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コラム
» 2004年07月08日 09時51分 公開

BBTVの「電子レンタルビデオ」戦略――その読み方 (2/2)

[西正,ITmedia]
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 ソフトバンクグループは、ADSLサービスのYahoo! BBを全国展開させており、600万件の加入者を集めようという勢いで普及させている。すなわち、Yahoo! BBが利用されているところであればどこでも、BBTVのVODサービスを提供できるのである。BBTVの加入者を急拡大させる可能性があるというのは、そうした事情が背景にあるからだ。サービス提供可能エリアが日本全国となったことの効果は大きいはずである。

 わが国では、地方に行けば行くほど、娯楽が少なくなるという実情がある。VODサービスを普及させようとすれば、本来ならば地方の方が大きなニーズが見込めることになる。

 Yahoo! BBが全国的に普及するに至った理由としては、低価格で高速のインターネットが利用できるということの他に、Yahoo! BBの加入者同士ならば、どれだけ遠距離に住む人との間でも電話サービスが無料であることが挙げられる。IP電話の仕組みからすれば、当然のことと思われるかもしれないが、ISP事業を行っているケーブルテレビの場合、IP電話を提供する事業主体自体は特定のエリアでのサービス展開にとどまらざるを得ないというのがむしろ一般的だ。しかしながら、電話が無料であることのメリットは、特定エリア内では発揮されにくい。

 ケーブルテレビによるインターネットを利用していた人が、ケーブルテレビを解約する最大の理由は、引越しということを除けば、加入者同士ならば日本全国で電話が無料になるYahoo! BBに乗り換えることだという。FTTHがブロードバンドの主役になると言われながらも、引き続きADSLサービスのYahoo! BBの普及の勢いが衰えないのも、そうした強みがあるからだ。

 加入者数の伸び悩みを打開したいBBTVとしては、そうしたYahoo! BBの利便性との相乗効果を発揮することが最善の策であるというわけだ。BBTVとしては、VOD利用を目当てに加入してきた人たちが希望すれば、ベーシックチャンネルを提供することはもちろん可能である。その際には、総務省に対するエリア登録が必要になるが、ユーザーのニーズに応える形でのエリア拡大であれば、行政としてもそれを否定することは難しい。“ユーザーの声に後押しされる”ということほど強いことはないのである。

 さらに言えば、放送のデジタル化に対応すべく新たなビジネスモデルを構築することが求められている全国のケーブルテレビ事業者との協業も可能になる。

 VODサービスは、ケーブルテレビ事業者にとっても是非とも導入したいサービスだが、自らが単体で行うことは非常に難しい。コンテンツの品ぞろえと、サーバの確保には相応の資金力を要するからだ。それがBBTVと組んでVODサービスを開始すれば、そうしたネックも解消できる。BBTV側も、全国各地のケーブルテレビ事業者と組むことができれば、自らの負担を軽減することが可能だ。

 ケーブルテレビ各社としては、デジタル化を機に多くのチャンネルが流せるようになると、チャンネル数との需給バランスが整ってしまうため、安価にベーシックチャンネルのパッケージを組成することは難しくならざるを得ない。まさに「MUST BUY」が通用しなくなった後のビジネスモデルの再構築に頭を悩ませていたところである。

 そうした中にあって、自ら進んで「MUST BUY」を捨てたBBTVの戦略が、どれだけの果実を手にすることになるのか。まさに「業界注目の一手」と言えるだろう。

西正氏は放送・通信関係のコンサルタント。銀行系シンクタンク・日本総研メディア研究センター所長を経て、潟IフィスNを起業独立。独自の視点から放送・通信業界を鋭く斬りとり、さまざまな媒体で情報発信を行っている。近著に、「放送業界大再編」(日刊工業新聞社)、「どうなる業界再編!放送vs通信vs電力」(日経BP社)、「メディアの黙示録」(角川書店)。

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