今日本のPC業界に大きな波紋を投げかけているのが、低価格モバイルPC、いわゆるNetBookである。多くは台湾メーカー製だが、HPやDELLといった米国企業も参入、ヨーロッパでは東芝も製品を投入するなど、活発な動きを見せている。
実際の売り上げシェアでは、6月までは5%を下回る程度だったが、6月7月に多くの製品が投入され、8月には20%近くまで伸びてきている。実際の価格は、店頭予想価格で6万円弱をうたってはいるが、ネット通販では5万円弱といったところである。
もともとNetBookは、発展途上国向けの最初の1台というコンセプトで登場したが、実際には先進国市場の2台目、3台目のマシンとして売れている。おそらく現在もっとも売れているのは、ASUSTeKの「Eee PC 901-X」だろう。日本ヒューレット・パッカードの「HP 2133 Mini-Note PC」はリリースが早かったこともあって注目を集めたが、いかんせん供給数を見誤ったこともあって停滞した。その隙にやれ発熱がすごい、バッテリーがもたないなどの情報が行き渡り、供給は再開したものの伸び悩んでいるようだ。
ところでこのNetBook、ビジネスユースのモバイルノートとして使うのならば、もっといいPCが日本にはいくらでもある(もちろんそれなりに値は張るわけだが)。5万円PCだからこその使い方、それは、かつてのブームを支えた「PC遊び」なのではないか。
筆者はEee PC 901-X(以下 Eee PC 901)を購入したが、最初から普通のサブノートとして使うという気はまったくなかった。NetBookの国内モデルは、ほとんどがWindows XPがプリインストールされているのだが、今更XPをいじくっても面白くない。海外モデルではUbuntu(Debian GNU/LinuxベースのLinuxディストリビューション)とXPが選べるので、やはりUbuntuを動かしてみたかった。
Ubuntuのインストール自体は、外付けCDドライブから起動するだけなので、それほど難しいものではない。ただEee PC 901の問題は、ネットワークと無線LANのドライバが標準的なディストリビューションに入っていないことだ。こういうことは、発売されて間もないPCにLinuxをインストールする際にはよくあることである。
日本でこの問題にいち早く着手したのは、CD-Rから起動するLiveCDの総本山とも言えるサイト、「ライブCDの部屋」である。最初は本家Ubuntuからの派生で、Eee PC用に独自チューニングした「EeeUbuntu」から始まった。まず有線ネットワークのサポートから始まり、無線LANも不完全ながら対応した。そして掲示板では、熱い接続実験リポートが次々とアップされていった。
筆者には自力で開発するスキルがないので、ただただ掲示板に書かれている手順を試し、1日1日と成果を上げながら成長していくノウハウを追っかけるのがやっとであった。だがそこには確かに、かつて忘れかけていた「なんとかこのハードウェアをうまく動かしたい」という思いを共感することができたように思う。
「ライブCDの部屋」の成果は、素晴らしいものであった。その後、無線LANドライバの単体リリース、カーネルのバージョンを上げても無線LANドライバなどを自動インストールする安定版EeeUbuntu、Mintの901対応版「eeeMint 5.0」、Xubuntuの901対応版「eeeXubuntu-lcr 8.04」など、多くのディストリビューションを輩出した。
さらには通常版Ubuntuやそれの派生ディストリビューション、例えばgOSなどにインストールするだけで901対応となる「カスタマイズキット」がリリースされ、選択肢が大幅に広がった。
筆者も実際にしばらくgOSを入れて使っていたが、一部のアプリケーションで画面が入りきれないといった不自由さはあったものの、Mac OS似のGUIは、使いやすかった。またGoogle Gadgetを、DashBoardのように使うアイデアは、なかなかおもしろかった。無線LANも普通に使えるだけでなく、イー・モバイルを使ったモバイルネットワーキングも可能だ。ブラウザはFirefox、メーラーはThunderbirdが普通に動く。
そうこうしているうちに、海外からEee PC 901に最適化されたカーネルが登場した。これにも「ライブCDの部屋」の管理人氏が対応した。現在はこのカーネルを使ったEeeUbuntuで、この原稿を書いている。
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