別記事に掲載したパイオニア小野寺氏から、取材後、AX10シリーズの音質設計を行ったAV設計部小田島宏支氏のコメントをいただいた。
「パイオニアの独自性は、単に他社にない音作りをすることではなく、音楽や映画の製作者の意図を忠実に再現することにあります。この意味は、スタジオの音そのものを再生するということではありません。むしろ、そんなレベルを凌駕する、製作者が『ここまでわれわれの作った音が再生されてしまうのか!』と驚き、おののく、そういう次元の音です」。
実は、パイオニア本社で「Exclusive」シリーズとのセットでデモしていただいた音が、どこかで聴いた音と似ているとずっと考えていた。思いついたのは、このシリーズ連載の最初に紹介した、ソニー金井氏の試聴室で聴いた音である。異なるスピーカーと部屋なのだから、全く同じというわけではない。しかし、やや引いた視点で見ると似ているし、その傾向はわが家での試聴でもおおむね同じだ。
そんなことを、当の金井氏に再会した時に話してみたら、パイオニアのExclusiveやオーディオ専業メーカーのアキュフェーズが作る音、そしてソニー金井氏が作る音も、大枠では似たものだとのコメントをもらった。もちろん、キャラクターの違いはあり、それがメーカー間の違いにもなっている。だが、目指す方向が同じなら、似てくるのも当然というべきか。
VSA-AX10Aiでお気に入りの曲を聴いていると、音の立体感、抜けの良さ、低域の実在感。そんな言葉が思い浮かんでくる。「われわれの向かう先は“独自性=製作者意図の徹底研究、忠実再現”です」(小野寺氏)。
“制作者の意図の再現”という、他社には見られないコンセプトが、音屋としてのパイオニアの音色を作り出しているのかも知れない。
- どん欲なまでの技術指向が生んだ“忠実な音”〜パイオニア
2001年11月に発売されたパイオニアの「VSA-AX10」は、それまでの国産AVアンプの概念を変えた。ピュアオーディオで培ったノウハウ、デジタルサラウンドなどのテクノロジ、自動音場補正ーーそこにあるのは、貪欲に最新技術を追い求め、高音質に繋がるものすべてに取り組む姿勢だった。
- “最高の映画用アンプ”だけじゃないヤマハ「DSP-Z9」
ヤマハの言う“ヤマハAVアンプの今後10年を支えるプラットフォーム”は、どのような形で製品に反映されているのか? 同社のハイエンドAVアンプ「DSP-Z9」を借りて試聴した。Z9は、“最高の映画用DSP機能付きアンプ”という評価が一般的だが、それだけではないようだ。
- 若い世代が作り出した、新しい“ヤマハの音”〜「DSP-Z9」
従来のハイエンド機から一気にレンジを引き上げ、税別50万円という価格で投入されたヤマハ「DSP-Z9」。その背景にあったのは、今後10年の技術基盤を“コスト度外視”で作ろうという、トップシェアベンダーならではの大胆なプロジェクト運営だった。若いチームで挑んだハイエンド機種開発の経緯から、同社のAVアンプに対する取り組みを探る。
- ソニー、「音作り」の哲学を語る
アナログオーディオアンプ時代からソニーの“音作り”に携わり、現在では同社のハイエンドAVアンプ「TA-DA9000ES」の開発・音決めを行った金井隆氏らに、同社の音作りの現場、そしてその哲学を語ってもらった。
- ソニーのハイエンドAVアンプ「TA-DA9000ES」を試す
ソニーのハイエンドAVアンプ「TA-DA9000ES」を2週間ほど試用した。低音の締りの良さや中高音の透明感の高さなど、ピュアオーディオ用としても音質は十分満足できるもの。また、特筆したいのは9.1チャンネル使用時の音の自然さとサービスエリアの広さで、良質なホームシアターを考えるなら、一考に価する製品だ。
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