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WOWOW、HDクオリティのサーバ型放送を2007年に開始

» 2005年05月19日 19時12分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 WOWOWは5月19日、2004年度の決算報告を行った。営業利益・経常利益ともに昨年度を上回ったほか、累損を一掃し、創業初の配当を決定するなど好調さが目立つ内容だ。2005年度-2007年度の中長期計画では、衛星放送事業を軸にした“デジタル・コンテンツ・プロバイダー”を目指すとしており、衛星を利用したHDクオリティのVoDサービスも開始する予定だ。

 2004年度の営業収益は639億円、経常利益は26億6500万円で、昨年度比ではそれぞれ22億8900万円/29億3700万円の増収。経常利益は大幅な増収だが、これは昨年度の経常利益が加入促進費などの出費によってマイナス2億7200万円と計上されていたことが大きな原因。

 同社が推進するデジタル放送への移行も順調に推移しており、加入者は年度末で60万人に増加。全加入者の約1/4がデジタル放送を受信している計算だ。なお、2004年12月から開始された、BSデジタル放送のデジタルWOWOWと110度CS放送5チャンネルをセットした「WOWOWデジタルプラス」の加入者は2005年3月末で4467人となっている。

 「全体の加入者はわずかながら減少してしまったが、アテネ五輪を機にデジタル受信機も普及し始めており、デジタルへの移行は順調に推移している」。同社代表取締役社長の廣瀬敏雄氏は移行の推移について満足感を表すとともに、2007年度には加入者の70%がデジタルに移行するという見込みを示した。

photo デジタル加入者の推移。2005年3月には加入者合計の約1/4、60万人がデジタルへ移行した

 また、廣瀬氏は中長期計画のひとつとして「新たなデジタル放送サービスの実現」を掲げ、具体的にはデジタルハイビジョンの普及のほか、衛星を利用したサーバ型放送の開始を目標として示した。

 このサーバ型放送については、既に2005年秋をめどにSD画質のサービスを開始、その後にHD画質のサービスを提供するという意向を示していたが、今回、広瀬氏から「2007年に本格サービスを開始する」と開始時期の見直しがアナウンスされた。

 発表されたスケジュールは、「2005年度にメーカーおよび事業者と連携しての規格策定、CAS(Confidential Access System)体制の構築」「2006年度に規格およびCASのテスト、試験サービスの開始」「2007年度に本格サービスの開始」となっている。また、映像クオリティについては、「基本的にはHDでの放送を考えたい」(廣瀬氏)としており、2007年の本格サービスの開始時にはHDクオリティでの提供が行われる可能性が高い。

 同社では衛星放送サービスを「BS放送」「110度CSデジタル放送」「VoD」の3つで構成するプランであり、VoDを実現するサーバ型放送は描くビジョンに欠かせない構成要素となっている。しかし、これまでのVoDサービスはいずれも収益的な成功を収めているとは言い難い。

 「これまで行われてきたVoDのサービスが、収益的に厳しい経緯をたどってきたことは認識している。(ユーザーからもしても)VoDがまったく新しいサービスとして提供されたために、STBを2台設置する必要があるなど、手軽に楽しめたとは言い難かった。とにかく、“簡単に見られる”ようなものにする必要がある。これまでの経験をふまえて成功を目指したい」(廣瀬氏)

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