[イコールロジック] 管理者にやさしい新世代ストレージストレージ関連ベンダ それぞれの戦略(10)(2/2 ページ)

» 2007年06月07日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]
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「iSCSIが使い物にならない」は大きな間違い

 PSシリーズはiSCSIストレージ機器だ。ファイバチャネルSANへの接続やNASとしての接続という選択肢は用意されていない。従って、iSCSIが使い物にならないと考える人たちには受け入れてもらえないことになる。だがビュレンス氏は、すでにiSCSIは十分使える技術だと強調する。

 「イーサネットでは現在、安価に利用できる帯域幅は1Gbpsまでに限定されている。10Gbpsがコスト効率よく利用できるようにならないとiSCSIは普及しないと考える人がいるが」と聞くと、次のような反論が返ってきた。

 「イメージとしては、ファイバチャネルのSANがケーブル1本で2Gbpsあるいは4Gbpsを使えるのに対し、iSCSIはイーサネットの都合でケーブル1本当たり1Gbpsがせいぜいなので、遅く感じる。しかし、イコールロジックの機器では1台当たり3本、つまり3Gbpsを利用できる。台数を増やしていくと、6Gbps、9Gbpsと、利用できる帯域幅の合計はどんどん増加し、ハイエンドのファイバチャネル・ソリューションをすぐに追い抜いてしまう。当社の機器はそれぞれにルーティングスイッチのチップを搭載していて、システム間の転送はワイヤレートで行われるため、問題はない。レッドハットが2007年3月に発表したベンチマークテストで、サーバに2Gbpsのファイバチャネル・ホストバスアダプタ(HBA)を装着し、これを経由してファイバーチャネル・ストレージにアクセスした場合と、サーバ側ではソフトウェアのイニシエータを使ってイコールロジックのiSCSIストレージにアクセスした場合を比較した例がある。アクセス対象はOracle 10gのOLTPデータだ。その結果は、パフォーマンスがほとんど同じで、アクセス遅延はイコールロジックのほうが低かった。これはレッドハットが独自に実施したテストで、チューニングは一切行われていない」

 iSCSIだからといって、パフォーマンス面で問題がないとはいえ、市場の性格上、大企業のERPなどを支える大規模ストレージがすぐに同社の製品に入れ替わるとはビュレンス氏も考えていない。

 「しかしこうした企業には、ほかにストレージが直結された多数のサーバが存在していて、利用率の低さやバックアップ/リカバリの難しさといった問題を抱えているはずだ。最初の段階ではこういった問題の解決を助けることで、売り上げを伸ばしていきたい。アプリケーションのバージョンアップもいいきっかけになる。例えばMicrosoft Exchange Server 2007は64ビット・アプリケーションであり、企業はこれに移行するためにサーバを買い換えるはずだ。その場合にはストレージも買い換える可能性が高い。さらに、ストレージ直結型のサーバを多数利用してきた企業がブレードサーバや仮想化技術を用いて統合を図ろうとしている。こうした場合にもiSCSIはぴったりだ」

 PSシリーズの最大の特徴は、設定や管理に専門的な知識が必要ないという点にある。第1にiSCSI機器であるために、ファイバチャネルSANで要求される複雑な設定作業は不要だ。ストレージを使い始める際の作業も、RAIDセットが自動的に構成されるなど大幅に省力化されていて、設定ミスが発生する可能性は低い。また、前述のようにストレージ容量を追加しなければならなくなった場合でも、利用中の装置を止めることなく、最小限の手順で新たな装置を追加し、利用中の領域を拡張することができる。データの移動を人手で実施する必要はない。そのうえデータへのアクセスはより多くのディスクドライブやコントローラに分散されるため、スピードが向上する。容量が足りなくなってきた際に、装置の稼働を止めることなく容量を追加できるということは、あらかじめ大容量のストレージ装置を購入する無駄を排除することにもつながる。

 また、ストレージ機器の運用で求められる主要な機能が標準で搭載されているのもユニークだ。データのバックアップあるいは複製に相当する主な機能としては、スナップショット、クローン、レプリケーションが用意されている。

 スナップショットはある時点でのデータの状態を捕捉するものだが、PSシリーズでは1ボリューム当たり512までのスナップショットを作成することができる。クローンでは、ボリュームを別のRAIDセットにそのまま複製することができる。同様に、適切なディスクドライブ速度とRAIDタイプをアプリケーション別に割り当てるため、既存のデータを簡単な手順で移動することも可能だ。

 PSシリーズにはSASドライブを搭載したモデルと、SATAドライブ搭載のモデルがある。SASドライブで構成される装置をメインのストレージとして用い、SATAドライブの装置をバックアップ用に、などと使い分けることができる。

 レプリケーションは、長距離のデータ転送に適したiSCSIが生きてくる機能だ。ディザスタ・リカバリ、あるいは事業継続性の確保を目的としたデータの複製を、遠隔拠点間で実行することができる。最初に元データの完全な複製をローカルに作成しておけば、その後は差分の転送が定期的に自動で行われ、非同期型のため、比較的狭い帯域でも使え、経済的にデータを保全できる。

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▼著者名 三木 泉


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