iモードに代表されるケータイWebの世界で、黎明期に登場したキラーコンテンツはニュース、天気、そして乗り換え案内だった。出発駅、到着駅を入力すると、所要時間や料金などを表示してくれる。初期はシンプルなモノだったが、最近では時刻表を表示したり、特急利用や徒歩の乗り換えを考慮したり、運行トラブルなどの情報を出してくれたりするほど高機能になった。
iPhoneにもいくつかの乗り換え案内アプリが登場しているが、その中でも最も人気があり、そして最も使いやすいのが「駅探エクスプレス(乗り換え案内)」だ。「駅探エクスプレス」という名前の無料版アプリ(こちらは近々サービスを終了するという)と350円の有料アプリが存在するので、まず無料版アプリで使い勝手を試してみてから、有料アプリをダウンロードしてもいいだろう。今回紹介するのは有料版だ。
2008年8月20日に開催したiPhoneに関するイベント「iPhonista Night」にアプリを紹介しに来てくださった駅探の代表取締役社長、中村太郎氏は、iPhone向け駅探アプリの開発のきっかけについて、こう語った。
「駅探はPCとケータイ向けに乗り換え案内を10年ほど提供してきた。iPhoneアプリは、PCでもケータイでもないサービスを作ろう、ということで提供した。これまで非常に多彩なサービスを提供しているが、シンプルにサービスをリデザインするきっかけとしてiPhoneをとらえている。(公開以来の人気については)おかげさまでご好評頂いている。ユーザーインタフェースの部分が受け入れられたのではないか」(中村氏)
中村氏が語るとおり、駅探エクスプレスは非常に軽快かつシンプルに乗り換え案内を利用することができる。まず駅の検索は、文字入力を行うことも出来るが、電話帳と同じようなインタフェースで頭文字を選び、続けて2文字め、場合によっては3文字めと、スクロールとタップだけで駅名を絞り込んでいく。バーチャルなキーボードを使わないため、本当に片手だけで素早く駅を探せる仕組みだ。
駅名を選択してから、駅名の右にある時計のマークを選べば、その駅を出発もしくは到着する時間を指定できるのも分かりやすい。条件設定をして検索キーを押すと、検索結果が表示される。ここも非常にシンプルだ。さらに、検索結果の駅名をタッチすると、1本前の電車、あるいは次の電車を上下のスクロールで探すこともできる。タッチとスクロールだけで、こんなに乗り換え案内を使いこなすことができるのか、と目からうろこが落ちる瞬間だ。
「iPhoneらしいインタフェースにこだわった。アプリ公開以前から、Web版の駅探をiPod touchやiPhone向けに公開し、ユーザーの動向を調べたり、自分で使ったりしてきた。その結果、やはり今ユーザーがさくさく使えて便利なのはネイティブアプリ版ということになり、コマーシャルベースで公開することになった」(中村氏)
こだわりのインタフェースの駅探エクスプレスは、先行して公開された無料版に引き続き、有料版が350円で用意され、検索結果の保持機能も追加された。有料版では一度アプリを落としても、再度起動すれば前回の検索結果の画面が表示される。
そのため、乗り換えを検索してからiPhoneで別のアプリを使っても、検索履歴からいちいち再度検索せずに乗り換え結果をすぐにチェックできるし、ケータイの電波が届かない地下鉄の中や、無線LAN経由でしかデータ通信ができないiPod touchでも、あらかじめ検索しておけばいつでも経路をチェックできる。細かいことかもしれないが、普段使っていると、この機能は本当にありがたく感じる。
駅探エクスプレス(乗り換え案内)は、現在バージョン2を提供中。ちなみに今購入すると、2世代先、つまりバージョン4までは無償でアップグレードできる。今後は約1年間隔でメジャーバージョンアップを行うことが明らかにされているため、350円を払うと最長2年間は最新の状態でアプリを利用できることになる。
現バージョンでは利用されていないが、経路検索に親和性の高いGPS機能や、位置情報や時間を利用したアラート機能など、iPhone版のアプリではまだまだできることがたくさんあるように思える。中村氏はこんな展望を語った。
「できるだけシンプルにリリースするため、搭載しなかった機能やアイデアはかなりの数に上る。またWebサービスとしてサーバを活用してもらえるようにしてあるため、さまざまな開発者やサービス提供者たちと連携しながら、新しいアプリを送り出していきたい。開発コミュニティは日本だけでなく海外にも広がっているので、彼らとの連携も面白いのではないか」(中村氏)
こんなに電車が正確に動く国も珍しいかもしれないが、確かに海外から日本にやってくる観光客に対する情報提供のアプリは、海外の開発者の方が気の利いたモノが作れるかもしれない。iPhoneという世界共通のプラットフォームの出現は、日本国内の情報を扱う企業にとっても、開発やサービス提供の相手が広がる点で、じわりと世界が広がる感覚がある。
東京、渋谷に生まれ、現在も東京で生活をしているジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ(クラブ、MC)。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。1997年頃より、コンピュータがある生活、ネットワーク、メディアなどを含む情報技術に興味を持つ。これらを研究するため、慶應義塾大学環境情報学部卒業、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。大学・大学院時代から通じて、小檜山賢二研究室にて、ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性について追求している。
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