2007年は、オリンピックやワールドカップといったレコーダー需要を喚起するイベントがなかったこともあり、前半は淡々とハイビジョンレコーダーへのシフトが進む、ほぼ無風状態の市況となった。しかし後半に入って「ハイビジョンで残す」に注力したH.264対応製品や、アナログ停波に向けてVHSデッキのリプレースを狙ったHDDレスBDレコーダーが投入されるなど、次世代DVDレコーダーの世代交代が一気に進んだ印象だ。今回は、そうした次世代レコーダーを中心に取り上げていこう。
新製品が多く投入された2007年冬モデルでやはり注目すべきは、ソニー、東芝、パナソニックの3社が投入したH.264(MPEG4-AVC)対応製品だろう。従来、ハイビジョンレコーダーは、デジタル放送の放送波をそのままに保存するか(DRモード、TSモードなど。以下、便宜上TS録画と呼ぶ)、SD解像度にダウンコンバートしたものをMPEG-2で再エンコードして保存していた(以下、VR録画と呼ぶ)。TS録画は画質劣化が理論上ゼロだが、保存に必要なディスク容量はVR録画の標準画質「SPモード」の4〜6倍程度は必要になるのが大きなウィークポイントだ。
例えば500GバイトのHDDを搭載したレコーダーなら、VR録画のSPモードでは200時間以上録画できるが、TS録画だと地上デジタル放送で60時間程度、BSデジタル放送では45時間程度しか録画できない。次世代DVDメディアにも1層メディアでは2〜3時間程度しか保存できず、次世代DVDメディアの低価格化が順当に進んでいるとはいえ、ハイビジョン保存は割高感が拭えぬままだった。
H.264は、次世代DVDでも採用されている圧縮率の高いコーデックで、対応製品ではデジタル放送をハイビジョン解像度で4〜15Mbps程度のビットレートまで圧縮して保存できるようになった(以下、H.264録画と呼ぶ)。放送波そのままのTS記録と異なり、レコーダーのエンコード性能が問われることにもなるが、3社の製品レビューでも触れたとおり、8〜9Mbps程度のビットレートであれば、概ね破綻のないハイビジョン画質で録画が行える。このビットレートでもTS録画に対して地上デジタル放送なら約2倍、BSデジタル放送なら約3倍の時間をHDDや次世代DVDメディアに保存できる計算だ。
もちろんH.264録画は魔法ではない。TS録画に対して画質は劣化するため、TS録画に対して同じ容量の記録メディアに単純に「×倍」の録画ができるとは言い難い。しかし、実質ハイビジョンのTS録画か、SD解像度のVR録画かの2択を迫られていた従来の製品に比べると、ハイビジョン保存をぐっと身近にしてくれる。TS録画も当然サポートしているので、使い分ければ良いだろう。
H.264対応は次世代DVDレコーダーが中心で、ソニーとパナソニックがほぼフルラインアップ、東芝が1製品のみ先行する形で(次世代DVDレコーダーとしては)エントリーモデルにあたる「RD-A301」を投入した。ただし、どのメーカーも従来からの製品ポリシーは維持しており、H.264対応製品ならどれでも同じというわけではない。
次ページから、いくつかの要素に分けてメーカー毎の傾向を分析してみよう。
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