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» 2006年08月31日 02時53分 公開

拡張色空間「xvYCC」、普及の条件(2/2 ページ)

[芹澤隆徳,ITmedia]
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 もっとも、xvYCCというカラースペースが規定されても、それだけではユーザーはメリットを享受できない。たとえばパッケージメディアなら、コンテンツ側の対応はもちろん、再生機器(プレーヤー)や表示機器(テレビなど)、そして接続インタフェースの対応まで、エンドツーエンドの対応が求められる。

 両氏によると、最初に働きかけたのは“動画フォーマット”と“インタフェース”の規格にxvYCCを取り込むことだったという。前述のように、今年1月17日に「IEC61966-2-4」(xvYCC)国際規格が、また半年後の6月22日には「HDMI 1.3」が発行されているが、これに先立つ2005年1月にはMPEGの会合でMPEG-2/-4/-4 AVCでxvYCCを含む拡張色空間を参照することが決定され、既に規格文書化がスタートしている。MPEGでxvYCCを“参照する”とは、動画信号に含まれるメタデータとして“xvYCC対応”を記述できるという意味だ。そのコンテンツが拡張色空間に対応したものであることを再生機器や表示デバイスに伝え、もし機器側もxvYCCをサポートしていれば、広色域のまま再生してくれる。

 MPEGでは、今年10月に仕様としてフィックスしたことを示すFDISを発行する予定。さらに2007年前半をメドに規格書(IS)も出版される見込みだ。またITU_T H.264に関しても、既に最終投票が行われ、年内をメドに規格書発行を目指す段階になっている。

 トントン拍子で規格化が進んでいるように見えるが、xvYCCはもともと「使っていない部分を定義しただけ」のため、動画データの容量を増やすことはない。従って現在の放送でも対応できるうえ、さらにsRGB色域内ではまったく同じ定義となり、従来の映像機器などに対する互換性も問題なし。このあたりの事情がMPEG内の規格化が早く進んでいる背景にある。

 次の段階は、表示機器や再生機器のサポートになるが、杉浦氏によると「技術的な障害は少ない」という。たとえば液晶テレビの場合、単純に濃い色フィルターを被せれば色域は広がる。ただし、濃いフィルターを使うと光の透過率が落ちて輝度が落ちてしまうため、現在のところ、「トレードオフを見極めながら、適切な色域になっていくのではないか」という状況だ。

 先陣を切ってxvYCC対応を果たした新「BRAVIA」のX2500シリーズでは、xvYCCの色域をすべてカバーしてはいないものの、新しいライブカラークリエーションなどによってNTSC以上に色域を広げた。そして、拡大した色域の中では、xvYCCが可能にした“本来の色”を割り当てることが可能だ(別記事参照)。今後は、LEDバックライトやレーザー光源といった新機能や新デバイスによる色域拡大を睨みつつ、機器の対応が進んでいくものと予想される。

 では、残された大きな課題は何かといえば、“コンテンツの作成環境”だという。撮影するカメラがsRGBを超える能力を持つことは既に触れたが(現在は業務用カムコーダーを改造してxvYCC対応の映像を撮影できる)、撮影した映像を加工するオーサリングツールが存在しない。編集した結果を確認する手段がないのでは、製作者も対応できない。この点について杉浦氏は「1つ1つ、環境を変えていくことが必要だ」とするに止めた。

 最近は、Blu-rayやHD DVDといったハイビジョンパッケージが注目を集めているが、両氏によると「拡張色空間で表現された映像の世界を体験すると、従来色域(sRGB)の映像には戻れない」という。画質に及ぼすインパクトとしては、ハイビジョン化に劣らない可能性も高いxvYCCだけに、環境の整備が待たれるところだ。

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