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HDMI 1.3a対応AVアンプの選び方バイヤーズガイド(3/3 ページ)

» 2007年12月26日 15時43分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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スピーカーとのマッチングから考える製品選び

 そして3つめのポイントとなるのは、どのようなスピーカーを使っているか、もしくはどのようなスピーカーを将来的に購入するつもりかだ。

photo 今回のテストに利用したエラックのスピーカー群

 いまあるスピーカーが上級ステレオパワーアンプなみの駆動力を必要とする場合は、デノン「AVC-2808」やパイオニア「VSA-LX70」がベストな選択だ。なかでもデノン「AVC-2808」の駆動力は特筆もので、今回のテストでは無造作に接続しただけで何のセッティングも行っていない状態のエラック200ラインシリーズスピーカー7台を、軽々と鳴らしきってくれた。

 エラックは比較的どのようなパワーアンプでもそこそこの音で鳴ってくれるため今回のテストに利用したのだが、実力の高いパワーアンプと組み合わせると、スピーカーの存在を感じさせない音離れの良い音を奏でてくれるという顕著な変化が表れる。そこまでの実力を素の段階で発揮してくれたのはAVC-2808のみ。AVアンプは5〜7チャンネルのパワーアンプを搭載しているため、単純なコストの割り算でもステレオパワーアンプに対して相当不利な状態にある。音に悪影響を与える要因でもある、映像系回路が一体化されていることもその状況に拍車をかける傾向を持つ。その点でAVC-2808の存在は貴重といえよう。

 いっぽうのパイオニア「VSA-LX70」は、デジタルシステムをフル活用してスピーカーの実力を発揮させようとするインテリジェントなタイプ。「Advanced MCACC」「フルバンド・フェイズコントロール」という2つのデジタルシステムによって、どんなスピーカーでも素性の良い音を奏でるようになる。こういった機能はとても貴重だ。

 「いま使っているスピーカーが個性的で、それをいかした音にしたい」という人には、ソニー「TA-DA5300ES」とオンキョー「TX-SA805」が向いているように思う。良い意味で音に個性がほとんどなく、入力された信号をそのままストレートに出力する傾向があるソニー「TA-DA5300ES」は、陰の役者に徹して自分のパートを誠実にこなし、スピーカーをのびのびと歌わせてくれる貴重な存在だ。

 オンキョー「TX-SA805」は、少なからず音を派手な方向に演出する傾向はあるものの、高い解像度と密度感によって、音離れのいい、空間的な広がりをダイレクトに感じさせてくれる。キャラクターはかなり違うが、両者ともに捨てがたい魅力をもつ実力機といえよう。

HDMI端子数のチェックは忘れずに!

photo ソニー「TA-DA5300ES」の背面。HDMI入力端子は6つと豊富

 最後にひとつだけ重要な選択ポイントを付け加えよう。それはHDMI入出力端子の数だ。

 まずは接続する予定の機器の数を考えて欲しい。入力側としては、レコーダーとプレイステーション3、Blu-ray Disc/HD DVDプレーヤーなどがメインとなる。普通は2つもあれば充分だが、レコーダーを2台持っているという人もいるだろうし、Blu-ray DiscとHD DVD、両方のプレーヤーを持っているというコアなAVファンも少なからずいるはず。将来性も考えると、接続予定の機器プラス1〜2つの入力端子は確保したいところだ。

 よって入力端子は3つ以上が望ましい。今回試聴テストを行ったAVアンプでは、デノン「AVC-2808」を除く5機種がこの基準をクリアしている。なかでもソニー「TA-DA5300ES」は、6つもの入力端子を用意しているので、接続機器が多くなりそうな人には大変重宝するはずだ。

photo HDMI出力を2つ備える、マランツ「SR7002」

 HDMI出力端子に関しては、ほとんどの機種で1つしか用意されていないためあまり選択の余地がない。マランツ「SR7002」のみ切り替え可能な2つの出力端子があるため、フラットディスプレイとプロジェクターを共存させたいという人には貴重なモデルとなっている。

 さて、ここまででおおよその選択基準は記憶していただけただろうか。今回紹介したこれら3つのポイントを熟考し、自分にとって、自分の環境にとって最も適した1台を選び出して欲しい。


 個人的なアドバイスを最後に加えるとすれば、ある程度頭の中でターゲットを絞りつつも、最終的には実際の音を聴いてから最終決定することをお勧めする。音の好みは千差万別。友人などがよいと言っても、それが自分にとってのベストサウンドかどうかは聴いてみないと分からないからだ。今回試聴することができたAVアンプは、どれも個性的で捨てがたい魅力があった。いずれを選択しても間違いのないことは確かなので、あとはどの音が自分にピッタリなのか、記事を参考にしつつ最終的には自分の耳で確かめて決断して欲しい。

 コストに関しては、どうせ購入するなら予算の許すかぎり高額な製品を選択してもらいたい。AVアンプの世界は3年で旧態然としてしまう時代が続いたが、HDMI1.3a対応の最新AVアンプに限ってはもう少し寿命が長いと確信している。5年は充分現役、周辺機器をうまく使っていけば10年間は使い続けられるだろう。また高額なモデルはピュアオーディオ用のパワーアンプとも兼任できるため、コスト的にも効率がよい。サウンドクオリティー以外に、そういった面からも高額製品には魅力があるのだ。

 製品の規格的寿命とコスト対効果。どちらの面から考えても、AVアンプはいまが買い時だと断言しよう。

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