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ブラックボディに強力な音場形成――パイオニア「VSA-LX70」HDMI 1.3a対応AVアンプレビュー特集(3/3 ページ)

» 2007年12月25日 08時00分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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photo 他社と比べて特に特徴のない集音モノラルマイク。これによってあの高度なサラウンド空間が完成するとは想像しがたい

 しかもフォーローするリスニングポジションが広いことも素晴らしい。こういった自動音場調整機能は、精度が高ければ高いほど、要するに音がピタッとまとまっているものほど、頭がちょっと振れただけでとたんに音場が狂ってしまう場合が少なくないのだが、本製品に関してまったくそういった気配がない。試しに着座位置を人ひとり分(約60センチ)左右に動かしてみたが、音質も位相も、大きく崩れることはなかった。このあたりは、MCACCという自動音場調整機能をいち早く導入した、先駆者ならではのアドバンテージだろう。

 こういった自動音場調整の結果から分かるように、サラウンドに関しては完璧ともいえる空間表現の素晴らしさを持つ。「ダイハード4.0」のチャプター15では、トンネルのなかで前後左右にクルマ!が飛び交うシーン(言葉にすると不思議なシーンだ)だが、その音の移動が的確でスピーディー。主人公たちのハラハラした気分を存分に味わえる。

 フォーマットの違いによるサウンドクオリティーの差が少ないのもメリットだ。「300」に収録されているリニアPCM/ドルビー TrueHD/ドルビーデジタルという3つのサウンドを聴き比べてみたが、それぞれの個性が的確に生かされており、どれが劣るという印象はない。特にレガシーフォーマットの再生にかけてもアドバンテージを持つと考えていいだろう。BDだけでなくDVDビデオの再生も楽しめそうだ。

 本製品の素晴らしいところであり、それが逆に唯一の弱点にもつながっている部分が「音色」だ。スピーカーの素性を強制的にたたき直すあまり、スピーカーが本来持つ個性を多少なりとも奪ってしまう傾向がある。普通の人だったらほとんど気になることはないだろうが、その音に惚れ込んでいる人には、少々残念に感じることがあるかもしれない。「チョイワル」のほうが魅力的に映るのは、人間もスピーカーも同じだからだ。しかしその点をふまえても、VSA-LX70の自動音場調整がもたらすパーフェクトなサラウンド空間の魅力は絶大だ。多くの人が、このサウンドに夢中になるだろう。

お勧めしたいユーザー

photo AVアンプ本体からテレビやプレーヤー、iPodまでもコントロールできる多機能リモコン。ボタンの共用によって数を減らしたうえカタチにも工夫がなされているため操作性は良好

 部屋の環境が整えづらい人や、音響セッティングができないという人、できるけど面倒を避けたいという人にとってこれほど役に立つAVアンプはない。絶対のお勧めだ。また、いまあるスピーカーを活用して、何とかサラウンドを始めたいという人にもピッタリ。

 MCACC+フルバンド・フェイズコントロールが生み出す音場空間は、素人がちょっとやそっとでは太刀打ちできないほどの高いクオリティーを持ち合わせている。本製品に任せれば、クセの強いスピーカーであっても与えられた役割をきちんと果たしてくれるはず。使い勝手の面でも、大推薦のモデルだ。

 単純にブラックボディーのAVアンプが欲しい人がこのモデルを購入しても不満を覚えることはないだろう。逆にこのサラウンド空間は魅力的に感じるものの、ブラックボディーがなじめないという人には、兄弟機の「VSA-AX4AH」をお勧めする。機能的にはほぼ同じだが筐体デザインが異なっており、ボディカラーもシルバーが採用されている。サウンドはまったくといっていいほど同一なので、単純に好みや他の機器とのカラーマッチングで選んでもなんら問題はない。この画期的なAVアンプの登場を素直に喜び、存分に堪能して欲しい。

●注目ハードウェアチェック --
HDMI入力 4
HDMI出力 1
アナログ音声入力 4
PHONO端子
iPod端子
別売iPodドック
USB端子
iLINK端子 ×
LAN端子
自動音場調整機能 ○(モノラル)
パワーアンプ 最大220ワット×7
サイズ 420(幅)×187(高さ)×459(幅)ミリ
重量 17キロ

今回の試聴に使用した機器

 今回のチェックに使用した機材は以下の通り。視聴した環境や各機材の詳細については、こちらを参照頂きたい。スピーカーはエラックの200ラインシリーズと240ラインシリーズを組み合わせ、プレーヤーにはパイオニアの「BDP-LX80」とソニーの「プレイステーション3」を利用している。

photophoto
photophoto 視聴環境と使用したスピーカー。スピーカーはエラックの200ラインシリーズと240ラインシリーズのウーファーを組み合わせた

機材種別 メーカー 型番
フロントスピーカー エラック FS207A
センタースピーカー CC201.2
リアサラウンドスピーカー BS203.2
サラウンドバックスピーカー BS203.2
サブウーファー SUB2060ESP
プレーヤー パイオニア BDP-LX80
ソニー・コンピュータエンタテインメント プレイステーション3(HDD 20Gバイトモデル)
スピーカーケーブル オーディオテクニカ AT-SS2300
HDMIケーブル AT-EDH1000
デジタル同軸ケーブル AT-SD2000
デジタル光ケーブル AT-SDP2000
アナログケーブル AT-SA2000
電源タップ AT-PT707
プロジェクター 三洋電機 LP-Z4(旧モデル)
スクリーン キクチ科学研究所 キクチホワイトマッドアドバンス(100インチ 16:9ワイド)

視聴ディスク メディア・フォーマット
ダイ・ハード4.0 BD・DTS HDマスターオーディオ5.1ch
300 BD・リニアPCM5.1ch/ドルビーTrueHD5.1ch/ドルビーデジタル5.1ch
イノセンス BD・リニアPCM7.1ch/DTS-ES6.1ch
パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールドエンド BD・リニアPCM5.1ch/ドルビーデジタル5.1ch
アンジェラ・アキ「MY KEYS 2006 in 武道館」 BD・リニアPCM2ch
Omar Hakim「Listen Up」(ステレオサウンド「2007 dts-HD Master Audio Presentation Disc」より) BD・DTS HD Master Audio 7.1ch
Pat Metheny「Overture」(ステレオサウンド「2007 dts-HD Master Audio Presentation Disc」より) BD・DTS HD Master Audio 7.1ch
Diana Krall「THE VERY BEST OF DIANA KRALL」 CD
小曽根真「フォーリング・イン・ラブ、アゲイン」 CD
Yo-Yo Ma 「Plays the Music of John Williams」 SACD
Norah Jones「COME AWAY WITH ME」 SACD・5.1ch

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