10月5日から開催されるCEATECでは、各社がしのぎを削るフラットディスプレイの技術を見比べることができるはずだ。高画質化技術というのは本当にいろいろあるのだが、映像信号の基本というのは変わらない。結局のところ“Y”と“C”をどうするか、という点に留意すれば、各技術ももっと分かりやすくなることだろう。
Yとは輝度、Cとは色調だ。Yに対する改善とは、明るさ方向の階調表現である。最近の傾向では、ヒストグラムを解析して、シーンごとにガンマカーブを変化させるという技術がある。日立製作所の「DIPP+(プラス)」(関連記事)や日本ビクターの「GENESSA」(関連記事)といったチップは、輝度表現の改善を狙ったものだ。こんなことを書くと両社から、いやいやうちでは色もやってますという反論があることは分かっているが、まあ待ちなさいっての。
輝度方向の階調表現を改善することは、見た目に非常に効果が高い方法だ。というのも、人間の目は、色の階調よりも輝度の階調に対して敏感だからである。
一方で色の階調表現競争も、プラズマを中心にすごいことになっている。もともとプラズマディスプレイは、RGBとも10bitの階調を持っており、液晶と比較して色表現にメリットがあるとされている。
この特性を生かして松下が「新 PEAKS(ピークス)ドライバー」で36億2000万色をうたえば、パイオニアが「アドバンスドスーパーCLEAR駆動法」で57億5000万色をうたうといった具合だ。これらの勝負も、CEATECで見ることができるだろう。
各社が競ってこれらの駆動方法を開発しているのは、元はと言えば液晶やプラズマのような表示デバイスが、輝度レンジや色調表現において、従来のブラウン管よりも“表示範囲が狭い”ことに起因している。その部分をカバーするための技術であり、それを推し進めることで、ある意味ブラウン管を超えていこうとする動きでもある。
ただ、あまり過度な数字競争に惑わされるのは、ユーザーとしても気をつけたいところだ。ここいらで、一体何色あればフルカラーなのかということを、もう一度思い返してみるのもいいだろう。
パソコンの黎明期、ディスプレイがモノクロからカラーに変わっていく時には、8bitカラーとか16bitカラーといった段階を経て、24bitカラーがフルカラーであるとされた。このようにパソコンの世界では、色深度をRGB3色を足したビット数で数えていたのを、ご記憶の方もいらっしゃるだろう。
ところがテレビの世界では、色深度に対するビット数の数え方が違っている。そもそも色数をビット数で表わすということ自体、デジタル化されているという前提があるわけで、アナログ時代は、モノクロかフルカラー以外にはなかった。
映像信号のフルデジタル化が実現したのは、放送業界では1987年のことである。この年、ソニーから世界初のデジタルVTRであるD1フォーマットのVTRが登場し、このとき初めてビデオの世界で、色数をビットで表わすようになったわけだ。D1 VTRは、8bit機であった。
こう言うと、えっ256色なの? と思われるかもしれないが、それがテレビの世界ではビット数の数え方が違うという話につながってくる。ここでいう8bitとは、RGBそれぞれが8bitだよ、という意味である。つまりテレビ業界で言う8bitと、PC業界で言う24bitは、色空間で言えば同じだ。
PC業界でもテレビ業界でも、デジタル化された映像は、RGB各8bit、合計24bit、色数にして1677万7216色あればフルカラーである、という定義がなされた。現在でもPCの世界では、フルカラーと言えばここまでだが、テレビ業界はその後、10bitに移行した。
DigitalβCamが10bitを採用したのに続き、現在HD映像制作での主要フォーマットでもあるHDCAMもDVCPRO HDも、10bitである。これから話がややこしくなるので、いったんビット数の色数の関係を整理しておこう。
RGB別bit数 | RGB別色数 | RGB合計bit数 | RGB合計色数 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
8bit | 256色 | 24bit | 1677万7216色 | ||||
10bit | 1024色 | 30bit | 10億7374万1824色 | ||||
12bit | 4096色 | 36bit | 687億1947万6736色 | ||||
一応ここで12bitまで示したのは、デジタル映像のプロセス装置、例えばスイッチャーやクロマキーヤーなどの機材は、内部的に12bitや14bitを採用しているからである。
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