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ワイヤレスで快適な“ホームシアター第一歩”――パイオニア「HTP-S2」レビュー:5.1chサラウンドシステム特集(4/4 ページ)

» 2004年11月25日 16時16分 公開
[浅井研二,ITmedia]
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 この製品では基本的に、ドルビーデジタル、DTS、MPEG-2 AACのデジタルサラウンド音声に対しては、エフェクトを施さず、そのまま出力するのみとなる(バーチャルスピーカーのみ可)。単品AVアンプでは、多彩なエフェクトや音場シミュレーションが可能になっており、この点ではもの足りなく感じる人もいるかもしれない。個人的には、普段のホームシアターでの視聴でも、エフェクトなしのダイレクト出力を主体にしているので問題とは感じないが、逆に、アンプやスピーカーの弱さを補うために、むしろ低価格帯製品だからこそ必要という考え方もあるだろう。

 ただ、音質のイコライジングは可能だ。「GAME」「S.BASS(重低音強調)」「マナー(過度な高音や低音を和らげる)」「トーン(ユーザーが設定した高音/低音調整)」のサウンドモードが用意されている。

 操作に関しては、余分な機能が搭載されていないだけに、戸惑うことはほとんどないだろう。仮にリスニングモードをオートにしておくなら、あとは入力機器の切替と音量調整くらいしか触るところはない。これらはリモコンのボタンでも操作できるし、本体前面にも入力切替つまみと音量調整つまみが用意されている。

 ただ、ドルビーヘッドホンモードも装備しているのだが、これはちょっと変わった方法でモード変更を行う。ヘッドホンプラグを差し込んでいる状態で電源オン。これはまだいいとして、リアスピーカーのワイヤレスモードを「W.SURROUND(サラウンド用)」「W.STEREO(冒頭で書いたような単体でのステレオ使用)」の間で切り替えるには、リアスピーカー側のスイッチを操作したうえで、アンプ側の電源も落としてリモコンの「システム設定」を押し、ワイヤレスモードの切替を行わなければならない。気軽に使いたい用途だけに、この操作はやや面倒だ。

photo リアスピーカーユニットのスイッチ類。左から電源、サラウンド/ステレオのモード切替、音量となる。音量はステレオモードの時のみ調整可能(当然、サラウンドモード時はアンプ側で制御)

 また、最近のAVアンプでは冷却用ファンが使用されている場合があり、この製品でもついていた。音量「−20」前後からファンが回転し、そうなると結構やかましい。ただ、普段はそこまで音量は上げないのではなかろうか。この製品はリビングで使用するにも十分なレベルの音量を破綻することなく鳴らせるが、通常の設定はせいぜい「−30〜25」あたりにとどまるに違いない。ソースにもよるが「−20」はかなり大きな音で、このあたりを越えると、音質的にも無理が生じてくる。

 いろいろなソースで試聴してみたところ、全体の印象は良好だ。価格や外観からして、うわついたサウンドを予想していたが、意外と落ち着いた音を聴かせてくれる。また、リアスピーカーがLR一体型ということで、背後の方向感には難があるかもと予想していたが、LRが近いのは確かなものの、位置の違いがはっきり把握できる程度には分かれている。もちろん、普段自分で使用している機器と比較すれば、全体に見劣りはする。音質自体はさほど悪くないが、音の分離や奥行きといった点においてだ。

 たとえば、映画鑑賞なら、音楽だけの場面ではなかなか聴かせてくれるのだが、音楽と効果音が混在する場面や、激しいアクションで効果音が多数重なる場面では、音と音とが密着したような感じを受ける。各々の音をはがして聴き取れない印象だ。

 音楽のステレオ再生でも、同様に分離がもう一歩。ただ、サウンドモードの「5ch」を使うと、ちょっと面白い。これは2chステレオを加工せずに5ch化してくれるもので、マニュアルでは「部屋のどこにいてもステレオ感を楽しめる」と説明されている。ステレオ感というよりは、どこにいても、ある程度の包囲と定位が感じられる印象で、ながら視聴にはぴったりだ。また、ステレオ再生よりも、なぜか分離がよくなり、抜けもいい感じを受ける(ただ、これははたしてサウンドモード=音質効果の範疇に入るのだろうか?)。

 しかし、気になる点があっても、それはあくまで本格的なシステムと比較した場合の話。アンプ込みの全システムで5万円以下という価格を考慮すれば、全体に立派な品質といえるだろう。自分がホームシアターへの第一歩を踏み出した時代に、こうした価格帯の製品が存在していたら、もっと手軽に快適なスタートが切れたのになあ……、などと思いを馳せてしまったほどだ。

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