低価格化が急速に進んだことで普及率も上昇した薄型テレビ。しかしながら、普及の促進は同時に各社間の競争激化を意味する。その中で競争を勝ち抜くカギは何か。国際フラットパネルディスプレイ展の特別講演で、ソニーのテレビ事業トップである井原勝美氏(取締役 代表執行役 副社長)が自社の戦略を語った。
同社の液晶テレビ事業参入は競合他社より遅い2004年からだが、新ブランド「BRAVIA」の立ち上げに成功したこともあり、2006年(2006年1月〜12月)には全世界で年間販売台数600万台、売上金額でも世界一を達成したという。
この状況下で井原氏がテレビの進化の方向性として掲げたのは「画質性能向上」「大画面化」「アプリケーションの拡大」の3つ。
画質については描画エンジンの「ブラビアエンジン」、バックライトシステム「ライブカラークリエーション」、倍速駆動「モーションフロー」などの要素が既に製品へ実装されているが、井原氏が力説したのが「x.v.Color」とBRAVIA Jから採用が始まった「10bitパネル」だ。x.v.Colorについてはカムコーダー以外にも対応製品を増やしていくほか、10bitパネルについては「10bit出力できるPLAYSTATION 3を組み合わせれば、よりきれいな階調表現が行える」と自社製品間の連携という観点からも重要な要素だと述べた。
大画面化に関して同社では既に昨年夏にS-LCDの次世代ライン敷設を発表している。このラインは当初今秋の稼働を予定していたものの、井原氏によれば暖冬などの影響で計画以上のペースで建設が進んでいるため、今夏には生産可能となる見込みだという。
新ラインは約2200×2500ミリという大型マザーガラスを月間5万枚生産する能力を持ち、このマザーガラスからは46型で8枚、50型でも6枚の液晶パネルを製造できる。50インチクラスの大画面製品を展開する準備は着々と整いつつある。「市場へ大画面化の提案を継続的に行ってきたおかげで、現在は4割以上が40インチ以上となった。今年のクリスマス時期には50インチの市場を作り出していきたい」(井原氏)
アプリケーションの拡大については、「テレビの役割は放送とパッケージメディアの表示にとどまってきたが、それ以外の役割を担っていくことも必要ではないか」とインターネット上のコンテンツや、家庭内に遍在する各種デジタルコンテンツの表示デバイスと役割をテレビに持たせていきたいという考えを示す。
同社は北米で「BRAVIA Internet Video Link」(関連記事)、国内では「アプリキャスト」(関連記事)や「ソニールームリンク」(関連記事)などといった新機能を次々とテレビへ搭載しており、「テレビの役割拡大」に余念がないことをうかがわせる。
最後に“隠し球”としてアナウンスされたのは有機ELディスプレイの製品化。速報のとおり「11インチモデルをテレビとして今年中に製品化する」という以外は特に言及されず、発売時期や価格といった詳細な仕様は一切明らかにされなかった。展示品のような形状でそのまま商品化されるのかも触れられなかった。
「有機ELは非常に素晴らしい感動を与えてくれるデバイス。まだ技術的な問題は残っているが、何とか解決していきたい」――井原氏は有機ELへの期待と抱負を述べて講演を締めくくった。
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