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HDMI 1.3a対応AVアンプの選び方バイヤーズガイド(2/3 ページ)

» 2007年12月26日 15時43分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]

システム構成から考える製品選び

 2つめのポイントは、現在どのような機器を持っているか、また、AVアンプを購入したのちどのようなシステムを構築するかだ。

 映画やライブビデオなど映像系を中心に見る、という人だったら、単純に音の好みだけで選んでも間違いはない。HDMI 1.3aに対応していれば、映像コンテンツの再生時に機能的な見劣りはないからだ。あえていうとすれば、予算さえ許せばできるだけ高額なもの、ミドルクラス以上の機器を選んで欲しいということくらい。

 今回のテストではエントリークラスの製品も試聴してみたが、はっきり言ってそのクオリティー差は価格以上に大きいものだった。特にDTS-HDマスターオーディオなど高音質フォーマットになればなるほどその差は大きく、正直言っていままでのDTSと差をあまり感じられないほどだった。せっかくのHDオーディオを生かすためにも、今回レビューを行った機器以上の製品を選択する必要はあると考えて欲しい。

photo ヤマハ「DSP-AX3800」

 またAVアンプは機能が盛りだくさんな分、操作も複雑になり分かりにくくなるため、煩雑な操作が苦手な人はシンプルな操作系を持つ機種がおすすめだ。そうした観点からいえば、今回テストした機種のなかではヤマハ「DSP-AX3800」が群を抜いている(→包み込むDSPと秀逸な操作性――ヤマハ「DSP-AX3800」)。

 フロントパネルのボタンがすっきりと整理され、リモコンの操作性も良好だったが、なによりもメニュー体系のわかりやすさは秀逸。日本語化されているオンスクリーンメニューもその恩恵を受け、取扱説明書を見なくてもすべての操作が直感的に行える使いやすさがあった。いっぽうプレイステーション3や同社製レコーダーと統一された操作感を持つソニー「TA-DA5300ES」もソニーユーザーには馴染みやすいと思う。

 映像系と同時にCDやアナログレコード、さらにiPodやデジタルオーディオプレーヤーなどといったオーディオ系も同居させたいという人の場合は、少々機種を絞り込む必要がある。

 大切なのは、実際に端子を用意しているかどうかよりも、その製品がステレオ再生に重点を置いているかどうかという、思想の問題だ。もちろん各社ともステレオ再生に対してもそれなりに注力しており、今回試聴した全機種はサラウンドバック用パワーアンプ出力が余っていた場合、それを利用してフロントスピーカーをバイアンプ駆動できるように設定されていた。しかし、回路構成や端子レイアウト、パワーアンプの駆動力など、実際の機器を見聴きしているとその優先順位がそれとなく分かってくる。その経験をふまえたうえで、再生機器ごとにお勧めモデルを紹介する。

 まずCDをよく聴くという人の場合は、オンキョー「TX-SA805」とヤマハ「DSP-AX3800」、そしてソニー「TA-DA5300ES」がお勧めとなる。この3者は特にデジタル接続に注力して音を煮詰めた印象がある。オンキョー「TX-SA805」は同軸デジタル接続のサウンドクオリティーが抜きん出て素晴らしい。HDMIの音も決して悪くはない、どちらかというとかなりよい方なのだが、正直なところ同軸デジタルの音を聴くと霞んでしまう。力強さ、空間表現、解像度、どれをとっても優秀。現在愛用のCDプレーヤーに同軸デジタル出力があれば、迷わずこちらを選択すべきだろう。

photophoto オンキョー「TX-SA805」(左)、ソニー「TA-DA5300ES」(右)

 ヤマハ「DSP-AX3800」とソニー「TA-DA5300ES」に関しては、HDMIのサウンドクオリティーに最大限注力した跡が見られる。映像と音声、両方の信号を扱うHDMIは音質の劣化が問題視されているが、両者はその事象に真っ向から勝負、高音質を実現している。特にソニー「TA-DA5300ES」は、6番目のHDMI入力端子に「for audio」と書き込むほどの自信を持っている。ピュアオーディオ機器として活用できるよう、ステレオ再生のサウンドクオリティーにも充分以上の配慮がなされているので、CDをよく聴く人も納得できるはず。

 ちなみにアナログレコードを接続する場合は、これにデノン「AVC-2808」が加わる。今回の6機種のうちフォノイコライザーを搭載しているのはこの4機種。ミドルクラスだということもあってか、思ったよりも装着率は高かった。とはいえフォノイコライザーは単体コンポーネントとしても売られているので、それほど重視することはないだろう。残りの2機種も含めて、音の好みで選んだようが後悔はないはずだ。

 最後にiPodやデジタルオーディオプレーヤーなどとの接続だが、単に接続するだけでよいのであればドックや変換ケーブルを用意さえすればどの機種であってもかまわない。充電もドック経由で可能だろう。しかしコントロールまでもAVアンプ側に求めるのだったら、ヤマハ「DSP-AX3800」とデノン「AVC-2808」、パイオニア「VSA-LX70」が候補となる。iPodのみに絞ればマランツ「SR7002」にもコントロール可能な別売ドックが用意されている。

 ちなみにデノン「AVC-2808」の上位機種「AVC-3808」と、ヤマハ「DSP-AX3800」はインターネットラジオなども聴けるネットワーク端子を装備。またパイオニア「VSA-LX70」にはパソコン内の曲を再生できる機能を持つ。こういった便利な使い方がしたいという人には、うれしい機種となるはずだ。

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