BPMの「導入」「運用」フェイズでは何をするの?一問一答式:BPM実践テクニック(3)(2/2 ページ)

» 2004年12月14日 12時00分 公開
[林計寿,アルティマスジャパン株式会社]
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BPMツールで、プロセスの課題を発見

 「運用」は、前フェイズで構築したプロセスを実際に組織の中で運用していくフェイズです。

 BPMのツールを使った場合には、端的にいえば「設定内容を利用できるようにリリースする」ということになりますが、実際には少し複雑かつ重要な考慮事項があります。

  • プロセス切り替えタイミングでの移行管理
  • イレギュラーケースへの対応可用性
  • 運用レポートの適切な把握

などが注意点になります。

 例えばすでに運用中のプロセスを変更する場合などには、変更時点ですでに流れている途中のタスクをどうするかということを考慮する必要があります。

 すべてのタスクが完了してから、新しいプロセスで運用するという方法もありますが、BPMツールに、改善前のプロセスと改善後のプロセスを同時にコントロールできる機能があるものであれば比較的対応がしやすいでしょう。

 また、実際に運用してみるとさまざまなイレギュラーケースも出てきます。そういった定常的でない場合のタスクのコントロールを管理者(アドミニストレータ)から操作できることも大切なことです。

 具体的には、何らかのシステムエラーやBPMツールの設定ミスなどにより特定のタスクが完了しないままで保留されストップしてしまったような場合に、これらを早期に発見し管理者から正常に稼働させる処置を行うことができるようにする必要があります。案外、こういった強制的に管理者がコントロールできる機能の可用性の範囲が運用のしやすさを左右したりします。また、システム上の問題ではなく人的な問題(処理すべき人間の能力以上のタスクが集中し、処理できないなど)でプロセスの組み方自体に問題があり、タスクが滞留するような場合もあります。

 このように滞留しているタスクを監視しフォローをすることは実運用の際には必要です。ツールを利用すれば、自動的に監視を行って警告を発行したり、設定によって自動的に次のプロセスに進めたり、前のプロセスへ差し戻したりできるものがありますが、根本的な改善を行うためには継続的に発生するような滞留などは早期に発見してプロセスの見直しを行う必要があります。

 こうした監視は、BPMツールなどを使わなければなかなかタイムリーにはできません。

「運用」フェイズのレポートを「分析」につなげる

 さらにこのフェイズの重要なポイントは、運用状況のサポートです。監視とはタイミングごとの状況把握のことですが、その状況の蓄積データを把握することが大切です。「最小」「平均」「最大」のタスク(やプロセス)ごとの「処理時間」「処理コスト」「処理に必要とされるリソース状況」、ボトルネックになりやすいポイントのチェックアウトなど、改善の実施状況をレポートすることが必要です。これもBPMツールなどには必ずといっていいほど保有されている機能なので利用することをお勧めします。

 大切なことは運用状況のレポートをしっかりと確認し、再度、次の改善に向けての「分析」のフェイズにつなぐということです。よくある悪い例としては、1つの改善のプロジェクトでBPMの1サイクルが終わるとそのままにしてしまい、「運用」フェイズの状況レポートが十分に行われず、そのために次の「分析」のサイクルに入れない(入らない)プロジェクトもあります。

 ここで原点に立ち返りますが、「BPMは改善のサイクル」が基本原理です。「運用」のフェイズでストップすることなく、「分析」のフェイズにつなぐ材料を残して、サイクルを回していくことが非常に大切なことです。

 企業としてBPMを実施していく際には、企業戦略全体を見渡すビューポイントからのプロジェクト・コントロールが必要です。本来あるべき経営上のビジョンとの擦り合わせを行うことで、プロジェクトが独り歩きせず、本来目指すべき成果を上げられることが大切です。そのためにもBPMのサイクルを有効活用しましょう。

profile

林 計寿(はやし かずとし)

神戸市生まれ。ビジネスマネジメントに関する造詣が深く、ITを有効的に活用するコンサルテーションを多業種の多くの企業に対して手掛ける。「ソフトウェア開発工程管理」に関する講演多数。IT・マネジメントなどに関する執筆活動を行う。日本システム監査人協会会員No.871。アルティマスジャパン株式会社代表取締役社長 兼 CEO(〜2004年9月)を経て現在に至る。


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