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最廉価フルHDホームプロジェクターの実力は?――エプソン「EMP-TW1000」(4/4 ページ)

» 2007年01月05日 13時14分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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photo 「EPSONスーパーホワイト」は映像情報に含まれる100%輝度よりも上の情報を再現する機能

 もう1つ、エプソン製プロジェクターの調整ポイントとして注目したいのが、「EPSONスーパーホワイト」という項目。これは映像情報に含まれる100%輝度よりも上の情報(輝度レンジをすべて使って表現するパソコン映像とは異なり、上下にセットアップという領域があるが、この中の情報を使う)を再現する機能で、白ピークを抑えてセットアップ内のディテールを表現するため、見た目のコントラストは落ちる。

 しかし、前述した150PROGアドバンスのように高ゲインスクリーンを使う場合や、80インチ程度の小さめのスクリーンに投影する際などに、白が眩しく感じる場合などにオンにするといいだろう。一部の映像では白側のディテール感が改善される他、ハイライト近くのホワイトバランスが整うようだ。

まとめ

 実は、本機の量産試作を最初に見た時には、輝度のレンジごとに絵の印象が異なり、暗い場面、明るい場面、あるいはビデオ系の映像、映画系の映像によってずいぶんと色や絵の調子が違って見え、あまり良好とはいえない画質だった。ピタリとはまる映像もあれば、一本のコンテンツの中で色調がコロコロと変わって見えるものもあり、実際のところあまり良い印象は持てなかったのを憶えている。

 その印象は最終試作でかなり緩和されていたのだが、今回、出荷仕様のTW1000を見ると、その画質には一貫性がある。最後の最後で、安定した画質に持ってこれたようだ。

 各モードのセッティングは昨年モデルとの違いもあるが、基本的にはパラメータの変更で調整できる範囲であり、奇をてらった極端な絵作りはされていない。シアター環境での利用ならば、シアターブラック1と2を使い分け、肌色と色濃度を微調整すれば、たいていの映像に対応できるはずだ。

 機種固有のクセとしては、高純度の青がやや青紫側に寄って見える(同じ傾向は日本ビクター製のプロジェクターにも見られる)が、それがまたエプソンらしいトーンを生み出していることもあり、好みによる特色の範疇とも言える。また赤表現は同クラスでは良好であり、暗くなったり、朱色側に振れやすい高純度の赤が、そこそこ明るく純度の高い赤として表現できていた。

 一方、最後に映像回路の弱さについては指摘しておかなければならない。

 本機はI/P変換とSD映像のアップスケーリングをピクセルワークスのプロジェクター向けチップに依存しているが、この品質があまり褒められたものではない。SD映像のアップスケーリングに関しては、安価なDVDプレーヤーでもそこそこの本質のものが搭載されているため、それを活用することを勧めたいが、問題はハイビジョンのI/P変換にある。

 ピクセルワークスのI/Pは現時点では1080iに対する適切な処理が行えていないようで、2-3逆変換も動き適応型I/P処理も行われない。どうやら奇数フィールド、偶数フィールドを縦方向に伸ばし、交互に表示しているようで、1080iを入力すると縦方向の解像度が低下し、全体に輪郭があまく、微細なディテール情報が喪失する。これは1080pで入力した場合と比較すれば一目瞭然だ。

photo 1080P出力が可能なプレーヤーと組み合わせるとパネルの能力が活かせる

 このため、本機の1080Pパネルの能力を活かすには、プレーヤーやレコーダー側に1080P出力を持つ製品を合わせる(あるいは将来的に買い換えていく)ことを考慮することを勧める。前述した「SD映像はプレーヤーでアップスケール」という話も、当然、1080Pまでアップスケールできなければ意味がない。

 この点がやや残念ではあるが、昨年末にグッとラインアップが増えた1080P対応レコーダー/プレーヤーを前提とする限り、C2FINEパネル採用機において非常にお買い得な製品であることは間違いない。逆にプロジェクター内の映像回路に期待するユーザーは、本機以外のモデルを含めて検討すべきだろう。

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