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» 2004年07月30日 21時43分 公開

ホームシアター特集:“ドルビー”の「これまで」と「これから」 (1/4)

映画やAV機器のデファクトスタンダードとしてだけでなく、PCにもその領域を拡大しつつあるDolby Laboratories。日本支社長の伏木雅昭氏に、日本におけるドルビーのこれまでの歩みと、これから目指す方向性について聞いた。

[本田雅一,ITmedia]

 “ドルビー”のブランドは、世代を超えてAVユーザーの心に刻まれている。

 1970年代後半からのオーディオブームではカセットテープのノイズリダクションシステムとして、そして1990年代以降はサラウンド技術の会社として、その名を馳せてきた。

 そのドルビーが、PCにおける映像分野のアプリケーションが広がったことを受けて、IT業界にも積極的に技術を提供し始めている。ソニーが発売したサラウンド録音可能なハンディカム「DCR-HC1000」と組み合わせ、5.1ch音声のDVDを作成できるソニーVAIO付属の「Click to DVD」でも、同社の技術が使われた。また、アドビシステムズやデジオンの開発するDVDオーサリングやオーディオ編集ソフトでも、ドルビーデジタルによる5.1ch音声の作成が可能だ。

 映画やAV機器の標準となり、その領域をPCにも拡大しつつあるドルビーラボラトリーズインターナショナルサービスインク日本支社長の伏木雅昭氏に、ドルビーのこれまでと、そしてこれからをうかがった。

photo ドルビーラボラトリーズ日本支社長の伏木雅昭氏

“サラウンド生録”を中心に進歩してきた日本のサラウンド技術

 伏木氏がドルビーに関わったのは1979年からというから、その歴史は長い。当初、商社に勤めながら日本にドルビーの技術を売り込んだ同氏が、日本支社の設立と同時に移籍したのは今から7年ほど前のことだという。

 1979年と言えば、カセットテープデッキにドルビーB NRが普及していた頃だ。ヒスノイズのレベルが高く、ダイナミックレンジの狭いカセットテープで音楽を高音質に録音するために、ドルビーBは必須の存在だった。

 その後、よりノイズ低減効果を高め、高入力時の高域特性を改善したドルビーC NR、さらに高入力時の歪み特性を全体的に改善するドルビーHXなどなど、カセットテープの高音質化はドルビーの技術進歩とともに進んだ。そんな時代を伏木氏はドルビーとともに過ごしてきた。

photo ドルビー技術の歴史

 一方、ドルビーの歴史はサラウンドの歴史でもある。後述するが、ドルビーは古く光電管でフィルムサイドに刻まれたサウンドトラックの音質を改善する技術の開発を手がけて以来、映画業界向けの音響技術開発で“業界標準”を生み出してきたのはご存じの通り。

 近年のAVソフト・AV機器の普及とともに、映画向け音響技術を家庭向け製品にもライセンスしているのも、やはりご存じの方が多いだろう。今や“ドルビーデジタル”は、家庭用DVDプレーヤはもちろん、PCでも再生できることが当たり前になってしまった。

 そのドルビーが、新しい分野の開拓を目指してソニーと協業したのが、前述のサラウンド音響を生み出すビデオカメラとDVDオーサリングソフトである。DCR-HC1000の4ch指向性マイクから拾った音声をPCにキャプチャし、それをデジタル処理で5.1chへと加工、ドルビーが開発した音声圧縮技術AC-3でエンコードし、DVDに記録する。

 DVDの標準音声フォーマットには、AC-3エンコードの5.1ch音声もサポートされているため、こうやって作成したDVDはどのプレーヤーでも再生でき、家庭内にサラウンド再生環境さえあれば、撮影時に拾った周囲の音を含めた音場の再現を行える。DVDの普及とともに、ホームシアターセットを持つ家庭が増えてきている現在、これはなかなか魅力的な機能のように見える。

 一方で、家庭用のカムコーダで、本当に臨場感を再現できるのか? という疑問を持つ読者も少なくないだろう。

 「DVDでは映画館向けに専門家がチューニングした音声が、そのまま記録されます。ですから、収録する映画が5.1chで作られていれば、そのまま5.1chになりますし、6.1chで作られているなら(AVアンプの対応次第で)6.1chでの再生が可能です。ところが、映画館における音場を“創る”ためには、かなり多くの経験とノウハウが必要になるんですよ。この分野は、やはりハリウッドの技術者がもっとも多くのノウハウを持っています」と伏木氏。

 ではハンディカムのサラウンドは、やっぱり“それなり”なのか? というと、実は全く異なる別の技術なのだという。

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