以前、NTTサイバースペース研究所が、全く新しい立体視の原理を発見したというニュースがあった。今調べてみたら新聞記事は2000年6月に出ているので、もうそうとう「以前」だ(*1)。
Depth-Fused 3D(DFD)と名付けられた方式なのだけど、原理は簡単。全く同じ絵を2枚、ちょっと間をあけて重ねて配置する。そうして、手前の絵の透明度を変化させると、それに伴って奥行きが変化して見えるというのだ。手前を100%にしたら手前の深度、0%にしたら向こう側の深度になるのはあたりまえだけど、30%とか50%とかにすると、その中間の深度をだすことができるというわけだ。
最初に発表があって以来、どうなったのかなと思っていたら、9月にこれを用いたディスプレイが製品化されたという日本語リリースがあった。
今回は、このディスプレイが展示されている。しかし、もうディスプレイそのものを展示するという段階ではない。その上で何を見せたらいいのかという試作が展示されているのだ。
ひとつはコンピュータのGUI画面の提案。レイヤー上に重なっているウインドウの中のひとつの深さにマウスカーソルをあわせると、そのレイヤーのデータにアクセスできるというものや、タブウインドウのそれぞれのウインドウが実際に違う奥行きに「重なって」いるものなどだ。マウスカーソルを奥行き方向に移動させるのには、ホイールをそのまま使用していた(*2)。
最初は、そんな細かい奥行きが表現できるのかなと思ったのだけど、しばらくいじっているうちに、ちゃんとあわせられるようになっている。ただし、DFDは原理的に真っ正面から見ないとうまくない。斜めの角度から見ると、手前画像と奥画像がずれてみえることになってしまうのだ。至近距離で凝視するのが必然のコンピュータディスプレイでこれはつらい。DFDは目に与える疲労が少ない方式なのだけど、このずれは精神的なストレスになって、違うところで疲れてしまう。ただ、これは画面のデザインなどでかなり解決できる要素でもありそうなので、これからに期待だ。
もうひとつは、タッチパネル。ボタンを押すと、そのボタンが「押し込まれる」というフィードバックが返るというものだ。こちらはごきげん。さっきのGUI画面に比べて操作するものが大きいので、ずれがあまり気にならないし、ずれていてもどうということはない。話によると、ボタンのデザインなどはかなり時間をかけて練っているということなので、その効果も大きそうだ。
これを、触覚フィードバックを組み合わせたら、さらにおもしろいものになりそうだ。
*1 その直後の発表はわたしも見に行った。
*2 これは、インタラクション2003にあった「ぱらぱらウインドウ」)と同じ考え方だ。
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