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中国オンラインゲームビジネスを支えるプリペイドカード(後編)盛大ネットワークに聞く

» 2004年01月21日 19時48分 公開
[RBB Today]
RBB Today

 現在もっともオンラインゲーム市場が拡大している中国の現状について、中国最大のパブリッシャーである盛大ネットワークの日本事務所代表、黄哲氏にインタビューをおこなった。前編ではオンラインゲーム市場成立の背景について、そしてこの後編では中国市場の現状や課金決済の仕組みなどについてうかがった。

 ――PlayStation2などのコンソール市場は中国に根付くのでしょうか?

 現時点では、ハードの方は正式に発売されている中国版よりヤミルートや個人輸入の外国版の方が安いですね。ソフトも海賊版が出回っています。ソニーが発表しているハードとソフトの値段を考えると、その普及は簡単ではないかもしれない。

 ――韓国ではソニーがPlayStation2開発者向けミーティングなどを行っていますが、中国ではPS2用のソフトの開発を作ろうという動きはあるのでしょうか。普及してから考えるということでしょうか?

 まだ普及していなくて様子見というのもありますが、全体的に中国におけるゲームの開発力はまだ弱いのです。海賊版しかなかった市場なので、いくつかゲーム開発チームや会社はあったのですが、正式版があまり売れずそれら会社の経営は非常に厳しかったです。

 2001年になってオンラインゲームでようやくビジネスとして成立し始めて、オンラインゲームの制作を始めた企業が多いのですが、最も経験のある会社ですら2年のノウハウしかなくて、全体的な開発力や人材が足りていません。PCゲームを作るのは大変で、もちろんコンソールゲームも作りたいですけど、もっと大変でしょう。

 ――盛大ネットワークという会社について教えてください。

 盛大の会社概要ですが、本社は上海にあります。社員数は、650人、2002年の売り上げは4億元(およそ60億円)になります。

 主力ゲームタイトルとしては、The Legend of Mir2、The World of Legend 、BnB(ボンバーマンシリーズのオンラインゲーム:開発元NEXON)、ポトリス2などがあり、日本のゲットアンプトも好評でユーザは増えてきています。

 ――ゲットアンプトは八王子にあるサイバーステップが開発元でしたね。こういうふうに海外で羽ばたく会社が出てくるというのはいいですね

 そうです。今後サイバーステップ社のような会社が増えるよう、手助けがしたいです。

 ――盛大のライバルはどこになりますか?

 例えば、9Cityという上海に拠点を置く会社があります。この会社は現在、MU(開発:韓国WebZen)を運営しています。

 ――日本企業のどこと組みたいですか?

 日本のゲームコンテンツはアジアの中では間違いなくトップですから、いいコンテンツがあればどこでも組みたいですね(笑)。

 ――中国での課金決済手段について教えてください

 プリペイドカードが主な決済手段となっています。クレジットカードが中国では普及していないので。カードの裏に印刷されているIDとパスワードを入力すれば、すぐにゲームがプレイできます。あと、SMS(携帯電話でのショートメッセージサービス)による課金もありますが、これは始まったばかりで、現在はプリペイドカードがほとんどです。

 ――携帯電話ではどのように決済をするのですか?

 まずウェブサイトで自分の携帯番号を入力します。それから料金プランを選び、申し込みをします。すると、その携帯にメッセージで認証コードが送られてきます。自分のアカウントと送られてきた認証コードを入力すれば、携帯電話料金と一緒に課金されるという仕組みです。

中国オンラインゲームのキーワードはネットカフェとプリペイドカード

 ――プリペイドカードの流通について詳しく教えていただけますか?

 プリペイドカードの発行は盛大がやっていまして、流通の専門業者を使ってネットカフェも含む小売店で販売しています。

 ただ、面白いのはパッケージソフトの流通業者とは違う流通業者を使っているところです。プリペイドカード自体、商品の占めるスペースが少なく、商品として差別化が図りにくいものです。、流通業者が棚のいい場所をとるといった営業力が重要ではないので、"強い"流通業者である必要はありません。カード自体を販売店まで流通させることが出来ればよいのです。

 ――御社が成功されたのは、プリペイドカードを全国各地にあまねく普及させたのが要因だといわれていますが

 そうです。弊社は、既存のパッケージ流通業者にこだわらず、インターネットカフェに弊社のカードを流通させられる業者を使い、ネットカフェへの流通網を築き上げることが出来ました。

 ――オンラインゲーム各社さんがビジネスを中国国内でやる場合には、インターネットカフェは避けて通れないということですね

 今のオンラインゲームユーザの6割強はインターネットカフェでプレイしており、インターネットカフェは避けて通れないでしょうね。盛大は当初からネットカフェを中心にビジネスを展開しています。

 ――今後は日本みたいなISP課金などは出てくるのでしょうか

 中国でもISP課金とか電信会社による課金は出てきているのですが、順調とは言いがたい状況です。

 ――盛大の、今後の日本での展開は?

 ひとつは、今までやってきた通常のライセンス許諾による運営権取得ですね。日本製のコンテンツの権利をお預かりして、中国で展開します。

 あとは、ボーステックさんのときのような投資です。オンラインゲームタイトル、もしくは制作会社等に、弊社が資金協力してオンラインゲームを作っていただいて、中国でそのコンテンツを展開するわけです。

 ――ボーステックといえば銀河英雄伝説のオンラインバージョンがありますね

 まもなく日本でのベータテストが始まるということで、そこから2ヶ月ぐらいで中国語版を用意して、2004年の春ぐらいには中国で展開しようと思っています。

 ――ありがとうございました。

(聞き手はIRI-CT代表取締役 宮川洋)