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ブラックボディに強力な音場形成――パイオニア「VSA-LX70」HDMI 1.3a対応AVアンプレビュー特集(2/3 ページ)

» 2007年12月25日 08時00分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]

精悍なブラックボディ、音場調整はストレスフリー

 個人的にこのブラックフェイスは大歓迎だ。AVアンプはピュアオーディオアンプの系譜を受け継いでいる製品が多いためか、派手で重々しい、存在感を強く主張するタイプが多い。それらに対して本製品は光沢感をもつフロントフェイスと白で統一された文字、ブルーのLEDがさりげなく存在感を主張しており、その奥ゆかしさには上品さが漂う。

 部屋を暗くして鑑賞する機会の多いホームシアターには、ピッタリのカラーコーディネイトといえるだろう。またプレーヤーやレコーダーは、他社製品であってもブラックを基調としたモデルが多く、それらの製品とのマッチングも悪くない。こと外観に関しては、多くの人が好印象を持つはずだ。

 フロントパネルの操作性に関しては文句のない仕上がり。HDMI入力がソースセレクトダイヤルひとつで選べることや、さまざまなサラウンド効果をオン/オフできるボタンが小さいながらも並んでおり、フロントパネルでおおよその操作は事足りる。もし部屋を暗くしての視聴中にリモコンが見つからないようなことがあっても、不快な思いをすることはないだろう。

photophoto フロントパネルカバーの内側にはコントロールキーと前面入力端子を配置。USB端子もこちらに用意されている(左)、オンスクリーンメニューは英語。シンプルだが項目が多いため操作には多少の慣れが必要だ。設定したデータはパソコンに記録しておくこともできる(右)

 リモコンは表面が軽くカーブを描いていることもあって手触りは悪くない。ボタンの形状や配列が工夫されており、操作性もまずまず。配置にパイオニア独自のローカル性がいくつか垣間見られるが、慣れてしまえばとまどうこともない。

 自動音場調整機能については、マイクを差し込むと自動的にオンスクリーンメニューに切り替わるため、とまどいなく作業を完了することができた。Advanced MCACCとフルバンド・フェイズコントロール、2つの設定を一気に行うため時間はかなりかかるが、そのチェック項目の多さゆえに仕方のないことだろう。ちなみに今回のテストでは、7分ほどの時間を要した。

 設定された結果は、グラフなどを使いきめ細やかに表示されるため分かりやすい。それにしても調整項目が豊富なことには驚かされる。カスタマイズするにはそれなりの知識と経験が必要だが、自分の手で音を作り上げたい人には、うれしい仕様といえる。唯一の不満は、イコライザーが9バンドということ。他社製品と比べて遜色があるわけではないのだが、ここまで調整内容が詳細なのだから、せめて13バンド、できれば15バンド以上は欲しいところだ。

photophotophoto MCACCとフルバンド・フェイズコントロールの結果/設定変更画面。グラフなどを使いビジュアル的に表現してくれているためとても分かりやすい

スピーカーを“変身”させるチカラ

 自動音場調整を終えたあとの音を聴いて驚いた。今回の視聴だけでなく、過去に聴いたエラック200ラインシリーズの経験ともまったく異なる整然としたサウンド。まるでフロントのFS207Aが、超広帯域のフルレンジスピーカーに化けてしまったかのようだ。

 センタースピーカー(CC201.2)との微妙な解像度や音色の違いも感じられなくなり、3本が一体化、前面の壁自体がスピーカーになってしまったかのような印象さえある。「フルバンド・フェイズコントロール」の効果、恐るべし。これを使えば、素性のあまりよろしくないスピーカーであってもそこそこ、いや、見違えるようなサウンドを奏でてくれそうだ。使える/使えないの問題ではない、あまりのカルチャーショックでただ感心するばかりだった。

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