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ウェブ動画に最適なインプットデバイス――「EX-S770」開発者インタビュー永山昌克インタビュー連載(2/4 ページ)

» 2006年11月30日 10時21分 公開
[永山昌克,ITmedia]

「撮る」だけでなく「見る」を重視したカメラ

――今回のEX-S770が目指すところは?

柳氏: 従来機の「EX-S500/600」では、写真だけでなく、スナップ的なムービーも楽しめる、という動画機能への訴求をしていました。ただし動画のインフラが未成熟だったこともあり、動画をやり取りして楽しむコミュニケーションのレベルにまでは十分に達していなかった気もしています。

 しかし近ごろは、YouTubeを始めとするウェブ上の動画サービスが進化するなど、少しずつ時代が追い付いてきたと感じます。そんなウェブで動画を扱う用途では、こうしたスナップ的な薄型カメラが扱いやすいのではないでしょうか。

 その上で、今回のEX-S770では従来よりもさらに大きな液晶を載せ、「撮る」という概念に加えて、「見る」ことのウエイトを高めました。新機能のデータキャリングによって、静止画と動画に加え、それ以外のデータも見られるようにしています。

photo 標準的な液晶よりもやや横に長い、アスペクト比14:9の2.8型ワイド液晶を搭載

メインは静止画で付加価値としての動画

――まずは動画機能からうかがいます。従来からの進化のポイントは何ですか?

柳氏: 最近は徐々にワイドテレビが普及してきましたので、これまでの640×480ピクセルに加え、新たに704×384ピクセルで撮れるワイドムービーに対応しました。

 カメラを取り出して即座に起動でき、モード切り替えを意識せず、ムービーボタンを押すだけで、素早く動画撮影をスタートできることはこれまで通りの特徴です。その上で、今回はボタンのレイアウトに工夫を加え、ムービーボタンをより押しやすい位置に移動させ、さらにズームボタンを横配置から縦配置に変更しました。

 また、動画の回転表示機能を新搭載しました。このようなカメラスタイルでは特に、カメラを縦に構えて動画を撮りたくなるシチュエーションがあると思います。しかし縦位置で動画を撮ると、その後テレビやパソコンでの再生が不自由になります。これまでの製品を私自身が使って感じ、どうにか解決したいと考えていた問題です。技術的な困難があり、データ自体の回転はできませんでしたが、動画再生の回転表示を実現しました。

 仕組みは、縦に構えて動画を撮影する際に、動画データに縦のフラグを入れ、その情報に基づいてハードウェアでデコードし回転させています。パソコンで見る場合は、動画編集ソフトなどを使って回転させる必要がありますが、テレビ再生の場合は自動的に回転表示になります。

――動画を手軽に撮れる小型カメラという意味では、三洋電機の「Xacti」シリーズがあります。Xactiのような縦型スタイルも検討したのですか?

柳氏: 縦型スタイルも使い勝手に優れる部分があると思います。ただ、縦型ではカムコーダーと比較されがちです。当社では、あくまでデジタルカメラとして購入し、写真をしっかり撮りたいと考えるお客様をターゲットにして、あえてカメラスタイルにこだわっています。静止画機能が軸であり、さらにスナップ的な動画も撮れるという狙いです。そのほうが売り場的なイメージも含め、お客様とのコミュニケーションを明確にしやすいと考えています。

――動画よりも静止画が主体なのですね。

柳氏: 特に国内市場では、動画性能だけをアピールしても、幅広く売れる商品になるとはいえません。EX-S770では、基本となる静止画のスペックは今の売れ筋をしっかりと押さえ、カメラして使う際に不満がないようにした上で、プラスアルファとして動画機能を盛り込もうというスタンスです。

 データキャリング機能についても同じことがいえます。この新機能のみに飛びつく人はそれほど多くないかもしれません。カメラとしての基本性能を充実させ、そこに価値や魅力を感じる人に購入していただき、使っていただける頻度を高めることがまずは重要です。たとえ新機能を知らずに購入された方でも、買ってから付加機能の便利さに気付いてもらえると思います。

photo 外見は、動画機能を特に意識させないオーソドックスなカメラスタイルだ

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