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» 2006年07月28日 12時28分 公開

DVDレビュー:れこめんどDVD「映画 ブラック・ジャック ふたりの黒い医者」 (1/2)

手塚治虫の代表作「ブラック・ジャック」を、息子の手塚眞が監督! ちょっとヤバめのあのキャラ、ドクター・キリコが登場。やっぱりBJとキリコ先生が並ぶと画になるなー。しかも音楽ジャズなんだぜ。

[皆川ちか,ITmedia]

「映画 ブラック・ジャック ふたりの黒い医者」

発売日:2006年7月14日
価格:5229円
販売元:エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
上映時間:104分(本編)
製作年度:2005年
画面サイズ:ビスタサイズ・スクイーズ
音声(1):ドルビーデジタル/6.1ch/日本語
音声(2):DTS-ES/6.1ch/日本語

過去にいろんな「ブラック・ジャック」がありました

 漫画家・手塚治虫の遺した膨大な作品群で、もっとも派生作品が生まれた「ブラック・ジャック」。映像作品だけでも、大林宣彦監督の宍戸錠版BJと、ジェームス三木脚本による加山雄三版BJ(普段は画廊のオーナーという設定……)は、語り草として特に有名。最近では、堤幸彦が演出したモックン版BJ(森本レオがキリコ! BJと年の差ありすぎ)がありましたし、安寿ミラと真矢みきがグラマラスにBJを演じた宝塚版もありましたな。もーみんな「ブラック・ジャック」好きすぎ! そして自由に脚色しすぎ!

 ちなみに私が好きなのは、隆大介がBJを演じたオリジナルビデオ版。キリコ役は草刈正雄で、ふたりともおっさんなんですが、やさぐれダークで格好いいのだ。サブタイトルはこの劇場版と同じく「ふたりの黒い医者」で、BJファンにはぜひお奨め。

 さて、BJの劇場版アニメは実は1996年に一度製作されている。監督は、当時オリジナルビデオ・アニメで「ブラック・ジャック」シリーズを発表していた出崎統。その翌年には劇場版「ジャングル大帝」が公開され、思い返せばあの頃は、ワンスモア手塚治虫ブームだったような気がする。もちろんBJ大好きなので、私はリアルタイムで映画館で観たけれど、出崎演出は劇画感が強すぎて違和感が大きかった。

 「あしたのジョー」「エースをねらえ!」など、肉体派アニメで知られる出崎監督だからなのか、BJも当然のようにマッチョの八頭身に。ホテルのプールで楽しそうに泳ぐBJはないよなー。体がツギハギだから、人に体を見せたくないんじゃなかったの? あんた本当は宗方コーチなんじゃないの? BJに近づく女に嫉妬丸出しのピノコが、ききわけのいい普通の幼女だったのもなあ。確かに可愛いけど、可愛いけりゃあいいってもんじゃあないでしょ。

さすが実息・手塚眞、ツボを押さえた演出で分かってらっしゃる

 微妙な劇場版から8年後、2004年の秋、日本テレビで不意に放映スタートしたTVアニメ「ブラック・ジャック」は、ファンを相当喜ばせたはずだ。手塚画を重視した作画、“スターシステム”と呼ばれる手塚マンガのおなじみキャラクターをレギュラー化する仕掛け、原作をベースにそれを現代的に翻案したストーリーのクオリティ。さらに、各話ごとにキャラクターデザイン担当を変更する方法をとっていて、シリアスな話や明るい話など、ストーリーによって画風が変化している点も効果的。監督は、ヴィジュアリストの手塚眞。さすが実息、すばらしいよ! TVアニメは現在も好評放映中で、なにやら独自の展開になりつつも依然目が離せません。

 さて、TV版に続いて手塚眞が監督した劇場映画「ブラック・ジャック ふたりの黒い医者」は、TV同様に原作のエピソードを引用しつつ、後半は映画オリジナルのストーリーとなっている。

 大手製薬会社ビルのショッピング・モールで、過激派による爆破事件が発生。医者が足りずに、留置所にぶちこまれていたBJも駆り出されるところから物語は始まる。

 「知ってるだろうが、私は高いよ」

 BJの第一声がこれ……雰囲気がもう子供向けじゃないなー。しかも冨田勲による音楽はアニメ・ミュージックらしからぬ口笛とピアノ・ジャズによる構成で、イーストウッドの映画並に渋い。やっぱり「ブラック・ジャック」はJ-POPじゃないもんね。

 爆破現場で鉄骨に挟まれた子供を助けるエピソードは、原作111話「タイムアウト」。BJがメスを研いでもらいに刀鍛冶・馮二斎の元を訪れるシーンは第141話「湯治場のふたり」。後半、細菌兵器に感染した患者の治療にBJとドクター・キリコが招かれる場面は、第46話「死に神の化身」より引用。

 それらのストーリーをテンポよくつなげていくが、中でもこのエピソードは強烈だ。爆破事故に巻き込まれ、全身が麻痺した母を助けようとBJにすがる兄妹。子供たちに苦労をかけたくない思いから、“死に神の化身”の異名を持つ安楽死のスペシャリスト、ドクター・キリコに死を依頼する母親。手術は成功し、BJの勝利かと思いきや、親子3人は退院した帰り、交通事故に遭い即死する。その知らせを聞き、高らかに笑って去ってゆくキリコに、「それでも私は人を治すんだ。自分が生きるために!」と叫ぶBJ。原作中屈指のエピソードである第56話「ふたりの黒い医者」は、本作のサブタイトルでもある。

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