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日立/東芝/松下、国内連合で挑む“液晶サバイバル”(2/2 ページ)

» 2004年08月31日 20時53分 公開
[西坂真人,ITmedia]
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 なかでもIPS方式は、電圧がかかると横方向に配列した液晶の分子が基板と平行に回転するため、広視野角なのに加えて見る方向による色調変化なども少なく、自然な画像が表示できるのが特徴だ。開口率向上/高輝度化/色再現性向上などを図ってテレビ用途に改良を加えたAdvanced Super-APS(AS-APS)方式など、さらなる高画質に向けた新技術も開発されている。黒画像を挿入することでCRT並みの動画表示を実現する「スーパーインパルス」駆動といった日立独自技術も強みだ。

photo IPSはどこから見ても自然な画像が特徴
photo 液晶パネル特有のボヤケ感を低減するスーパーインパルス駆動

 日立ディスプレイズの米内史明社長は、「新会社では、グローバルな競争力が必要。そのためには材料費の低減が必要になってくる。IPSのメリットである広い視野角特性によって、カラーフィルターや偏向板など構成部材が簡単な構造でよく、本質的に低コストになるのが特徴。これに高い生産性や高歩留まりも加わり、性能だけでなくコスト面の競争力も非常に高い」と語る。

32インチ以下なら第6世代で十分

 新工場では第6世代の液晶製造ラインが構築され、1500×1800ミリのマザーガラスを扱うという。

 液晶分野でトップシェアのシャープは、大型液晶テレビの生産拠点として今年1月に三重県の亀山新工場が本格稼動しており、パネルからセットまで一貫した生産を行うなど大型化シフトに向けた生産体制も強化。この亀山新工場は今回の日立/松下/東芝で新設する工場と同じく、1500×1800ミリのマザーガラスを扱う第6世代の液晶製造ライン。だが、2004年度の設備投資2200億円のうち、半分以上の1300億円を液晶関連に当てるなど液晶を中心にした事業を展開しているなどその力のいれようは半端ではない。

 そして、それよりも規模の大きな第7世代(1870×2200ミリガラス基板)の生産ラインを構築しているのが、ソニーと韓国Samsung Electronicsが今年4月に設立した「S-LCD」。20億ドルを投じたアモルファスTFT液晶ディスプレイを生産ラインは、1870×2200ミリサイズ基板換算で月産6万枚の生産能力を誇る。

 これら国内外の競合に対して、設備投資約1100億円で第6世代ラインという今回の合弁会社は、国内の家電大手3社が協業して展開するにしては少々規模が小さい気がする。より大きなマザーガラスを使った製造ラインを構築すれば、その分だけパネル生産で大きなコストダウンを図れる。韓国/台湾メーカーが第7世代ライン立ち上げを急ぐ理由もここにある。

 「40型以上の大型液晶テレビならば第7世代ラインのメリットも生きるが、われわれが新会社で狙う26〜32型ならば第6世代でも十分コスト競争力がある。IPSなど低コスト化に貢献する技術などで逆に我々のほうが安く作れる可能性もある」(庄山社長)

 「IPSというパフォーマンスのいい技術を受けることで、32インチ以下でたいへん画質のいいテレビを作ることができる。IPSは非常に高く評価しており、今回の3社連合もこのIPSがあったからこそ実現した」(中村社長)

photo ガッチリと手を組む3社の社長。左から東芝の岡村正社長、日立製作所の庄山悦彦社長、松下電器産業の中村邦夫社長
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