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耳触りの良い“素直な音”――ケンウッド「R-K700」レビュー:上質な机上音楽空間のススメ(2/3 ページ)

» 2005年08月23日 14時48分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 製品には無指向性マイクが付属しており、部屋の特性やスピーカーからリスナーへの距離を計測。スピーカー配置のいびつさや周波数特性の乱れを自動補正するROOM EQ機能ももつ。もし有効に機能するのであれば、理想的な設置環境を望みにくいデスクトップでのリスニング環境を、あるいは改善してくれるかもしれない。

photo リモコン(左)と無指向性マイク(右)

 もっとも、4万円前後の価格でCD/MD/チューナーの3ソースを内蔵している製品である。アンプ部に対してピュアオーディオ的な良さ、高音質を求めるのは無理だ。これは本機だけではなく、同価格帯・同タイプのすべての製品に言えることだろう。オーディオ機器は手間とコストがストレートに音質に表れる。

 では安いからダメなのか? と言えば、必ずしもそうとも言い切れない。絶対的なアンプとしての性能はいかんともしがたくとも、上手に音を作れば聴感上、心地よい音にすることはできるからだ。価格なりに無理をせず、リスナーにとって気持ちの良い音になれば、低価格のオーディオ機器として成功と言えるだろう。

中音域を中心に聴かせるバランス

 さて、では前回と同じようにALR/JordanのEntry Sをスピーカー端子に接続してみた。本機は本来、6オーム以上のスピーカーにしか対応しないが、Entry Sは4オーム。機器側に余裕がなければ壊れる可能性があるが、一応、保護回路が働くことなくきちんと駆動できるようだ。純正スピーカーでの音も確認はしているが、特にEntry Sで大きく傾向が変化するというわけではないため、今回もリファレンスとしてはEntry Sを使っている。

 さすがに解像感や音の分離が甘く、各種の楽器が混濁してダンゴになる。中低域から低域にかけての力感や表現力も心許なく、たとえばピアノなどは低弦の音が前へと出てこず聞き取りにくくなる。クラシック系のソースとの組み合わせはやや厳しい。

 ジャズもアコースティックなベースは厳しいが、エレキベース中心のスムースジャズならばさほど問題はないだろう。ベースラインの一部、低い音域が聞き取りづらくなる場合もあるが、低域は出ないと諦めてしまえばいい。むしろ質の悪い低音で気持ち悪くなるよりは良さそうだ。ポップス系のボーカルものはおおむね不満を感じることはなだろう。

 解像度や分離の甘さは価格帯を考えれば最初から覚悟できていた範囲内。低域に関しても、下品にズンドコと低音を強調するだけで、質の悪い音をまき散らすよりはずっといい。一応、低域を強調する機能もあるにはあり、確かに音としては出てくるのだが、音楽全体の質は間違いなく下がる。低音が出ないなりに、何も手を加えない方がいい。

 もしどうしても……といいうのであれば、サブウーファー出力を備えているので、そちらから別ユニットのサブウーファーにつなぐといいだろう(ただし音楽向けで質の良いサブウーファーはかなり高価だ)。

 全体的には中音を中心に聴かせるタイプで、高域は緩やかに下がっている。試聴に使用したEntry Sは高域の透明感や分解能に優れるが、R-K700との組み合わせでは高域の伸びが感じられず抜けが悪い。その分、S/N感はよく耳への刺激は少ない。

 今回の試聴は18畳程度の広い部屋で行っているが、ニアフィールドでBGMとして聴くには、このぐらいの音域バランスの方が良いかもしれない。決してHiFiではないが、こうした味付けも選択肢のひとつだろう。

評価の分かれるROOM EQ

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