ITmedia NEWS >

ビクター、QUALIA対抗のHD対応D-ILAプロジェクター

» 2004年03月10日 19時00分 公開
[西坂真人,ITmedia]

 日本ビクターは3月11日、新開発デバイスでフルHD表示に対応したハイエンド向けホームシアタープロジェクションシステム「DLA-HD2K」を発表した。日本国内および北米では5月下旬から、欧州では7月下旬から発売する。価格はオープンだが、市場想定価格は240万円前後になる見込み。

photo フルHD表示対応のハイエンド向けホームシアタープロジェクター「DLA-HD2K」
photo

 DLA-HD2Kは、同社独自の表示デバイス「D-ILA(Direct-Drive Image Light Amplifier)」を搭載したホームシアター向けプロジェクター。D-ILAはシリコン上に液晶パネルを形成した反射型液晶素子「LCOS」(Liquid Crystal on Silicon)の一種で、一般的な透過型液晶(LCD)方式に比べて光の損失量が少なく、高開口率/高解像度/高コントラスト/長寿命/高速応答と、グリッド(格子縞)の目立たない滑らかな映像表現を可能にする。また、DLP(DMD)方式にはない液晶ならではの自然な階調表現も特徴だ。

photo 透過型液晶(LCD)とDLP(DMD)の“いいとこどり”のデバイス「D-ILA」

 同社は1993年にD-ILAの前身となるILAを搭載した業務用プロジェクターを市場に投入。昨年10月には、家庭用として初のD-ILA搭載プロジェクター「DLA-HX1」を発表してホームシアター市場に参入した。

 今回の新製品には、新開発の0.8インチD-ILAを採用。従来のホームシアター向けハイエンドプロジェクターの2倍以上の解像度となるフルHD(1920×1080ピクセル)表示を可能にした。「BSデジタル/地上デジタル放送のハイビジョン放送をフルスペック解像度で大画面投写でき、過程で映画館の迫力を楽しめる」(同社)

 また、HD対応のD-ILAデバイスを最大限に生かすため、信号処理部に大型映像用画像処理で定評のある米国ファロージャ製デジタルビデオプロセッサーを採用。デジタルハイビジョン映像(1080i)だけでなく、アナログ放送やDVDソフトなどのSD映像(480i)も1080/60pにアップコンバートしてフルHD解像度の高精細映像を投写できる。

photo 大型映像用画像処理で定評のある米国ファロージャ製を採用したデジタルビデオプロセッサー部。投写部とは別体構成で、両ユニット間はデジタル信号ケーブル1本で結ばれ、すっきりとした屋内配線とD/A-A/D変換による信号劣化を解消した

 そのほか、RGBの色ごとにF値を最適化した新照明光学系「オプティマムカラーイルミネーションシステム」や、矩形開口レンズ絞りでオールガラス(10群13枚)/オールアルミ鏡筒の新設計プロジェクションレンズ、250ワット超高圧水銀ランプ採用など、高コントラストが求められるホームシアター向けに専用設計した新開発光学エンジンを搭載した。

photo 矩形開口レンズ絞りでオールガラス/オールアルミ鏡筒のプロジェクションレンズ

ターゲットは“素晴らしい映像には金に糸目をつけない高所得者層”、ライバルは「QUALIA」

 実売240万円と自動車並みの価格となる高級プロジェクターだが、同社によると意外とニーズはあるのだという。

 「100万円以上のプロジェクターは、よいものにはお金を惜しまない“高額所得者層”やCRT3管式を保有している“マニア層”などに、規模は小さいながらも一定の支持を確保している。これらユーザーはシアター専用ルームに超高級AVシステムを組み、インテリアやイスにも凝って“映画館の雰囲気作り”を目指している。HD表示への要望とともに、映画館で上映されるフィルムのようにオリジナルカラーに忠実でしっとりとした画質にして欲しいという声に応えたのが今回の新製品」(同社)

 同じコンセプトの高級プロジェクターといえば、昨年6月に発表したソニー「QUALIA 004」がある。D-ILAと同じようにLCOSから派生した独自表示デバイス「SXRD」(Silicon X-tal Reflective Display)は、やはりフルHD解像度に対応し、価格も240万円とDLA-HD2Kと同じだ。

 “画作り”へのこだわりは両者とも甲乙つけ難いのだが、DLA-HD2Kが圧倒的に優位な点はは“サイズ”と“消費電力”だ。QUALIA 004が597(幅)×201(高さ)×745(奥行き)ミリ、重さ約40キロ、消費電力980ワットなのに対し、DLA-HD2Kは298(幅)×134(高さ)×360(奥行き)ミリ、重さ約6キロ、消費電力350ワットと、圧倒的に小さく軽く消費電力が少ない。

photo 他社フルHD機との比較。シルエットの機種名は明らかにしなかったが、明らかにQUALIA 004

 「小型化によって設置時の自由度が大幅に向上する。ミドル〜普及機並みのサイズと重さなので、天井吊りの際も補強工事などほとんど必要ない。低消費電力なので、電源の増強も不要。インテリアを妨げない設置が行える」(同社)

photo 小型軽量なので天井吊りも補強いらず。低消費電力も魅力

 さて、LCOSベースの表示デバイスはD-ILAやSXRDのほかに、先日Intelが発表した「Cayley」が注目を集めている。ただしこちらは、ハイエンド向けフロントプロジェクターにではなく、低価格なリアプロジェクションTV用の表示デバイスとして開発が進められているようだ(別記事を参照)。

 もちろん同社も、D-ILAが“市場規模の小さなハイエンド向けだけ”とは考えていない。今年1月のCES 2004で同社は、D-ILAを使ったリアプロTVを参考出展しており、今回の発表会でも0.7インチで720p(1280×720ピクセル)対応のリアプロTV向けD-ILAデバイスが紹介されていた。

photo D-ILAデバイスのラインアップ。一番左が0.7インチ720p対応のリアプロTV向け

 「D-ILAを使ったリアプロTVは北米市場向けに今夏頃リリースする予定。日本での発売は未定だが、北米での反響を見て前向きに検討していきたい。リアプロTVでD-ILA生産が軌道に乗れば、より安価な普及型D-ILAプロジェクターの登場も十分考えられる」(同社)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.