1999年に登場したアップルの「AirMac」は、コンシューマー向けパソコンに無線LANを浸透させた立役者だ。最大11MbpsのIEEE 802.11bを普及させ、またノートパソコンに内蔵するという形を広めたのもAirMacといえる。2003年1月には、IEEE 802.11g準拠の「AirMac Extreme」を投入し、最大54Mbpsへスピードアップを図るとともに、“5.2GHzか、2.4GHzか”という次世代無線LAN規格の勢力争いにも一石を投じる結果となった。
コンシューマー向けの無線LAN製品として影響力を持ち続けているAirMacだが、その新製品「AirMac Express」も、これまでとはまた別の意味で画期的な製品になった。無線LANはIEEE 802.11gのままだが、無線ルータに音楽配信機能「Air Tunes」を追加。「iTunes」をサーバとして、ワイヤレスネットワーク経由の音楽配信が可能になっている。アップルが開催した製品説明会で、そのAirMac Expressをじっくりと見てきた。
デザインも、従来の無線ルータとは一線を画している。「PowerBook G4」や「iBook」のACアダプタを思わせるデザインは、コンパクトで持ち運びも容易。189グラムと軽量で、アップルに言わせると「40GバイトのiPodより少し重く、VAIO Pocketより少し軽い」(プロダクトマーケティング担当課長の福島哲氏)ということになる。ちなみにVAIO Pocketは約195グラムだ。
家庭のコンセントに直接さして使うこともできるスタイルも、同社製ノートブックのACアダプタ譲り。携帯性に優れているため、部屋から部屋へ移動して音楽を楽しみたい人はもちろん、出張時などにはポータブルの無線アクセスポイントとして活用できそうだ。コンセント部分は取り外し可能で、コード付きのタイプに取り替えることもできる。
インタフェースは、イーサネットポート、USBポート、オーディオ出力だけのシンプルな構成。オーディオ出力はアナログ/デジタル兼用で、ケーブルを切り替えて使用する。また、USBポートは、従来モデルのAirMac Extremeから引き継いだもので、USB接続のプリンタをワイヤレス共有できる。対応プリンタはAirMac Extremeと同等。エプソンやキヤノンなどの最近の機種をサポートしている。
音楽配信機能「AirTunes」を使うには、サーバとなる「iTunes 4.6」が必要だ。Windows版、Mac版ともにアップルサイトから無償ダウンロード可能で、Mac OSの場合はアップルメニューの「ソフトウェア・アップデート」から入手することもできる。
AirTunesは、iTunesで管理している、MP3、AAC(Advanced Audio Coding)、AIFFといった音楽フォーマットをApple Losslessに自動変換してネットワークに送出する。Apple Losslessは、「CDオーディオの音質を約半分の記憶サイズで実現する」(アップル)というもの。ストリーミングの際はデータは暗号化するため、“盗聴”の心配はないという。
オーディオ機器と接続したAirMac Expressは、「リモートスピーカ」と呼ばれ、同じネットワーク内にあるリモートスピーカは、Rendezvousの機能により「iTunes」に一覧表示される。ここで任意のリモートスピーカを選択するとストリーミング配信の開始だ。
実際にiTunes4.6の入ったiBook G3(800MHz)を無線ネットワークに参加させてみたところ、いともあっさりとリモートスピーカを検出できた。説明会場では2つのAirMac Expressが動作していたのだが、切り替えも簡単で、ストリーミング配信も安定している。音質にも不満はなかった。なお、使用したiBookの無線LANはIEEE 802.11bであることも付記しておく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR