勤怠管理システムを導入する際、気になるのはその費用。クラウド型とオンプレミス型で料金が異なるため、それぞれの費用相場を知っておくことが大切です。また、導入コストを抑える方法もあります。この記事では、助成金の活用や段階的な導入などの方法も含めて、コストを抑えつつ効率的に勤怠管理システムを導入・運用するためのポイントを詳しく解説します。
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目次
勤怠管理システムの費用相場
勤怠管理システムを導入するとき、最初に気になるのはやはり費用ではないでしょうか。ITシステムの導入形態は大きく「クラウド型」と「オンプレミス型」に分かれ、どちらを選択するかによって費用が大きく異なります。自社に最適なシステムを選ぶためには、まずこの二つの違いと費用感を把握しておくことが重要です。
ここに記載する費用はあくまで一般的な目安であり、提供ベンダー、プラン、機能、利用人数、カスタマイズの有無など多くの要因によって大きく変動します。正確な費用を知るためには、複数のベンダーから見積もりを取得し、比較検討しましょう。本記事では最後におすすめの勤怠管理システムもご紹介していますので、ぜひ併せてご覧ください。
クラウド型勤怠管理システムの費用
クラウド型の勤怠管理システムは、インターネット経由で事業者が用意するサーバへアクセスして利用する形式です。一般的にSaaS(Software as a Service)と呼ばれ、ソフトウェアをインストールしたり自社サーバを用意したりする必要がないため、導入がしやすいことが特徴です。
クラウド型の場合、初期費用は0円から数十万円程度の場合が多いです。
例えば、ジョブカン勤怠管理やハーモス勤怠などは初期費用0円で導入できます。その一方で、チムスピ勤怠は15万円程度、オフィスステーション 勤怠は11万円程度の初期費用がかかります。製品・サービスによって初期費用の設定に差異はありますが、初期費用に何が含まれているのか、サポート範囲や運用コスト(月額利用料)にどう関わってくるのかなども含めて考えていくものであることは理解しておきましょう。ともあれ、初期費用0円などは導入を検討するハードルがぐっと下がるポイントの1つです。また、オプションとして追加機能やサポート、ICカードリーダーのような機器費用が別途かかるケースもあります。
月額費用は1ユーザーあたり数百円程度からの従量課金制が多く、この場合は利用人数に沿って費用が決まる仕組みになっています。また、ジョブカン勤怠管理のように「機能数に応じて単価が変わる」料金モデルもあれば、一定のライセンス数ごとに料金が変わるタイプもあります。
クラウド型では、システムの管理と維持、機能バージョンアップやセキュリティ対策などはを提供事業者が行うため、導入する企業側も自然に最新の機能やセキュリティ対策を享受しやすくなります。インターネット環境さえあれば社外からでもアクセスできるので、テレワークや直行直帰の社員がいる企業にも適しています。
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オンプレミス型勤怠管理システムの費用
オンプレミス型勤怠管理システムは、原則として自社で自社へ、あるいは自社管理のサーバ類設備を設けてシステムを構築する形態です。クラウド型のような毎月の利用料は発生しにくい一方、初期費用は数十万円から数百万円以上となる傾向があります。
システム導入時にはソフトウェアライセンス、サーバー設置や設定費用、ネットワーク環境整備、システム導入・カスタマイズ費などがかかるため、高めの初期投資を要する可能性があります。
また、オンプレミス型ではソフトウェアの保守契約を結ぶ必要などもあり、その保守費用が月額または年額で加算されるケースが多いです。サーバの維持管理費やハードウェアの更新費用、OSやデータベースなどのライセンス更新費、人材の確保といったランニングコストも継続的に発生します。こうした運用コストの一部は見えにくいため、導入前に総所有コスト(TCO)を試算しておくことも重要でしょう。
オンプレミス型の大きなメリットは、企業独自の仕様に合わせて細かなカスタマイズができる点です。既存システムとの特殊な連携が必要な場合や、自社のセキュリティポリシーが非常に厳しい場合は、オンプレミス型の方が柔軟に運用できる傾向があります。長期的に見ると、従業員数が多い大企業では、クラウド型のようにユーザー数の増加分だけ利用料が増える構造に比べて、オンプレミス型が有利になる可能性もあるでしょう。しかし、システム障害時の復旧対応や法改正へのアップデートは、基本的に自社または外部委託先が担うことになるため、体制づくりも含めて総合的な検討が必要です。
