前回はフロントプロジェクターの中でもエントリーに位置づけられる720pモデルを紹介した。今回は現在、一番“お買い得”といえそうなフルHDモデルを集めてみよう。
80インチ程度のスクリーンでも、充分に一般的なテレビよりも大きいことを実感できるが、できれば100インチぐらいはほしい。100インチならば、簡単にスクリーンを設置して片付けておくことも可能な“立ち上げ式”タイプもギリギリある。しかし100インチクラスになってくると、さすがに720pと1080pの差は無視できなくなってくる。
フルHDのテレビであっても間近で見ると画素が目立つように、720pを100インチに引き伸ばすと画素が目立ってしまうのは致し方ない。フルHDプロジェクターが高嶺の花だった時代ならば、それでも720pの方がコストパフォーマンスが良いといえたが、フルHDプロジェクターの価格が安くなってきたこと、そう頻繁に買い替えるものではないことを考えると、フルHDプロジェクターを視野に入れた方が良いと思う。
もし予算的に厳しいのであれば、あえてエントリークラスから始めてホームシアターとはどのようなものなのか、感触を掴んでからでも遅くはない。DVD専用に720p対応機で楽しむか、あるいはフルHDかというメリハリのある選び方の方が、テレビよりも趣味性が高いホームプロジェクター選びには合っていると思うからだ。
では、フルHDプロジェクターの中で比較的低価格で、かつお勧めの製品を3機種挙げよう。エプソンの「EMP-TW2000」、三洋電機の「LP-Z2000」、三菱電機の「LVP-HC6000」だ。いずれもエプソン製の1080p対応透過型液晶パネルを搭載している。同パネルを採用する機種としては、ほかに松下の「TH-AE2000」があり、こちらも画質の面では良いところがたくさんあるが、価格はこれら3機種よりも一段上でボディサイズも大きくなってくる。
EMP-TW2000は、同パネル採用機の中でも、もっとも黒がよく沈む製品で、コントラスト感のあるメリハリのある映像を映し出す。深みのある黒をもっとも重視して選ぶならば、3機種の中では圧倒的に本機だ。以前のエプソン製プロジェクターに感じられた輪郭描写の甘さもなくなった。
他方、やや気になるのは高彩度部の描写だ。色の飽和度が高い(すなわち鮮やかな)部分で、リニアに彩度が変化せず急に派手になる傾向がある。しっとりとした映像の中に、急に色が乗ってくるところが見受けられる。冷却ファンも、ほかの2機種よりはやや大きめ。
そうした面で巧みに絵を作っているのが三洋のLP-Z2000だ。階調の繋がりが良いピュアシネマモードは光出力が小さくなりすぎて暗い印象だが、絞りを調整することで設置環境に合わせる柔軟性がある。もう少し“キレイに見せる”絵が好みの場合はクリエイティブシネマモードが別途用意されており、柔軟に対応可能だ。
一方で弱点と言えるのは、絶対的なコントラスト感。ほかの2機種と同一パネルを使っているが、動的な絞りを動かす幅は狭く、その分、絵の自然さを重視した作り。このために黒がやや浮き気味になる。前述したように絞り設定を細かくカスタマイズできるので、可能な範囲内で設置環境に合わせてやれば、あまり黒浮きも気にならなくなってくるのだが、店頭でのパッと見では不利といえる。
最後に三菱のLVP-HC6000だが、こちらは伸びやかでダイナミックな映像。無理に絵を作るのではなく、無理なくランプの特性に合わせてホワイトバランスを整えており、ヌケの良い透明感のある映像が魅力だ。とくにCGアニメやSF作品などに合っているが、リニアリティが高いため不得手な映像があまりない。驚くほど静かな動作も優位点だろう。
一方、ダイナミックな映像を演出する高速動作の動的アイリス制御の動作が、場合によっては目立ちすぎるのが弱点といえば弱点だ。パネルの世代が1世代古いことも、実際の映像には影響はほとんどないが、印象としては悪いかもしれない。
ただ3機種に共通していえるのは、フルHDのエントリー機として充分な性能を備えているということ。数年前ならば、50万円クラスでもこれだけの映像は得ることができなかった。とくにLP-Z2000は実勢価格が相当下がってきている。しかし、だからといって決して安物だと思う必要はない。上を見ればキリはないが、コントラスト、色再現性、レンズ性能など、さまざまな面で、720p世代の製品との間にはひじょうに大きな差がある。価格差が縮まっていることを考えると、実は一番のお買い得はこのクラスなのだ。
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