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音質を大きくリファイン――コードレスサラウンドヘッドフォン「SE-DIR2000C」レビュー(2/3 ページ)

» 2005年07月26日 22時32分 公開
[本田雅一,ITmedia]

高域のピークが取れ、長時間使用でも聴き疲れしない音に

 ヘッドフォン部に使われている50ミリ径ドライバユニットに大きな変更は施されておらず、赤外線を用いたデジタルのコードレス電送技術にも変更は加わっていない。音声信号は16ビット48kHzのPCM信号に変換し、赤外線インターフェイスを通じてサラウンドプロセッサとヘッドフォンの間を結ぶ。

 しかし、実際に出てくる音は大きく改善されたものだった。

 従来機のヘッドフォン部は、若干低域を強めに出し高域にもやや癖のあるピークが存在していた。このため高域が多少きつく感じられた。DVD視聴における映画のサラウンドサウンドとの相性という意味では、多少低域が元気よく鳴る方が合っている。また高域の癖に関しても、ガラスの割れる音に代表されるような刺激の強い音が、きちんとガラスらしく聞こえるなど良い面もあるが、わずかに聴き疲れしやすい印象も併せ持っていた。

 しかし本機のコードレスヘッドフォンは帯域バランスが改善され、高域の癖もなくフラットに伸びている。以前のモデルは低域が多少強調気味で、高域に若干のピークがあった。しかし、本機では高域の癖が取れて自然な音色となり、長時間聴いても疲れにくい音になっている。

 低域に関しては、ややブーミーな印象もあるが、映画のサラウンド音声の場合、これぐらいの量感ある低域の方が印象は良いだろう。音質に関しては、従来比で大きく向上した印象だ。

意外に”いい感じ”のProLogic II+ドルビーヘッドフォン

 ヘッドフォン部にあった高域の癖が取れた事で、シアター向けだけでなく、音楽を聴くためのコードレスヘッドフォンとしても使ってみたい気にさせる本機だが、通常の2チャンネルモードでCDを聴いていても、今ひとつ感動に欠ける。コードレスヘッドフォンとしては高品質で、並のヘッドフォンオーディオに比べればはるかによいが、高音質で音楽を楽しむ領域にまでは残念ながら達していないのだ。

 しかしBGMとして仕事をしながら音楽を聴きたいといった場合には、Dolby ProLogic IIのMusicモードとドルビーヘッドフォンのDH2モードの組み合わせがオススメだ。

 Dolby ProLogic IIは2チャンネル音声の位相差や各音を検出し、5.1チャンネルへと変換する処理のこと。単純に各チャンネルに振り分けるだけでなく、位相管理や聴感補正が上手にかけられ自然な音場を生成する。

 ただしDolby ProLogic IIは、リスナーの位置やスピーカー配置などが理想的な位置にあり、さらに各スピーカーの特性が揃っている時はうまくいくが、一般的な5.1チャンネル環境では音場が崩れる上、周波数特性も不自然に感じてしまう場合が多い。このため、筆者自身もDolby ProLogic IIを活用する事はこれまでほとんど無かったが、ドルビーヘッドフォン技術との相性はとても良いようだ。

 音響メーカー各社の技術者に話をきいてみると、センターチャンネルをきちんと生成した上で仮想音場を作り出すことで、ボーカルなどセンター定位のパートが際だち、反射音を抽出して頭の後ろ半分の周囲に配置するため、聴感上、聞きやすい音になるのでは? との意見が多かった。

 いずれにしても、ProLogic II+DH2の組み合わせは、通常の音楽をBGMで聴くのに最適だろう。HiFi再生とは全く異なる方向性だが、頭の中にステレオ音声が定位する通常の2チャンネル再生よりも、長時間聴いていての違和感・疲れは少ないように感じた。本来のホームシアター向けヘッドフォンという位置付けとは異なるが、+αの使い方として面白い。

 また本機の前面に配置されているヘッドフォン出力は、さすがに専用ヘッドフォンアンプとは比べられないものの、S/Nもそこそこよく、質の良いヘッドフォンと組み合わせることで軽快な明るい音を出してくれる。音楽を上記設定で聴く場合は、手持ちのお気に入りヘッドフォンをつないでみてもいい。

装着感は△だがトータルパフォーマンスはいい

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