とはいえ、HD DVDとしてROMメディアがDVD Forumで規格化されたAOD陣営も、容量面での不利があることは百も承知だ。だからこそ、ROM規格の圧縮コーデックにMPEG2に加えてH.264(MPEG4/AVC)とWMV9の採用を検討している。
1月のレポートでも紹介したように、今月のDVD Forum幹事会では、HD DVD ROMの圧縮コーデックにMPEG2、H.264、WMV9の3つが提案、承認される見込みだ。東芝の説明によると、H.264とWMV9はいずれもMPEG4を起源としているため、デコーダチップ回路のほとんどを共用できるという。HD DVDプレーヤーは、3つのコーデックのデコード機能を持つことになる。
AOD陣営は、H.264やWMV9の圧縮パフォーマンスが、MPEG2の2倍に達するため、容量面の不利を十分にカバーできると説明している。
「DVD Forumで次世代DVDのコーデックを検討している時から、もちろんわれわれも議論に参加してきた。各コーデックの画質順位はともかくとして、現在広く使われ高画質化技術でも熟成が進んでいるMPEG2の実力は無視できない。放送にもMPEG2が使われており、記録型ではMPEG2のストリーム記録も要求される。スムーズな移行を促すには、基本のコーデックをMPEG2にする必要がある。
その一方、現在はH.264が注目されていることも十分承知している。では実際に、MPEG2と比べて本当に画質が良いのか? 「H.264の実力はMPEG2の2倍以上と言われているが、HD映画で実際に比較してみると、それほどの実力はないことがわかる」と柏木氏。
柏木氏は「HD映画コンテンツを用い、MPEG2とH.264の比較テストを行ったことがある。12Mbps、15Mbps、20Mbpsで同一映像を圧縮し、それぞれのコーデックの画質をハリウッドのスタジオ関係者に評価してもらったが、両者のスコアはほぼ同じという結果になった(注:比較結果については昨年のCEATECで、PHL所長の小塚氏から発表されている)。低ビットレート用に開発されたH.264の方が輪郭が崩れにくいが、時間方向に奇妙なノイズがのることもあり、一概に良いとはいえない。しかも、ビットレートが増加しても画質がリニアに向上せず、高ビットレートではMPEG2の方が良い結果となる。
圧縮技術 | 7Mbps | 12Mbps | 15Mbps | 20Mbps | 24Mbps |
---|---|---|---|---|---|
MPEG4 AVC | 25%以下 | 25%以下 | 40%以下 | 55% | 70% |
MPEG-2 | 未実施 | 25%以下 | 25%以下 | 60% | 全員 |
圧縮技術 | 7Mbps | 12Mbps | 15Mbps | 20Mbps | 24Mbps |
---|---|---|---|---|---|
MPEG4 AVC | 25%以下 | 25%以下 | 55% | 85% | 全員 |
MPEG-2 | 未実施 | 45% | 60% | 90% | 全員 |
圧縮技術 | 7Mbps | 12Mbps | 15Mbps | 20Mbps | 24Mbps |
---|---|---|---|---|---|
MPEG4 AVC | 25% | 40% | 60% | 90% | 未実施 |
MPEG-2 | 未実施 | 40%以下 | 60%以下 | 全員 | 全員 |
一方のWMV9は、正直いってHD映画ならH.264より画質は良い。しかし、HD DVD9(最大8.5Gバイトの現行DVDに高圧縮コーデックでHD映像を入れるための規格。HD DVDの一部として規格化が認められた)をアプリケーションとして想定した評価しか行っていない。現在、WMV9のHD映像はマイクロソフトが圧縮してから持ち込んだものしかないからだ。同じ画質を出したくとも、単純に圧縮ツールを用いるだけではマイクロソフトの持ち込むデータと同じ画質は出せなかった。1社だけが提供するコーデックということもあり、高ビットレートでの評価は行えていない。ただ、ロービットレートでは良いとはいえ、H.264と同様に圧縮前のプリフィルターを大量に使っているようなので、マスターと同等のディテールを残すことはできないだろう」と、高圧縮の新コーデックについてコメントした。
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