祝日除く)に更新していきます。