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新「メタブレイン・プロ」にみる画質アプローチの変化ファーストルック(3/3 ページ)

» 2006年08月24日 10時16分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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実利用環境に即した映像モード設定

 新メタブレイン・プロの動作を、適応的にガンマカーブを変化させる機能で追いかけた。新モデルではさらに照度センサーを内蔵させ、バックライトを自動制御することで想定する明暗のトーンで見えるよう工夫が凝らされている。

 さらに新機軸の機能として実装された「ディテール・リアライザー」も興味深い。

 これは木々の葉など空間周波数の高い領域に対しては通常通りにシャープネスをかけて先鋭度を出しつつ、青空など均一で滑らかなトーンで描かれている領域にはシャープネスを弱め、映像に乗っているノイズあるいはデジタル放送時に乗るMPEGノイズを目立たなくしている。

 また色調整に関しても従来より細かな調整が行われているようだ。たとえばあざやかモードでは色温度が1万2000度と高く設定されているが、そのままの色温度で肌色を表現すると青く見えすぎる。そこで特定色相のみ色温度を変化させることで高色温度のモードでも肌色が健康的に見えるよう配慮しているという。

 しかし、個人的にZ2000の映像を見て“巧い”と感じたのは、映像モードの設定だ。

 Z2000、H2000、C2000の新REGZAでは、「あざやか」「標準」「映画」「テレビプロ」「映画プロ」の5モードが用意されている。テレビプロは従来は「映像プロ1」、映画プロは「映像プロ2」と呼ばれていたモードと同じだ。

 「あざやか」は明るい店頭での見栄えを重視した明るさを強調するモードではなく、昼間にカーテンを前回にした時に感じる彩度感の減退を補うべく、その名の通りに彩度を高めに、派手な絵作りをしたモードだ。前シリーズまでは、明るさと彩度が飽和し、一部の映像で立体感が失われていたが、新シリーズでは折り合いを付け、階調が失われないように配慮されている。

 このため店頭では他製品に比べ元気さは劣って見えるかもしれない。しかし、店頭でのみ通用するモード(いわゆる店頭モード)をある程度は捨てた東芝の英断は評価したいところだ。

 そのほかのモードは大きな変化はないが、「映画」は引き続いてある程度、リビング照明がある部屋で映画を見るのに適したモードになっている。実は映画あるいはシネマといったモードの多くは、かなり暗い部屋で見ることを想定して絵作りしている場合が多い。

 映画は暗い場所で見ることを前提に作られているため、暗い部屋で見ることを前提に絵作りするというのはある意味正しいのだが、現実にはリビングの照明を付けたままで見るユーザーの方が多いだろう。REGZAシリーズの映画モードは実利用環境をきちんと想定した上でのセッティングで好感が持てる。

 一方、モニターライクに暗く照明を落とした環境で、適応型の自動画質調整機能もほとんど働かさず、映像そのものの持つ情報を見ようというユーザーには、テレビプロと映画プロがある。こちらは“分かっている人”向けとして、一般的に使うだろう3つの映像モードとは別に“プロ”と名付けてプリセットしてある。

デジタルであるからこそ可能になった画質への新しいアプローチ

 放送がデジタルになり、表示デバイスもデジタル固定画素になったことで、“絵造り”と呼ばれるメーカーの味付けも変化しつつある。アナログデバイスでの絵作りとは、まさに微妙な調整の追い込みのことだった。

 しかし固定画素において、たとえばフルHDの映像ソースをフルHDパネルにドット・バイ・ドットで表示するとするなら、シュートを付けて輪郭描写の味付けをするといったことは行えない(必要もない)。では絵作りの追い込みかといえば、アナログ時代のように色を追い込めるほどデジタル表示デバイスは熟成しておらず、また階調表現の面でもアナログに比べれば不完全だ。

 しかしデジタルであれば、映像をデータとして分析することができる。メタブレイン・プロのアプローチは、デジタル映像の分析を行い、その結果を評価して映像の表現方法を自動的に最適化しようというもの。まだ不完全な要素は今後も追い続けていただくとして、デジタルだからこそ可能になった画質への新しいアプローチを模索している点、そしてその研究成果を製品レベルに落とし込んでいる点は評価したい。

 もともと使いやすかったリモコンの改善、あるいはチャンネル切り替えの高速化、EPG表示の高速化といった使いやすさの面で進化している点も見逃せない。

photo 新REGZAのリモコン

 しかし1点だけ、新REGZAシリーズでも取り組まれなかったテーマがある。それが液晶パネルの応答速度に対する回答だ。

 REGZAシリーズが採用するIPSパネルは、グレーからグレーへの応答、つまり中間応答が高速で速度的にも安定している特徴がある。このためオーバードライブ制御がやりやすく、実際の動画像の中ではさほど残像による解像度低下は比較的軽微(真っ白の文字のスクロールなどでは残像は見える)。

 最近の黒挿入を行う製品やコマ数を増やす製品などに比べると分が悪いが、かといってVA系パネルに比べれば印象はいい。とはいえ、手付かずのまま残っている応答速度の問題に対して、東芝は何らかの回答を用意せざるを得ないだろう。

 メタブレイン・プロは東芝テレビ部隊の財産ともいえる技術だ。残りのテーマに対しても、より積極的なアプローチを望みたい。

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