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» 2007年08月22日 23時50分 公開

「次世代も本命は液晶」――シャープが描く未来のテレビ像

シャープが公開した液晶テレビの試作機は、画質、薄さ、環境性能のどれをとっても既存の液晶テレビを大幅に上回る。そして“次世代テレビ”と言われる有機ELやSEDに対しても優位性は揺るがないという。

[芹澤隆徳,ITmedia]
photo コンセプトモデルの1つ「壁掛け」。薄型/軽量になることで、壁などを補強せずに“壁掛けテレビ”が実現するという。絵画を表示すると、本物の絵のように見える

 「性能上、(有機ELやSEDなど)すべてのディスプレイを上回っていると思う」――シャープ、ディスプレイ技術開発本部長の水嶋繁光氏は、液晶テレビの試作機を前に胸を張った(→発表記事)。

 シャープが公開した液晶テレビの試作機は、52V型ながら厚さがわずか2センチ(最厚部は2.9センチ)の超薄型。そのうえ10万:1のコントラスト比に消費電力は140kWh/年と、少なくとも数字の上では画質、薄さ、環境性能のどれをとっても既存の液晶テレビを大幅に上回る。そして“次世代テレビ”と言われる有機ELSEDに対しても優位性は揺るがないという。

 「SEDや有機ELが“次世代の薄型テレビ”と呼ばれる理由の1つは、自発光デバイスだから。かつてのブラウン管が自発光デバイスで、また初期の液晶テレビの性能が劣っていたことも背景にある。しかし液晶は、自発光でないがゆえに、各ジャンルでブレークスルーが起きた。今回の試作機は、バックライト、偏光板、カラーフィルターなど、最高レベルのものを結集して実現したもの。サンプルを製作できるレベルになったということだ」(シャープ、片山幹雄社長)

photophoto 同じく“未来のテレビ”のコンセプトモデル。「坪庭」と「屏風」。斜め45度から見てもコントラスト比5000:1を誇る(左)。HDMIケーブルはミリ波によるワイヤレス伝送に置き換えられており、手で遮ると映像が遮断される(右)

 試作機の開発にあたっても、新たな“ブレークスルー”があったというが、特許申請の都合もあり、詳細は明らかにされなかった。確かなのは、今回の発表が同社の技術力と液晶の可能性を示したということで、試作機が最終の仕様というわけではない。実際、同社では既に複数のサイズを試作しており、50型クラスより「小さい方も、大きい方も作った」(水嶋氏)という。

 なお、コントラスト性能だけを見ると、同社が2005年に発表した「メガコントラスト液晶」には及ばない。この点について水嶋氏は「メガコントラストもベースの1つではあるが、技術としては違うもの」と話す。「どちらも“進化したASV液晶”ということはできるが、構造は大きく異なる」。このほかLEDバックライトなど個々の技術についてもノーコメント。ただ、「バックライトを消しただけでは、この黒は出ない」という言葉は示唆的だ。

photophoto 地球の映像(左)では、宇宙の黒がベゼルと区別できないほど黒い
photo 大阪府堺市に建設される新工場

 片山社長は、今後の課題として「量産のための技術を確立する。長年、培ってきた液晶技術のすりあわせが必要だ」と話す。同社は2010年3月に稼働を予定している大阪府・堺市の新工場に合わせて“次世代液晶テレビ”の生産を本格化する計画だ。

 「もちろん、新工場の稼働まで(今後発売する)製品が進化しないわけではない。試作機に詰め込んだ技術の一部を順次新製品に入れていきたい」(片山社長)

 今回の発表会は、“液晶新技術を発表”と銘打ちながら、技術の内容についてはほとんど触れられない珍しいケースだった。シャープとしては、液晶の可能性をアピールするとともに、既にブランドとして確立した亀山工場から堺工場へ軸足を移すにあたり、そのメリットと技術力を認知させる意図があったのだろう。そして、他方式の“次世代テレビ”が液晶をリプレースするかのような意見に反論する意図も垣間見えた。「液晶はコントラスト比などで他方式を凌駕するものになった。次世代の映像文化を支える本命だ」(片山氏)。

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