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2つの規格をアグレッシブにサポートするWarner次世代DVDへの挑戦(1/3 ページ)

» 2006年02月07日 12時22分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 ハリウッド映画スタジオ取材記事の2社目は、Warner Home Videoである。DVD黎明期、低価格で積極的にDVDタイトルをリリースして行ったワーナーが、HD DVDとBD、2つの規格に対して、どのような計画を持っているのか。Warner Home Videoの事業開発担当・副社長の横井昭氏に話を伺った。

photo Warner Home Videoの事業開発担当・副社長の横井昭氏

 横井氏には2年前にも話を伺っているが、同氏はもともと松下電器産業の出身。松下電器がUniversal Picturesを所有していた頃、同社の役員として映画業界に携わった。その後、松下電器はUniversalを売却。横井氏は当時Warner Brothers副社長だったウォーレン・リーバファーブ氏に誘われてWarner Home Videoへと参加したのである。

 実は横井氏は昨年末、定年により退職すると噂に聞いていたのだが、1月の「International CES」会場でばったり出会い、「いや、次世代光ディスク事業が落ち着くまでは辞められませんよ。ビジネスはこれからですから」と元気なところを見せてくれた。

 その翌週、スタジオ内で話を伺ってみると、やはりその元気さそのままに、アグレッシブな事業計画を披露しはじめた。

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HD DVDとBD、両規格で同タイトルをリリース

 まず気になるのが、2つの規格をどのように扱うかだ。Warnerとして、いずれかの規格を優先するのか否か。これについて横井氏は「全く同じ」と明快だ。

 「HD DVDプレーヤーとBDプレーヤーは発売日が異なるため、HD DVDが発売時期で先行することになるでしょう。作業としてHD DVDの方が先行していたため、最初のうちはHD DVDと同時というわけにはいきません。しかし、1年ほど時間が経過した後にはBD向けタイトルもHD DVD向けタイトルに追いつき、ほとんど同じタイトルが両規格から選択できるようになります。BDは、スペックが12月に決まったばかりなので、少し出遅れているだけです」

 しかし2年前、横井氏に話を伺ったときには、中立の立場を示しつつも、明らかにHD DVDへと傾いているように、コメントの端々から感じられた。その後、HD DVDへの支持、BDもくわえた両規格への支持へと移り変わってきた。今でもHD DVDの方が本命と考えているのではないだろうか。

 「確かに、当時はHD DVDに傾いていました。映画会社にとって重要なのはROM規格ですから、ROMを作りやすいHD DVDに傾いていたのです。この判断は今でも変わっていません。しかし、望んでいたような統一はできなかったのですから、ROMの複製コストうんぬんといった事を超えてビジネスとしての判断を下したということです」

 もっとも、かつてのβ対VHS戦争を戦った生き証人でもある横井氏は、今はフォーマット戦争の時代ではないと話す。

 「あれはもう20年前の話です。当時とは状況も異なりますし、歴史が繰り返しているわけでもありません。“フォーマット戦争”という言葉が盛んに使われていますが、そういう時代ではないでしょう。テープに比べればディスクは形状も同じで、複製コストも遙かに安い。ゲームソフトには7種類のフォーマットがあり、たとえばエレクトロニックアーツなどは全プラットフォームをサポートしている。そこにプレーヤーがあり、ユーザーがいるのであれば、それらをすべてサポートすることで映画会社としての収入を増やした方が良いという判断です」

 「映像ソフトにしても、DVDが主事業とはいえ、ほかにもVHSソフトを出し、UMDソフトも発売しています。次世代光ディスクに関しても、基本的な部分ではまったく同じことなんです。それぞれ用途や特性が異なり、ユーザーも異なる。そこに市場が生まれてしまうのですから、ソフト会社としては消費者のためにも、自らのビジネスのためにもコンテンツを提供します」

 とはいえ、いつまでも似たようなアプリケーションを提供するディスクが併存するとは考えにくい。たとえばVHSやUMDは、DVDとはまったく異なるユーザー層に向けた製品といえるが、HD DVDとBDは対象ユーザーがほぼ重なっている。

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