
あなたの会社は「勤怠の中抜け」を正しく整備していますでしょうか? 近年、テレワークやフレックスタイム制の普及によって多様な勤務形態への対応が進み、中抜け勤怠を導入する企業が増えています。
本記事では、中抜け勤怠の意味や導入背景、勤怠管理の具体的な方法、制度運用のポイントや注意点、さらに導入時に役立つ勤怠管理システムの活用法まで解説します。自社に合った働き方改革や、社員の満足度向上を目指す方はぜひ参考にしてください。
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目次
勤怠管理における中抜けとは
勤怠管理における「中抜け」とは、出勤から退勤までの勤務時間(拘束時間)の途中で、一時的に業務から離れ、用事が済み次第再び業務に戻る働き方のことです。
働き方改革が進む中、中抜けは主に以下のパターンで活用されています。
- 従業員都合の私用: 家族の送迎、通院、役所の手続き、育児・介護など、「平日・日中でなければ済ませられない用事」や「緊急性のある用事」のために利用されるケース。近年ではテレワーク中のリフレッシュや自己研鑽のために認められることもあります。
- 会社都合の業務調整(中抜け勤務): 宿泊業、飲食業、運輸業(バス、タクシー)など、1日の中で繁忙期(繁忙時間)と閑散期(閑散時間、アイドルタイム)の差が激しい業種において、業務が発生しない時間帯を「休憩時間」として設定するケースです。
中抜けの制度が広まった理由
働き方の多様化が進む近年、仕事と私生活を両立させる「ワークライフバランス」への意識が高まっています。 かつては「早退」や「半日休暇(半休)」で対応していた用事に対し、テレワークやフレックスタイム制の普及によって、「必要な時間だけ抜けて、その分働いて調整する」という柔軟な働き方が可能になりました。
企業としても人材確保や従業員満足度(ES)向上のために、中抜け時間を「休憩時間」として扱ったり、フレックスタイム制と組み合わせて「始業・終業時刻の調整」で対応したりと、柔軟な制度運用を取り入れるケースが増えています。
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勤怠管理での中抜けの扱い方
中抜け時間の扱いによって、労働時間や給与計算の方法が変わるため、就業規則や労使協定で明確なルールを設けることが不可欠です。
休憩時間として中抜けを管理する方法
- 中抜けの運用は「休憩扱い/時間単位有休/分割勤務(1日2回出勤)」の3択
- 給与・割増・休憩付与の扱いが分岐するため、就業規則・労使協定で明文化が必須
- 打刻・申請・承認を一元化して、証跡と集計ミス防止を両立
中抜けを休憩時間と見なして管理する場合、その時間は労働時間から除外されます。そのため、始業または終業時刻をずらし、所定労働時間を確保する必要があります。
例えば、9時~18時勤務の従業員が14時~16時に私用中抜けを取る場合、終業時刻を20時に延長することで実働8時間を確保できます。ただし、終業時刻の繰り下げによって深夜労働が発生する可能性があるため注意が必要です。
有給休暇(時間単位)の活用
中抜け時間を時間単位の有給休暇で処理すると、その分の給与控除は行われません。この場合、労使協定の締結と就業規則への記載が求められます。
さらに、時間単位有休は年間で5日分が上限となっており、申請・承認のフローも明確に決めておくことが重要です。従業員からの申請を前提として運用し、企業側から強制することはできません。
1日2回出勤した扱いにするケース
業種によっては、午前と午後など2回に分けて出勤する分割勤務を採用することもあります。この場合、中抜け時間は休憩とは別の「非労働時間」として扱われ、6時間を超える勤務ごとに法定休憩を設ける必要があります。
例えば「9時~14時」「17時~21時」の2勤務といった形です。現場の誤解で「長い中抜け=休憩」としてしまうと、労基法違反となるため厳密な管理が求められます。
就業規則で中抜け勤怠を整備するには
どの方法で運用するにせよ、トラブルを防ぐために就業規則に明文化し、全従業員に周知することが大切です。
- 定義と対象範囲を決める(対象者・利用目的・時間帯・回数)
