早稲田大学の創造理工学部 総合研究科 菅野重樹研究室は11月27日、“人間共存ロボット”「TWENDY-ONE」(トゥウェンディ・ワン)を発表した。
エンターテイメント性や二足歩行技術などが脚光を浴びやすいロボット業界だが、TWENDY-ONEは人と共存するために必要な機能を1つのボディに納めた“汎用性”が大きな特徴だ。繊細に物をつかめる4指ハンドや全方向移動が可能な車輪を搭載し、高齢者の介護や製造業の現場支援など、人間のさまざまな活動をサポートすることを目的としている。
菅野教授は、人と共存するロボットには「安全性」や「作業の巧みさ」といった条件が求められると語る。1990年代の初め頃からこうした条件をテーマにしたロボットの研究を始め、1999年には繊細に動くハンドを備えた人間共存ロボット「Wendy」(ウェンディ)を開発、2000年からはWendyをベースに産学協同で研究をすすめ、約7年の年月を経てTWENDY-ONEが誕生した。
TWENDY-ONEの大きな特徴は、まず腕部に“バネ”を利用した関節機構を備えていることが挙げられる。人や物に接触したとき、この“バネ”が電子的な制御では難しかしい柔軟な動きで衝撃を吸収することで、安全性を確保しながら故障を防止する。また手の甲や前腕、肘など人との接触が多い部分にはシリコンなどのクッション材を採用した。両腕の先で約22キログラム、前腕全体で約34キロ程度の支える力がある。また腕部全体に53点の「分布型圧力センサー」を配置し、人との接触を感知したり動きに追従することができる。この分布型圧力センサーは腕だけでなくボディ全体に配置されていて、さまざまな位置からの接触を感知できるようになっている。
人の手の機能や形態を模倣したという4指ハンドは、指先の「小型6軸力覚センサー」に加え、手のひらに241点の分布型圧力センサーを搭載し、持つ物の大きさや柔らかさを高精度に感知して安定した把持を可能にする。さらに“つかんだ物を手の中で持ち替える”といった高度な作業も可能だ。手のひらはクッション材に覆われ、指先には金属の“爪”がついている。圧力の分散する“肉”の部分と、圧力を集中できる“爪”の部分とを持つことが、人の手のような巧みな把持を可能にするという。
その他にも音声認識や、CCDカメラによる視覚的な空間認識、超音波センサーによる障害検知など、さまざまな機能を1つのボディに詰め込んでいるTWENDY-ONE。「世界的にもこれだけ人と共存するための機能を統合したロボットはない」と菅野教授は語る。2015年の製品化を目指しているが、すべての機能を製品版に詰め込むのはコストの点で難しいという。ほぼオリジナルの部品で構成されるTWENDY-ONEの開発費用は「“数億円”というレベルではない」と菅野教授は話す。「現段階はつめ込めるだけつめ込んだフルスペックの状態。これをスタートラインにして、必要な機能を取捨選択し、“高級車”レベルの1000〜2000万円といった価格にまでコストダウンしたい」(同氏)。
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