提供形態 | 初期費用の目安 | 月額料金の目安 | 主なメリット | 注意点・リスク |
クラウド型 | 無料から数十万円程度の場合が多い | 1ユーザーあたり数百円程度からが一般的 | ・導入が簡単で初期投資を抑えやすい ・自動アップデート ・どこからでも利用可能 |
・利用人数やオプション機能追加で費用変動 ・サービス終了リスク・将来の料金改定リスク |
オンプレミス型 | 数百万円以上となる傾向がある | 保守費やサポート契約が別途必要 | ・自社サーバーでの運用が可能 ・カスタマイズ性が高い ・長期利用でコストメリットの可能性 |
・ハードウェア管理や保守が必要 ・専門知識や人材が不可欠 ・初期費用が高額傾向 |
このように、提供形態によって費用構造やメリットが変わります。どちらが優れているというよりも、「自社の規模」「運用体制」「必要なカスタマイズ度合い」などを踏まえて最適な選択をすることが大切でしょう。
勤怠管理システムを費用対効果で選ぶポイント
勤怠管理システムは「ただ安ければ、お得」というものではありません。業務の効率化やコンプライアンスの順守、人的ミスの削減など、導入によって得られる効果がコストに見合うかどうかが重要です。ここでは、費用対効果を高めるために押さえておきたいポイントをご紹介いたします。
まずは自社の課題やニーズを整理し、「必須機能」と「あると便利な機能」を切り分けることが最優先といえます。そのうえで、実際の操作感やサポート品質を確認し、システムの将来的な拡張性や運用コストを考慮して導入を検討すると、失敗リスクが下がるでしょう。そのうえで、導入時に確認したいポイントは以下の4点です。
- 必要な機能を明確にする
- 無料トライアルやデモを活用する
- システムの柔軟性と拡張性をチェック
- 導入後の運用コストも考慮する
必要な機能を明確にする
勤怠管理システムには、基本となる「勤務時間の記録や休暇申請の管理」の機能から、シフト作成、工数管理、給与計算システムとの連携、年末調整機能などさまざまな追加機能があります。多機能なシステムほど高額になります。本当に必要な機能、自社では不要な機能を最初に洗い出すことが大切でしょう。
例えば、従業員数が少なく、シフトもほとんど組まずに済む職場であれば、シンプルに出退勤管理と休暇申請ができるシステムで十分かもしれません。一方、飲食店や小売業など大勢のパート・アルバイトを抱えてシフト管理が必要な企業では、シフト作成や管理機能が充実しているシステムでないと、後々手間やコストがかさむ可能性があります。
また、プロジェクト単位での時間管理が必要な業種なら、工数管理機能の有無を確認するのもよいでしょう。必要以上に多機能なシステムを導入すると、使いこなせずランニングコストだけが増加するケースもあるので要注意です。
打刻方法についても、従業員の働き方やITリテラシーに合わせて最適な手段を選びましょう。下記は代表的な打刻方法の一例です。自社の打刻方法と照らし合わせてご覧ください。
打刻方法 | 概要 | メリット | デメリット | 向いている環境 |
Webブラウザ / PC打刻 | PCのブラウザ画面から出退勤を記録 | 特殊な機器が不要、オフィスワークに導入しやすい | PC起動の手間が発生、共有PCだとログイン管理が必要 | デスクワーク中心のオフィス |
スマホアプリ打刻 | スマートフォンのアプリで打刻。GPSと連携する場合も | 外勤・テレワーク向き、場所を問わず打刻可能 | スマホの所持が前提、バッテリー切れやGPS精度の問題がある | フィールドワーク・直行直帰・テレワーク |
ICカード打刻 | 専用リーダーに交通系ICカードや社員証をかざす | 操作が簡単、打刻がスピーディ | カードリーダー導入費、代理打刻リスク | オフィス・店舗・工場など |
生体認証打刻(指紋・顔) | 指紋や顔認証によって本人確認しながら打刻 | 不正打刻を防止しやすい、紛失リスクがない | 導入費用が高額になる傾向、機器の認証精度に左右される | 高セキュリティ要件の職場 |
チャットツール連携打刻 | SlackやLINE WORKSなどのチャットにコマンドを入力して打刻 | 普段使いのツールで完結、操作が楽 | チャットツール利用が前提、機能が限定的な場合がある | チャット中心のコミュニケーションを行う企業 |
このように、従業員の勤務形態や現場の事情を踏まえて打刻方法を選ぶことは、システムを円滑に運用する上で欠かせません。
無料トライアルやデモを活用する
多くの勤怠管理システムでは、無料トライアルやデモ環境が用意されています。実際に使ってみないとわからない部分は多いため、操作画面の使いやすさや管理画面の分かりやすさは、導入前に確かめることをおすすめします。トライアル中に問い合わせを行い、サポート体制の対応の早さや質をチェックするのも有効でしょう。
