バンダイビジュアルが2月20日に日米同時発売するBlu-ray Disc版「AKIRA」は、アニメでは世界初となるドルビーTrue HDの192kHz/24ビット音声や新規HDリマスターなど意欲的な試みの詰まったBDソフトだ。発売に先立って行われた報道関係者向けの説明会で詳しい話を聞いた。
AKIRAは、大友克洋氏の同名漫画を原作者自らが映像化したアニメ映画。1988年に公開され、原作の世界観を忠実に再現した映像や洗練されたメカニカルデザインなどで、日本のみならず海外でも話題になった。BD版は当初、2007年7月に発売する計画だったが、品質向上のための仕様変更などにより発売延期が続き、ようやく発売にこぎつけた格好。バンダイビジュアル、コンテンツ本部の武井潤プロデューサーによると、「BD盤AKIRAの品番は“BCXA-0001”。さまざまな理由で発売が遅れてしまったが、まず最初にこの作品をBD化する決意だった」という。なお、初回生産分として日米両国で各1万セットを用意しているが、どちらもすでにバックオーダーが入っている状況だという。
192kHz/24ビット音声の収録は、AKIRAの音楽監督を務めた山城祥二氏の提案だった。当初は非圧縮のリニアPCM収録も検討したが、BDの容量と最大転送レートが足りずに断念。「BDの規格ではリニアPCMの6チャンネル収録も可能だが、これはオプションという位置づけのため、バックアップ用に別のコーデックも入れなければならない。するとピックアップで読み出せる最大転送レートをオーバーしてしまう」(ドルビー、技術サポート部コンテンツ技術担当シニア・マネージャーの中山尚幸氏)。ここでいうバックアップとは、すべてのBDプレーヤーで音が出力できるよう、最低限入れなければならない音声コーデックを指す。
ロスレス圧縮のDolby True HDによって高品位音声の収録が可能になったが、実際の作業を担当したソニーPCLとドルビー(エンコード作業)は、「エンコードしては試聴する作業の繰り返し」だったという。現在のソフトウェアエンコーダーではリアルタイムに近い処理が可能になっているが、ベリファイやチェックを含めて1回の作業に1晩かけることもしばしば。それでも、「山城さんから渡されたマスター音源と同等のクオリティーを実現できた」とドルビーの中山氏は満足げだ。BD版AKIRAには192kHz/24ビットで5.1チャンネル、最大転送レート18MbpsというTrue HDの上限まで活用した音声が収録されている。
「AKIRAには、音楽・SEともに(通常はカットされる)高域まで入っている。それをフルスペックで体験できるBDに仕上がった」(バンダイビジュアルの武井氏)。もちろん、ほかにもドルビーデジタルの5.1チャンネル音声および映画公開時と同じドルビーサラウンド(リニアPCM)を収録しているため、HDオーディオ非対応のシステムでも再生できる。
一方の映像は、35ミリフィルムから新たにHDテレシネを行ったニューマスターを使用。セル制作アニメにはつきものの“セルゴミ”やゴミキズなどを取り除き、通常ではあまり使用しないフィルムでマスターを作成する手法(マスターポジフィルム)により「良い意味でフィルムライクな映像になった」という。「とくに赤の発色がいい。金田のバイクの赤が、映画と同じように鮮やかに見える」。映像コーデックはMPEG-4 AVC/H.264を採用した。
なお、今週末にパシフィコ横浜で開幕するオーディオ・ビジュアル専門展示会「A&Vフェスタ2009」では、BD版「AKIRA」のデモンストレーションを見ることができる。場所はパイオニアの視聴室「ハイエンドシアター」。デモンストレーションは1回20分程度で、毎回4つのBDタイトルを取り上げ、最新の同社製AV機器を使ってその音と映像を紹介する予定だ。参加希望者は、まずパイオニアブースもしくは視聴ルームに立ち寄って“整理券”を入手してほしい。
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