年末も押し迫り、この連載も今年はあと2回を残すのみとなった。そこで今回は、少しだけ今年を振り返りつつ、来年に向けて何が起こりそうか――2007年の薄型テレビ動向を復習しながら、(当たらないかもしれない)2008年のトレンドについて話をしよう。
今年は1月の「International CES」で液晶テレビの倍速技術に関する発表を各社が行い、これがそのままトレンドになった。ご存じのように、倍速技術とは通常は毎秒60枚の映像を順番に表示するところ、120枚に増やして表示することで、“ホールドぼけ”と呼ばれるボケ感を大幅に緩和するテクニックだ。
その効果に関しては、機種によってまちまち。もちろん、完全に倍速処理ができれば良いことだらけなのだが、本来は存在しないコマを作り出さねばならず、絵の破綻が起きたり、あるいは狙い通りにボケが緩和されない場合もある。
カタログや店頭のポップには、“倍速技術を使っているか否か”しか表示されないが、実はその実力には、結構な開きがあるのが現実だ。ではどの機種がどの程度良いの? というと、これが評価が難しい。さまざまなタイプの映像ソースを集中して視聴し、すべての倍速化技術による破綻の具合、動画解像度改善の具合を比較するのは難しい。ほんの少し、映像の特徴が変化しただけで破綻したり、破綻しなかったりといったこともあり得る。
来年は単純に“倍速”というだけでなく、その品質や使いこなしに、もっと注目していかなければならないだろう。例えば、映画の表示に関しては、メーカーによって、あるいは同じテレビでも設定によって倍速パネルへどのように表示するのか、大きな違いがある。主な映画向け倍速表示手法は、以下の4種類だ。
ソニーや東芝が複数登場するのは、それぞれ動作モードの変更を行えるためである。
あくまで個人的な印象だが、現在の技術では補完画像を完全に生成するのは難しい。3番目の手法は最もスムースに動き、ホールドボケも少ないものの、動きが不自然になる確率が高い。4番目のソニー方式は映画的ジャダー感を残しつつボケ感を緩和しており絶妙。とはいえ、もっとも自然に映画が見えるのは、やはり5-5プルダウン時である。ただし、5-5プルダウンの場合、ホールドボケは解消されない。
映画の場合は、もともとが24コマのプログレッシブ映像だから、あまり小細工はせずに5-5プルダウンで見せ、通常のテレビ放送で積極的な倍速補完を行うというのが良いと思うが、もしかすると来年はもっと驚かせてくれるような隠し球もあるかもしれない。
さて、もうひとつ今年のトレンドとして顕著だったのが、液晶テレビのシェア拡大だ。この連載では「こだわりを持って見る映像用ならプラズマの方が良い。明るさや手頃なサイズ、選択肢の多さなら液晶」と伝えてきた。以前から映像機器好きであることが判明しているこの連載の編集担当者も、パイオニアのKURO(PDP-5010HD)を自宅に導入したようだ。一方、筆者も落ち着いた照明のリビングルームではKURO(PDP-6010HD)を使いつつ、明るい照明の仕事部屋には、液晶テレビでの映像ソフトの見え味をチェックするために東芝のREGZA(37Z3500)を置いている。
用途ごとに最適な表示デバイスが異なるという事実は、シェアが変化したからといって変わりはしない。売り上げの差は店頭での扱い方に直結する。とくにプラズマは店頭の明るい環境下では、その実力をあまり発揮できないため、置かれている場所が入り口近くの自然光がたくさん入る場所、あるいはたくさんの照明が当たる明るい場所に置かれると、どうしてもパッとしない画質になりがちだ。
その結果、プラズマの比率はさらに落ちる可能性もあるが、自分に合った良いテレビを選ぶ上で重要なのは、方式ごとのシェアやメーカーごとのシェアなどではなく、自分の目で見てどう感じるか? だろう。仕事柄、家庭に似た照明環境下ですべてのメーカー製品を見ることができるわれわれのように、各製品の実力の奥までチェックすることは難しいとは思う。だが、消費者はもっと自分の感じている印象に対して自信を持ってもいい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR