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新「メタブレイン・プロ」にみる画質アプローチの変化ファーストルック(2/3 ページ)

» 2006年08月24日 10時16分 公開
[本田雅一,ITmedia]

質感表現を磨いた新メタブレイン・プロ

 東芝によると、新メタブレイン・プロが目指したのは“質感表現”だという。しかし、これは大変に難しいテーマだ。液晶パネルの限られたコントラスト、表現能力で、映像に含まれる情報をすべて表現しきることはできない。明暗のダイナミックレンジを均一に表現しようと思えば、どうしても個々のシーンにおける表現の幅は限られてしまうからだ。

 そこでメタブレイン・プロは、多くの切り口で画像を分析し、ダイナミックにガンマカーブ(輝度トーンカーブといった方がいいかもしれない)を、元ソースの輝度レンジを細かく細分化して変化させる。

 たとえば雪山のシーンが現れると、白側のヒストグラムを見ながら、ある特定の輝度レンジのガンマを立てることで、白いシーンの中にディテールを浮かび上がらせる。逆に夜景や洞窟内部など、画面のほとんどが暗いシーンでは、暗部のガンマを立てて暗い輝度レンジの階調を豊かにし、ディテールが見通せるように調整される。

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 また中間輝度中心のシーン、たとえばやや控えめの露出で撮された屋外のシーンなどでは、黒側の引き込みはそのままにしながら、中間輝度を持ち上げて明るくメリハリのある映像にする。

 これらの機能はH1000、C1000が登場時に初代メタブレイン・プロで追加された動作だが、新メタブレイン・プロではその動作がより明確になり、特に“あざやか”や”標準”といったモードでは、その効果をハッキリと体感できた。

 この変化は絵作り全体の印象にも変化をもたらした。具体的には、より積極的にコントラスト感を付ける方向に振られている。黒側をギュッと引き締め、立体感を演出するような絵作りで、Z1000の中間階調を滑らかに、ソフトに見せる印象とは明らかに異なる。

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 こうしたメリハリ重視のセッティングは、“ハマる映像”において非常に良い結果をもたらすものの、“想定外の映像”では弊害を起こす可能性がある。たとえば背景に露出が合っているが、登場人物は逆光で軽くレフ板の光が当たっている程度といった映像で、黒側を引き込むようなメリハリ重視の映像処理を行うと、顔の比較的明るい部分は正常だが、影の部分が黒方向に引っ張られ、必要以上にどす黒くなったり、目が窪んだような描写になることがある。

 Z1000は、そうした弊害を避けるために、黒を引き込んで締めるようなチューニングを、あえて控えめにしていたわけだ。しかし新メタブレイン・プロは、新しいアプローチでこの問題を回避した。

 特定の色相と幅を指定し、その指定範囲内にある画素のヒストグラムをリアルタイムに取る機能を追加した。このヒストグラムをある手法で評価することで、どの輝度レンジに肌色が分布しているかを検出するのである。肌色が分布する輝度レンジが絞り込めれば、その部分がナチュラルなガンマになるよう調整することで、メリハリ重視のセッティングでも肌色の質感表現を阻害しない色調整を行える。

 このように、液晶パネルの限られたコントラスト比の中で、最大限に明暗差をユーザーに感じさせるよう適応的にチューニングすることで、質感を際だたせるのが、新メタブレイン・プロの良さだ。その効果は、一般的なニュース番組、バラエティ番組でも確認できるほか、自然を描くドキュメンタリーなどでも、一見するだけで判別できるだろう。

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