BPMは、具体的にどんな業務に適用できるのか?一問一答式:BPM実践テクニック(4)(2/2 ページ)

» 2005年02月10日 12時00分 公開
[林計寿,アルティマスジャパン株式会社]
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マルチ・プロセスの“統合”と“制御”

 「3. ターゲット・プロセスの後に別のプロセスが存在している」は、BPMを適用しているプロセスがそれのみで完結しているのではなく、後続に次の別のプロセスを持っているということです。前述の例であれば、「稟議申請」の後には、稟議の終わった稟議書の「文章管理」が控えているでしょうし、「交通費精算申請」や「出張費精算処理」では、「会計システム」への連動が待っているでしょう。「xxx登録審議」などでは個別の業務処理が控えているはずです。

 特にBPMのツールを利用した場合には、いったんシステムに取り込んだ情報をそのまま、後続のプロセス(というよりシステム)に流すことで、二重入力の手間を省き、かつ入力ミスなどを排除することができるため、企業としてはBPMの非利用価値が常に高いプロセスとなります。

 「BPMツール」→「後続システム」という連動が効率化のシナジーを生みます。もちろん「前処理システム」→「BPMツール」というパターンもありますし、これらが複雑に入り組んだプロセスも実際には多く運用されています。

ALT “手続き”が続く場合

 「4. 一方的でなく、インシデントが行き来するプロセスである」は、発生したインシデント(業務の最小単位)がプロセスを一方向に進んでいくのではなく、処理が行ったり来たり、また場合によってはいくつかのステップを飛び越えたりというように流れていくプロセスに利用されているという意味です。

 「稟議書申請」「見積もり申請」など起票されたものが、プロセス上で常に「合格」するわけではなく、「再記入」「再見積もり」を要求されてプロセスをさかのぼり、「修正」「訂正」作業が行われて、もう一度プロセスを進んでいくというような処理だということです。

 実際の事務レベルの処理を考えると、案外複雑な流れです。紙ベースで運用している場合には、「稟議書がどこに止まっている(誰が持っている)か分からない」とか「見積もり申請中の書類が紛失して再起票した」といったことはよくある例です。BPMツールを利用する場合には、こういったアクシデントによる紛失などは回避することができますし、誰がいまタスクの責任を負っているかを明確にできるので、BPMの適用のメリットを十分に生かせるのではないでしょうか。

ALT “手続き”の流れが複雑な場合

業務改革の起点として

 冒頭で、「ほとんどすべての業務に適用可能」であると述べましたが、効果を発揮しやすい業務とは何かと問われると、ここに述べたような業務が、「適用しやすく」かつ「適用効果が分かりやすい」業務であることが理解できるでしょう。

 この連載でこれまでにも述べましたが、BPMを実施するうえでツールの利用は、マネジメントサイクルを回わせるようになるという効果があります。しかし企業がBPMのツールを利用する際には、必ず導入と運用のコストが発生します。“ワークフロー”との違いやEAIの視線から見たBPMなどとの違いも踏まえながら、(検討を含む)導入のファーストステップの解説は、次回以降で触れていきます。

 BPMツールの導入に際しては稟議が必要でしょう。その場合にやはり効果が見えやすいプロセスからBPMを始めていくのがいいかもしれません。企業内において稟議を取りやすく、誰もが納得をして利用できるというポイントを押さえておくことで、素早く企業内改革を起こすことにつながります。

profile

林 計寿(はやし かずとし)

神戸市生まれ。ビジネスマネジメントに関する造詣が深く、ITを有効的に活用するコンサルテーションを多業種の多くの企業に対して手掛ける。「ソフトウェア開発工程管理」に関する講演多数。IT・マネジメントなどに関する執筆活動を行う。日本システム監査人協会会員No.871。アルティマスジャパン株式会社CEO(?2004年9月)を経て現在、トラステッドソリューションズ株式会社。


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