[アイシロン] クラスタストレージとともに事業を伸ばすストレージ関連ベンダ それぞれの戦略(7)(2/2 ページ)

» 2006年10月19日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]
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EMCやネットワークアプライアンスとは補完的な関係

──すると、ますますネットワークアプライアンスのような企業と真っ向から競合する場面が増えてくるということですか?

 ほとんどのユーザー企業はEMCあるいはネットワークアプライアンスの製品を導入済みです。ユーザー企業は(ストレージを追加する際に)自分たちがすでに使っているものと当社の製品のどちらかを選ぶという点で、当社はEMCやネットワークアプライアンスと競合することになります。しかし、当社はユーザー企業に従来とは異なるニーズがあるのではないか、それを扱うにはアイシロンのクラスタストレージのほうが適しているのではないかと考えます。

 現在、当社の製品はこれらのベンダの製品と非常に補完的な関係にあります。当社では企業に対し、データベースやOLTPアプリケーション用途ではEMCやネットワークアプライアンスをどうぞ使い続けてください、しかしそのほかに大容量の、あるいは拡大を続けるデータ群で、従来型のストレージでは扱いに困っているものがあれば、それにアイシロンを使ってくださいと話します。

 もちろん、クラスタストレージがあらゆるストレージ用途に適しているという当社の考えに基づいて当社が事業展開を進めていく過程で、EMCやネットワークアプライアンスと直接競合することは今後増えてくるのでしょうが、現在はそうではありません。

──エンタープライズの顧客にとって、今解決しなければならない最大の問題は何だと思いますか?

 ITストレージ管理者やCIOにとってストレージにおける最大の課題は、あまりに大量のデータを保存し、オンラインで提供しなければならないということであり、人件費と設備投資の両面でコストが掛かりすぎるということだと思います。当社はそれを根本的に解決することができます。

──今後ビジネスを拡大するためにどういう戦略を持っていますか。

 主に3つの角度から成長を計画しています。まず今後も継続的に革新を続け、ストレージ製品ラインを拡張していくことが1つです。これによりストレージ製品をさらに多様な環境に対して売っていくことができるようになります。

 2つ目に、地理的な展開があります。まだ当社は世界中の国で販売しているわけではありません。北米、日本、韓国、そして欧州の一部が現在の市場です。日本での活動は1年半前からですが、欧州市場には約6カ月前に参入しました。中国、インド、オーストラリア、ニュージーランドなどのアジア大洋州については今後6カ月以内に事業を開始します。さらに中東やラテンアメリカなどでも展開を図らなければなりません。今後数年間にわたって地理的なカバー範囲を拡大するために投資を続けていきます。

 3つ目は販売チャネルおよびOEMのパートナーシップの拡大強化です。日本では10社を超える販売パートナーが存在しますし、欧州や北米でも販売パートナーを拡大しています。OEMパートナーについては最近1社選定したところです。

──どのような企業をOEMパートナーに選んでいるのですか?

 当社が事業を始めたときと同じように、非常に注意深く、焦点を絞ることを心がけています。アイシロンにとって理想的なOEM先は、特定の業種特化型市場に注力しており、具体的な付加価値を持っている企業です。最初のOEM先であるハリス・コーポレーションについては、同社の放送関連ビジネス部門と契約しました。ハリスは世界中の放送局とビジネスをしており、自前のアプリケーションを持っていて、ノンリニア編集製品やビデオ送出装置など関連製品をフルで備えています。ほかのOEM先を探す際にも、このように特定の業界に強く、具体的な付加価値を発揮している企業にしたいと思います。当社はストレージ専業なので、OEM先に完全なソリューションを提供してもらいたいのです。

──システムベンダをOEM先として考えることはないのですか?

 日本市場に限定していえば、NECや日立のようなベンダに扱ってもらえればうれしいです。しかし、日本以外の市場での水平的なベンダとのお付き合いはあまり考えていません。いろいろな理由がありますが、1つはまだ小さな会社なので、焦点を絞っていきたいということがあります。IBMやHPのような企業と世界的なOEM契約を結べたとしても、成功するためには膨大なリソースが必要となります。当社はまだ、明確なターゲットに基づいて成功できる確信がある分野に絞って事業を広げていきたいと思います。

──現在はデータ量がそれほど多くなくとも、今後急速に伸びるような、中堅企業に向けた製品を拡充していく計画はありますか?

 中小企業や中堅企業のニーズについては継続的に注視していきたいと考えています。中小や中堅の企業が大企業と同様な課題を抱えているということは知っていますが、焦点を失わないように注意して事を進めなければならないと思っています。

 実はメディアやエンターテインメントの分野では、特に映画制作関連会社など、従業員100人以下の顧客もたくさんいます。50人しかいないような会社でも、30テラバイトといった規模のデータを扱わなければならないところは多数存在します。中小や中堅の市場一般ということでは、動向を注意深く見守り、クラスタストレージがこの市場で広範に受け入れられるのかどうか、賢い決断をしたいと思っています。皆さんが考えるより早い時期に決断することになるかもしれません。

著者紹介

▼著者名 三木 泉


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