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急速に拡大するVOD事業の夢と現実(後編)小寺信良(4/4 ページ)

» 2005年08月08日 10時00分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 操作の反応は、ほぼビデオレコーダー並みと言っていい。ボタンを押した瞬時になにかしらのアクションが起こり、メニューが出たり映像が出るまでに若干の間があるという程度だ。気になったのは、リモコンの作りが今ひとつで、ボタンのぐらつきが大きいところ。しっかり真ん中を押さないと、反応しないことがある。

photo リモコンはボタンの作りが若干ユルいのが難点

 画質やレスポンスの面では、今のところ放送やDVDを大きく超えるものではない。だがそこが問題であるということでもなく、見放題というシステムに魅力がある。今も音楽コンテンツをBGMとして流しながら仕事しているわけだが、そういうゼイタクな使い方ができるのも、定額見放題なればこそだ。

photo このジャンルでは、「インビジブル」と「80デイズ」のみ従量制で、あとは見放題
photo 音楽コンテンツの充実はうれしい

 またどんなコンテンツなのか実際に中味を見たり早送りして吟味できたり、前半のメイキングは飛ばして本編だけ見たりといったことも、心おきなくできる。レンタルビデオで月に2000円以上払っている人なら、「レンタルビデオからVODに乗り換え」というケースは、十分アリだろう。

 さらに興味深いのは、オンデマンドTVでは今年の9月から、ADSL回線向けに同様のサービスを展開する予定だという。その場合はコンテンツをH.246でエンコードして配信となり、当然STBもH.264対応のものを投入する。

 ADSLでは、場所や道路事情などによって1Mbps程度しか出ていないケースもあるが、それはあくまでもインターネットへ抜けたときの速度である。オンデマンドTVのようなNTT回線網直結サービスの場合はNTTのIPv6網内だけで完結するため、NTT局までの速度が出てればいい。実測ではいくら遅くても、NTTまでならばほとんどのケースで3M〜4Mbps程度は出ており、H.264ならサービスは十分可能だという。

 昨今のデジタルテレビ放送や次世代DVDの状況を見ていると、最新の機器に最高品質のコンテンツ、という方向に邁進しているように思える。もちろんそれはそれで、ある意味非常に正しい進化の形ではある。

 それに対してVODは「別に今までどおりでいいや」という人のための、映像コンビニ的存在になっていくような気がする。お金より時間の無駄が気になる人に向けたサービスであり、「まったく新しい体験」ではなく、「現状のあり方で不便なところだけをテクノロジーで駆逐した形」という姿なのだ。

 SD(Standard Deffinition)時代の膨大なコンテンツを自分の都合で楽しめるという意味では、VODは膨大なアーカイブを手に入れたことと同義となる。実際に体験してみると、「家に帰ってテレビ放送は見ない、でもVODは見る」という人が増えてきても、驚くにはあたらないだろう。


小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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