イー・アクセスは2月5日、モバイルブロードバンドサービスの実現を目指し、「TD-SCDMA(MC:マルチキャリア)」方式を採用することを発表した。米Navini Networksと戦略提携を行い、同社の開発した装置を利用して3月からフィールド実験を開始する。
イー・アクセスでは以前、米IP Wirelessの技術を採用して、「TD-CDMA」方式での実証実験を行うとアナウンスしていた(記事参照)。しかし、その後の検討結果で、「Naviniの方式の方が、ベターだと分かった。現時点で、一番進んだシステムだ」(イー・アクセスのCOO、種野晴夫氏)。
TD-CDMA方式の採用は一時凍結し、今後はTD-SCDMA(MC)方式をメインに考えるという。商用化の時期などは未定だが、メガビットオーダーでの無線ブロードバンド通信が可能になる見込み。ユーザーのニーズに応じて、IPモバイル電話のサービス提供も視野に入れるとした(別記事参照)。
TD-SCDMA(MC)方式は、米テキサス大学オースチン校電子情報工学科教授、Dr.Guanghan Xuにより提案されたもの。同氏は、TD-SCDMA方式の開発で知られていたが、2000年にNavini Networksを立ち上げ、TD-SCDMAに技術を追加するかたちでTD-SCDMA(MC)を開発した。
TD-SCDMA(MC)の概要を説明する前に、まずTD-CDMA方式を簡単に説明する必要があるだろう。そもそもTD-CDMAとは、「Time Division CDMA」の略(モバイルのキーワード参照)。IMT-2000で定められた3G規格の1つだ。CDMA方式の中でも、時分割多重(TDD)の技術を利用し、通信チャネルを符合多重した上で時間軸にスロット分割する。
一方、今回のTD-SCDMA(MC)は「Time Division Synchronous CDMA(Multi Carrier)」の略。アンテナ――端末間でやりとりする電波に指向性を持たせる「スマートアンテナ(アダプティブフェーズドアレイ)」の技術や、端末相互の干渉を最小化する「上り同期」の技術、複数の搬送波でデータを伝送する「マルチキャリア」の技術などを組み合わせているという。
TD-SCDMA(MC)方式は、世界各国で実験が行われている。米国では、既に商用サービスを展開している事業者もある(主な事業者のサービス状況は、下表参照)。
通信事業者名 | 実験 | 商用サービス |
---|---|---|
Sprint | 完了 | 準備中 |
Bell South | 実施中 | ― |
Ntlos | 完了 | 提供中 |
Rioplex | 完了 | 提供中 |
ほかに、オーストラリア、マレーシア、インド、オランダ、イタリア、パナマ、ウルグアイなどで実験が完了している。韓国では、KT(コリアテレコム)、SK Telecom、Hanaro Telecomの3社により各自でフィールド実験が行われている。「ソウルは、(ビル街で)東京に似た景観。そこでも、高い評価を得ている」(Navini NetworkのAlastair Westgarth氏)。
TD-SCDMA(MC)方式は現状、標準化されていない。イー・アクセスは、「移動体通信技術は日々進化しているが、標準化が大幅に遅れて後追いしている」と、コメントする。
同社は、IMT-2000とはそもそも“技術コンセプト”だと話した上で、TD-SCDMA(MC)はIMT-2000のコンセプトに基づくシステムだと強調した。
実際は、現在T1P1の第4部会で標準化が進められている段階。今年春にも、最終承認が行われ、機器のスペックが決定する。その後は、ANSIやITUなどで随時承認手続きが進められるだろうとした。
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