- 運用方式を選ぶ(休憩/時間単位有休/分割勤務)
- 賃金・割増の取り扱い(控除/割増/休憩付与の基準)
- 申請〜承認フローと打刻ルール(開始・終了記録、連絡手段)
- 周知・届出(労働者代表の意見聴取/労基署届出/ガイド配布)
就業規則への明記と周知
就業規則には、中抜けの定義や対象者、利用可能な時間・回数、申請・承認の手順などを具体的に記載する必要があります。また、勤怠上の扱いや賃金の取り扱いも明確にしましょう。制度を導入・変更する際は、労働者代表の意見聴取や労基署への届け出、説明会やガイドライン配布による周知を徹底します。
賃金控除と公平性の確保
有給休暇を利用しない中抜けは「ノーワーク・ノーペイの原則」に従い給与控除となります。会社都合の中抜けであっても、完全に業務から解放されていれば同様です。全従業員に一貫したルールを適用し、不公平感が生じないよう注意しましょう。
テレワーク・フレックス制と中抜け勤怠
テレワークやフレックスタイム制の普及により、中抜けの発生頻度が高まっています。一方で運用ルールが曖昧だと、勤怠管理ミスやトラブルの原因となることもあるため注意が必要です。
テレワーク時の中抜け運用
在宅勤務では家事や育児、宅配対応など、私用で中抜けする場面が増えます。そのため、「中抜け開始」と「業務復帰」のタイミングでチャットやメール、勤怠システムを通じて管理者へ報告するルールを設けます。これは監視のためではなく、労働時間と非労働時間を明確に分けて、会社として法的責任を果たすための「証拠」を残す意味があります。
モバイル打刻や在宅フロー管理のシステム化を検討している人は「勤怠管理アプリ厳選14選」も併せてご確認ください。
フレックスタイム制での対応
フレキシブルタイム(出退勤自由時間)中は中抜けを自由に調整できます。一方で、コアタイム(必須勤務時間)中の私用中抜けは原則認められず、やむを得ない場合は事前申請と管理者の承認が必要です。この場合、時間単位有休の取得や無給の休憩扱いなど、ルールに従って厳格に処理します。
おすすめリモートワーク時の状況把握方法は「テレワークに有効な勤怠管理方法」も併せてご確認ください
中抜け勤怠の注意点とトラブル防止策
中抜け制度はルール設計が曖昧だと管理ミスやトラブルが発生しやすいです。特に注意したいポイントをまとめます。
移動時間や業務連絡の取り扱い
中抜け中の移動時間や業務連絡の対応については、その時間が会社の指揮命令下かどうかで判断します。たとえば、私用の移動時間は中抜け(非労働時間)ですが、会社から指示があったり、業務連絡に対応した場合は労働時間となります。「手待時間」として会社から即時対応を求められる場合も、労働時間とみなされます。
深夜労働や残業の管理
中抜けを休憩扱いにすることで終業が遅くなり、22時以降の深夜労働が発生する場合は、深夜割増賃金の支払い義務が生じます。残業中に中抜けした場合も休憩時間扱いとなり、その分の残業代は発生しません。いずれも就業規則に明記し、定期的に運用状況を確認して見直すことが大切です。
上限規制の実務は「36協定と勤怠管理」をご確認ください。
勤怠管理システムの活用方法
中抜けの管理や集計を手作業で行うとミスや負担が増えるため、勤怠管理システムの活用が効果的です。システム導入により、複雑な勤務形態にも対応しやすくなります。
中抜け打刻機能のあるシステムを選ぶ
中抜けの開始・終了を個別に記録できるシステムが便利です。打刻漏れや申請忘れを防ぐアラート機能や、申請・承認ワークフローも備えていると、管理者の手間を大きく減らせます。集計した勤怠データが給与計算システムと連携できるかどうかも、システム選びの重要なポイントです。
機能要件の洗い出しは「勤怠管理システムの基本機能と導入メリット」をご確認ください。
在宅・外出先からも利用できるシステム
テレワークや外出先から打刻・申請ができるクラウド型システムを選ぶと、柔軟な働き方にも対応しやすいです。リアルタイムで勤務状況を確認できるため、従業員の管理がしやすくなります。導入後は全員に操作方法やルールを案内し、スムーズな運用を目指しましょう。
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