ICレコーダーは、もともと“ボイス”レコーダーですから、自動設定では録音レベルを平均化しようとします。その結果、会議などは聞きやすくなりますが、音楽録音では具合が悪い。音の大きくなるところ、たとえばサビの部分が盛り上がらないわけです。ですから音楽を録音するときは、録音前にレベルメーターで調整してほしいですね。目安としては、ピークランプが(盛り上がるところで)ときどき点滅するくらいでしょう。
――音楽再生はいかがでしょう。iPodなどポータブルプレーヤーの変わりに使いたい人も多いと思います。
音楽再生機能では、MP3のほかにWMAとリニアPCMに対応し、WMAのDRM10もサポートしています。音楽配信サービスなどで購入した楽曲を持ち歩くことができます。
液晶ディスプレイも四角いタイプに変わってからは日本語表示が可能になり、ID3タグも支障なく表示できるようになりました。フォルダは2階層まで使えますから、アーティストごと、あるいはアルバムごとに分けて整理することができます。
なにより、8Gバイトという容量は「iPod nano」の上位モデルと同じです。iTunesのようなPCソフトはありませんが、少なくとも容量の点では遜色ない。また本体にライン入力を持っているため、ダイレクトエンコーディング対応のポータブルプレーヤーと同じことができますし、PCと直接接続して手軽にファイルをやり取りできるなど、便利な部分も多くあります。
バッテリーもeneloopをサポートしたことで、PCにUSB接続して充電するなど(単四形乾電池と)柔軟に使い分けることができるようになりました。ユーザーの要望が多かったACアダプタも標準添付しています。
――大容量化で用途が広がるのは理解できました。しかし、最近はSDカードも大容量化と値下がりが顕著です。カードスロットを搭載するという選択肢はなかったのでしょうか?
今回の製品は、小さくスリムに作りたかったのでスロットの搭載は見送りました。カードスロットを付けると、どうしても厚くなってしまいますし、無理に詰め込むとカードの出し入れなど、使い勝手の問題が生じます。
ただカードスロットを考えていないわけではありません。以前、ミニSDスロットを搭載した商品を出したことがあります。ぶ厚く、大きくなってしまいましたが、実は事前の予想に反して好評だったんです。
当時は“最長何時間録音”で競争していた時期だったので、社内でも営業や販売の部署には不評でしたが、内蔵メモリとミニSDの両方に録音できる点はユーザーに受け入れられました。ですから、(スロットの搭載は)“要検討”事項と認識しています。
――もう1つの新機能「ゴミ箱」について教えてください。どのような利用シーンを想定しているのでしょう。
ゴミ箱もメモリ容量の増加と関係があります。8Gバイトのメモリを搭載した結果、MP3のモノラルなら1000時間を超える長時間録音が可能になりました。これは1日に3時間録音した場合、1年間もそのまま使い続けられる容量なんです。
録音ファイルが増えてくると、管理や整理も大変です。一度は捨てようと思ったけど、後で「やっぱり必要だった」ということもあるでしょう。ゴミ箱を付加したのは、そうしたミスを防ぐため。PCユーザーには馴染みの深いアイコンですし、使い方も直感的にわかるでしょう。
――最後に、今後の開発方針について教えてください。先ほどのカードスロット以外に検討している機能はありますか?
ICレコーダーにとって最も大事なのは“音”です。ですから、録音時の環境に左右されず聞きやすい音を記録できることが重要でしょう。現在も背景ノイズを低減する「クリアボイス」機能を搭載していますが、こちらはアナログ処理のアプローチです。今後は、会議室に多いエアコンの音を消すなど、デジタル処理によって会議や講義の声をクリアにできる技術を開発したいですね。負荷が大きいためDSPの能力など課題はありますが、いずれ実装したいと思います。
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