また、システムによっては無料トライアルの期間中に利用できる機能が限定的な場合もあるため、「本番導入後に使いたい機能をちゃんと試せるか」を確認しておくと安心です。自社の就業規則やシフトパターンを設定してみて、問題なく集計やアラート機能が動作するかどうかをテストするのも重要なポイントになります。
システムの柔軟性と拡張性をチェック
一度導入した勤怠管理システムは、数年単位で運用することが一般的です。勤怠ルールは法改正や社内制度の見直しなどで変化する可能性がありますし、事業が拡大すれば従業員数も増えるでしょう。そのため、将来のスケールアップに対応できる柔軟性を持つシステムかどうかを事前に確認しておくと、後々大幅なリプレイス費用がかかるリスクを抑えられます。
例えば、工数管理や会計・給与計算システムとのAPI連携、年末調整機能の追加など、必要に応じてモジュールを追加できるかは見逃せないポイントです。特にクラウド型の場合、提供事業者のアップデートで新機能が追加されるケースが増えています。オンプレミス型を選ぶ場合は、保守契約の範囲でどこまで無償アップデートが受けられるか、法改正に素早く対応してもらえるかといった点を要チェックです。
導入後の運用コストも考慮する
勤怠管理システムの費用検討では、初期費用だけでなく、運用フェーズで継続的に発生するコストも忘れないようにしましょう。クラウド型であれば月々の利用料と追加機能料金、オンプレミス型であればサーバー管理費や保守費、人件費などがかかります。
ユーザー数が増えるとクラウド型は毎月の支払いが増える一方、オンプレミス型ではハードウェアの容量増強やライセンスの追加、システムアップデート時のコンサル費などが増える可能性があります。最終的にどちらの形態が得かは企業規模や運用期間によって変わるため、5年~7年程度のスパンでの総費用を比較検討するとよいでしょう。
コストを抑えて導入する方法
勤怠管理システムの導入は、企業にとって大きな投資になりますが、工夫次第で費用を軽減できる場合があります。ここでは、参考テキストに挙げられている助成金・補助金の活用や段階的な導入方法についてご紹介します。自社の状況に応じて、無理のない形で導入を進めましょう。
- 助成金や補助金を活用する
- 段階的に導入する
助成金や補助金を活用する
国や地方自治体では、中小企業向けにIT導入を支援する「IT導入補助金」や、働き方改革に関連する取り組みを支援する「働き方改革推進支援助成金」などを提供しています。クラウド型の勤怠管理システムはIT導入補助金の対象になることが多く、一定の要件を満たせば初期費用や導入関連費用の一部が補助される可能性があります。
また、勤務間インターバル制度や長時間労働の削減など、具体的な目標達成を伴う取り組みであれば、働き方改革推進支援助成金を活用できる場合もあるでしょう。
これらの助成金・補助金を利用するためには、公募期間や申請手続きに関する情報をこまめに収集し、適切なタイミングで準備を進める必要があります。申請書類や要件が複雑に感じる場合は、IT導入支援事業者や社会保険労務士など専門家のサポートを受けるのも有効です。実際に交付決定を受ける前に契約をしてしまうと対象外となるケースもあるため、条件や流れをしっかり把握してから進めるようにすると良いでしょう。
参考:「IT導入補助金2025」(中小企業基盤整備機構)
参考:「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」(厚生労働省)
段階的に導入する
全社で一斉導入すると、想定外のトラブルが発生したり、システムが定着する前にコストが大きくふくらんだりするリスクがあります。そのため、一部の部署や小規模拠点でまず試験導入(パイロット運用)を行い、システムや機能が合っているかを確認する段階的導入が注目されています。
例えば、最初は必要最低限の基本機能だけ契約し、使い勝手や効果を検証したうえで、順次シフト管理機能や工数管理機能などを追加していく方法が考えられます。段階的導入のメリットとしては、初期投資を抑えられるだけでなく、現場からのフィードバックをもとに設定の微調整を行いやすい点が挙げられます。新たなシステムに慣れるまでの混乱を最小化できるため、従業員にも受け入れられやすいでしょう。
ただし、段階的に導入する場合は、あらかじめ全社展開する計画を立てながら進めることが重要です。各部署がバラバラに動いてしまうと、最終的に導入範囲を広げるときにシステム設定の不一致やデータ移行で混乱を招くかもしれません。社内への周知や研修スケジュールも含めて、計画的に進めることでコストだけでなく工数面のロスも抑えられるでしょう。
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