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“アリの足先より小さな鏡”が生み出す映像美――DLPの魅力劇場がある暮らし――Theater Style(2/2 ページ)

» 2004年09月03日 18時00分 公開
[西坂真人,ITmedia]
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3チップDLPで100万円前後の製品も近々登場

 DLP方式では、DMDを1つ使った1チップ方式と、DMDを3つ使う3チップ方式がある。1チップDLPシステムの場合、光の3原色を出すカラーホイールを高速回転させることで、人間の目の残像効果を利用してカラーに見せる。高速にON/OFFできるDMDならではのカラー表示法だ。

photo 1チップDLPシステム

 DMD1チップで構成できるシンプルさから、製品の大幅な小型軽量化が図れるのもDLPの特徴。重さ900グラムという東芝「TDP-P6(J)」や、プラスビジョンの厚さ35ミリ「V3シリーズ」手のひらサイズ「V-1100Z Limited」といった小型軽量プロジェクターが、DLP方式で次々と登場している。

photo

 ただし、この1チップDLPシステムでよくいわれるのが「カラーブレイキングノイズ」。視線を移動した時や動きの速いシーン、字幕の部分などで映像内にRGBの残像が感知される現象だ。

 「カラーブレイキングは見える人は見える、見えない人はずっと見えないという個人差がある現象。見える人は、色の反応速度がよほど速い人なのだろう。だがこれも、マイクロミラーがもっと速く動けば、色が変わるサイクルも速まるのでどんどん見えなくなる。現在、動作スピードが10マイクロ秒を切るのを目指してデバイス開発を進めている。もう1つの解消法は、カラーセグメントを効率よく見せる方法。R/G/B/R/G/Bとカラーホイールを6セグメントに分けて、色のバラツキをより均等にする方法がハイエンド機を中心に行われている。中には7セグメントのカラーホイールを採用して、カラーブレイクを解消している製品もある」

 そのカラーブレイキングが理論上なくなるのが3チップDLPシステム。RGB各色ごとにDMDを用意して、プリズムで光からRGBを分けて各色のDMDに光を送り、DMD上で反射処理された単色の光が再びプリズムで合成されてスクリーン上に映像を投射するという仕組みだ。

photo 3チップDLPシステム

 「3チップDLPシステムはガラス部材など精密なものが必要となるので、DLPシネマ向けの大型機やハイエンド機で使われている。DMDを3つ使い、高精度なプリズムも必要となるのでどうしても機器が高額になってしまうが、以前は1000万〜2000万円したものが最近では350万円前後の製品も出てきた。近々、3チップ方式で100万円前後の製品も登場するだろう」

“動画に強く、高コントラスト比で長寿命”はリアプロテレビ向き

 経年変化に強いのも、DLPの魅力だ。

 「ニュートラルな立場の、ある大学機関がDLPと液晶の寿命テスト(加速試験)を行ったところ、3000時間経過した後に液晶側は紫外線に弱いブルーのチャンネルに劣化が見られ、画面が黄色くなって見えた。一方、DLP側には経年劣化がほとんど見られなかった。動く映像に強い点と長寿命さというデバイスの特性は、映像のほとんどが動画で視聴時間も長くなりがちなテレビ向き。米国などで人気となっているマイクロデバイス方式のリアプロTVの多くがDLPを採用している」

 国内メーカーでも、“液晶のシャープ”が60インチ以上のリアプロTVを米国などで発売していく方針を打ち出しているが、その表示方式は液晶ではなくDLPを採用すると明言している。また三菱電機も、DLP方式のリアプロTVを国内展開することを明らかにしている。

 「現在DLP事業としては、従来のフロントプロジェクターとともにリアプロTVにも力を入れている。BS/110度CS/地上デジタルなどTV放送分野でも“デジタル”がキーワードになっている。プラズマTVは50〜60インチ以上ではコストパフォーマンスが悪い。リアプロTVはインチ数千円レベル。日本でも今後、各メーカーからリアプロTVが発売されていくだろう」

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