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どう使う? 高速電力線通信(2/2 ページ)

» 2005年01月17日 12時54分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 少なくとも日本の家庭では、ホームネットワークは無線LANがあれば大抵は事足りるようになっている。だいたいIEEE802.11aや11gで間に合わないようなコンテンツは、HD解像度のMPEG-2ぐらいだろう。ソースとしてはデジタル放送になるわけだが、放送事業者がホームネットワークへの転送を許さないかぎり、一般家庭にはそんなソースは存在しない。

 仮に自分がHDVで撮影したソースがあるとしても、ホームネットワーク内でブラウジングするなら、H.264なりWMV HDなりDivX 6なりのMPEG-4系にエンコードして、ビデオストリームを流すことになるだろう。それならば現状のスループットでも十分対応できる。

 もしどうしても高ビットレートのHDビデオストリームをネットワークに流す必要があるとすれば、それはハイエンド機材を使用する場合に限られるだろう。だがそのような結線に、シールド対策もされていない電灯線を使うことなど考えられない。ハイエンドの世界では、ただの電源として使用する場合でも、別途シールドされたケーブルを引き直したりするぐらいなのである。

 コスト面から考えても、家庭内LANにPLCを利用するメリットは、今のところまったく思いつかない。

技術は“使いどころ”が肝心

 もしPLCにメリットがあるとするならば、家庭内までの引き込み線に利用するケースだ。私事で恐縮だが、筆者の住むマンションに、このたび光ファイバーサービスが導入された。とはいえ、筆者の部屋まで光ファイバーが敷設されたわけではなく、各部屋への引き込みはVDSLを利用する。

 VDSLはご存じのように電話線を利用する方式だが、ISPに問い合わせたところ、筆者の住む築十数年を経過するマンションでは電話線の品質が低い場合もあり、実効スループットがどれぐらい出るのか、まったく保証できないという。

 実効値はつないでみないと分からないというのは、ネットワーク技術としてあたりまえのことだが、いざユーザー側の立場になると、わざわざ乗り換えたのにかえって遅くなっちゃったぁでは済まない。だがボトルネックとなる引き込み線が、電話線を使うVDSLか、電灯線を使うPLCか、はたまたテレビ用同軸ケーブルを使うc.LINKかを比較した上で導入できるとすれば、多少はメリットがあるかもしれない。

 家電メーカーと電力会社は、PLCの早期実用化を希望している。だが数々の抵抗を押し切って積極的に推進するには、あまりにも大義名分が立たない。PLCが描く利用イメージのように、エアコンや給湯器に至るまで、あまねく100Mbpsの回線をつないで回る必要性など、どこにもないのである。

 むしろ高速回線といった色気を出さず、現状のエコーネットのように、9600bps程度で家電の制御を行なうという方向でじっくり推進していくのが、賢いやり方だと思うのだが。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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